だれよりもすきなあなた  後編


ぽかりと、水面から顔を出すように不意に意識が浮上して、オレは目を開けていた。ふと横を見れば何本もの管が
腕に繋がれている。ここがどこで自分がどうなっているのか、まだ混濁する意識は理解しようとしない。かちゃりと音が
して誰かが近づいてくる。その人物がオレの様子を見ると、慌てて部屋の入り口まで戻り何か叫んでいるのが判った。
その人物は再びオレの側へ近づいてくるとオレの顔を覗き込んだ。
「ハボっ、おい、オレがわかるか?ハボっ?」
なかなか返事をしないオレに焦れて、ソイツはオレの髪をかき上げた。
「おい、ちゃんと見えてんだろうな。刺されたのは腹だろう?目がどうかしたなんて聞いてないぞ。」
苛々とそう言いながら、オレの頬を軽くはたく。その衝撃で不意に焦点があってオレは自分を見下ろしているのが
ブレダだと気づいた。
「ブレダ…。」
そう呟いたオレに、ブレダがホッとした表情を浮かべた。
「お前、全然意識戻んなくって…くそっ、心配させんじゃねぇよ。」
ブレダは泣き笑いのような顔をしてそう言った。ブレダがオレに話しかけているうちに、バタバタと医師やら看護婦やら
が部屋の中にやってきてブレダは追い出されてしまう。医者達はいろいろ確認した挙句、取りあえず危ない状況は
脱したと判断したのだろう、オレを置いて出て行ってしまった。
医者達にあちこち調べられている内に、ようやくオレの中でも記憶が戻ってきていた。そういえば、大佐は無事だったん
だろうか。意識をなくす寸前に見た綺麗な瞳を思い出して、オレはちくりと胸が痛んだ。いっその事あのまま死んで
しまったら何も悩まずにすんで楽だったかもしれない。大佐だって、オレがいなくなれば清々するだろう。オレはそんな
ことを考えながら、ぼんやりと天井を見上げていた。

頑丈に生んでくれた親に感謝すべきなのだろうか、1週間もすると動き回れるようになったオレは、こうして何もせず
にいると余計なことばかり考えてしまうのに嫌気がさして、強引に病院を出てきてしまった。1週間の間に、