だれよりもすきなあなた 中編
訓練を終えて帰って来たオレはロッカールームに向かう途中、大佐と鉢合わせた。あまり会いたくない相手にオレは
軽く頭を下げるとそのまますれ違おうとする。だが。
「ハボック」
大佐に呼び止められて、小さく舌打ちするとオレは仕方なしに振り向いた。
「なんスか?」
「ここのところ訓練が多いな。あまりムリするなよ。」
大佐の言葉にオレは知らず顔を歪めた。
「そりゃオレはアンタみたいに才能溢れちゃいないですからね。必死こいてやるしかないんスよ。」
そう言うオレに大佐は僅かに目を見開く。
「ハボック、私はただ―――」
オレは大佐の襟首を掴むとドンと突き飛ばした。よろめいた大佐は当たった拍子に開いたドアの中へ倒れこんで
しまう。オレは大佐の体を蹴り入れるように会議室の中へ押し込むと扉を閉めて鍵をかけた。
「アンタからみたら、オレなんてどうにも使いようのないどうしようもない部下なんでしょうけどね。」
「ハボック…?」
大佐は尻餅をついたまま訳がわからないというようにオレを見上げてくる。
「オレにもプライドってもんがあるんスよ。」
そう言ってオレは大佐の体を乱暴に押し倒した。
「アンタも少し、思い知るといいんだ…っ」
「な…ハボ…っ?!」
オレは大佐のベルトを引き抜くと、それで大佐の両手を胸元で縛り上げてしまう。何か言おうとする大佐の口を唇で塞ぐと
オレは大佐の上着のボタンを外し、ワイシャツの前立てに手をかけると一気に左右に開いた。ぶちぶちと音を立てて
ボタンが弾きとび、大佐の白い素肌が晒される。その白い首筋に引き寄せられるようにして、オレは歯を立てた。
「つっ…っ」
唇を離すと赤い血が滲んだ。にじみ出た血を舌で舐めると大佐の体がびくりと震える。オレは指を滑らせると、白い胸
を飾る乳首をこね回した。
「んあっ」
唇をついて出た甘い声に驚いたように大佐が口を手で塞ぐ。オレは声を上げさせようと、指と舌を使って、わざと強く
二つの乳首を弄った。
「あっ…やめ…っ」
大佐は身を捩ると形の良い指を噛んだ。堅くしこった乳首を強く弾くと、大佐はぴくんと体を震わせ、一層強く指を噛む。
オレは身を起こすと大佐の唇から指を外した。
「声、聞かせてくださいよ。」
そう囁いて傷ついた指をねぶる。ぴちゃぴちゃ音を立ててしゃぶると大佐の顔が歪んだ。体の線に沿って指を滑らせ
ズボンの中へと手を差し入れる。そこには、既に息づいてとろとろと蜜を零す大佐自身があった。
「イヤらしい人っスね。もう、こんなにとろとろにして…」
意地悪く囁けば大佐はぎゅっと目を閉じてふるふると首を振った。オレは大佐のズボンを下着ごと剥ぎ取ると、脚を
大きく開かせる。
「いやだっ…ハボック…っ」
「こんなにしておいてイヤダはないでしょう…?」
すでに腹につくほど反り返った大佐自身をやんわりと握り締めれば大佐の喉がひくりとなった。そのまま上下に扱いて
やれば大佐の唇から熱い吐息が零れた。蜜を零す先端をくりくりと捏ねて、幹を強く擦る。開いた大佐の脚がぴくぴく
と細かく震えた。
「ハボック…ハボ…」
熱い息の間にオレを呼びながら大佐はほろほろと涙を零す。呼ぶ声になぜか心がざわめいて、それをごまかすように
オレは大佐の脚を抱え上げた。中心から溢れた蜜でしとどに濡れてひくつく蕾へ滾る己を押し当てる。大佐の黒い瞳
が何かオレには理解できない色を湛えて見上げてきた。その瞳を見ていられなくて、オレは片手で大佐の顔を覆うと
まだ堅く閉ざした蕾へと一気に突き入れた。
「ぁ―――――っっ」
激痛に声を上げることも出来ずに大佐は体をぴくぴくと震わせた。大佐の顔を覆ったオレの手が濡れて、大佐が泣いて
いるのが判る。オレは大佐の脚をさらに開かせて大佐の奥を思うまま蹂躙した。
「ひっ…ひあっ…ハボ…っ」
容赦ないオレの突き上げに上げる声すら奪われて、大佐は大きく目を見開いたまま喉を仰け反らせた。見開いた黒い
瞳からは止めどなく涙が零れ、閉じることすら忘れたその唇からは唾液が銀色の糸を引いていた。揺さぶるオレの
動きのままに力なく体をゆすり、それでも、大佐の中心はそそり立ってとろとろと蜜を零し続けていた。オレは思い切り
突き上げると、大佐の最奥へと熱を吐き出した。
荒い息を吐いてオレは大佐の中からずるりと己を引き抜いた。かすかに広がる錆びた匂いに大佐を傷つけたことを
知る。気を失った青白い顔を見つめる内、いつの間にかオレは両手で大佐の顔を撫でていた。大佐への苛立ちとか
怒りとか、そういったものを全部吐き出してオレの心の奥底に残ったその気持ちを突きつけられて、オレは途方に
くれていた。近づきたくて、認めて欲しくて、でも上手く行かなくて、ずっとずっと足掻いてきたその理由は。
好きなのだと。
この、誇り高い綺麗な人が。
憧れて側にいたくて、でもいつもつまらないプライドが邪魔をした。
だから、好きだという気持ちに蓋をして、憎んでるふりをして。
そして、一番最低な方法で傷つけた。
今更、自分の気持ちに気づいたところで許しを請える筈もなく。
大佐の頬にオレの瞳から零れた涙が伝う。
ぱたぱたと止めどなく涙は零れ落ちて。
オレは意識のない大佐にそっと口付けた。
大佐にあんなことをして、いくら他の上官たちに比べて寛大な人とはいえ、今度こそ不敬罪で軍法会議ものだと
思っていたのに、大佐は何も言わなかった。何も言わないどころか表面上は何も変わらない。ただ時折、視線を
感じて振り向くとその先に大佐の黒い瞳があって。でもそれだけ。その瞳にはオレを憎む色も蔑む色も何もなくて
ただただ綺麗に澄んでいて、オレのあんな行為も大佐を傷つけることは出来ないのだと、そう告げられている気がした。
あれから数週間がたって、オレの周りをゆるゆると時が過ぎて行く。気づいた気持ちをどうすることも出来ず、
だからと言って今更蓋をすることも出来ずに、目の前に曝け出された大佐への想いは、一秒時が過ぎるごとに少しずつ
零れ落ちていった。零れ落ちたこの気持ちに、いつか大佐が気づいてしまったら。そう思うと怖くて仕方がない。
こんなオレのこんな最低な気持ちに気づかれるくらいなら、気づかれて蔑まれるくらいなら、いっそ死んでしまった方が
いいかもしれない。オレはそんなことを考えながら吐き出した煙草の煙がうっすらと消えていくのを見つめていた。
この日、視察へ出るという大佐について市街地へオレは出ていた。行きかう市民に笑顔を返して、そつなく交わす
大佐を見ていて、やっぱりオレとは違うのだと思う。きっといつかは上に登りつめて自分の願いを叶えるのだろう。
その時、オレは側にいないだろうけど、その瞬間を見て見たいと思う。
そんなことを考えながら視線をやった先に、ぎらりと光るものを見つけた。見つけたと思った瞬間、大佐へと突き出される
ソレの前へ身を躍らせる。ずぶりと自分の肉の中へ突き入れられる感触を不思議に感じながら、オレは目の前の男の
首筋に手刀を叩きいれる。男が昏倒するのを目の端に捉えながらオレは大佐を振り返った。黒い瞳が見開かれて
オレを見つめている。なんて綺麗な瞳なんだろう。オレは薄れゆく意識の中でそう考えていた。
泣きそうな声がオレを呼んでいる。よく知っているその声のあまりに切ない色に、オレは慰めてあげたくてでも、唇は
僅かに震えるだけで言葉が出ることはなかった。そのオレの唇に優しい感触が降って来る。何度も繰り返されるそれが
何なのか確かめることも出来ず、オレの意識は再び暗い闇へと沈んで行った。
→ 後編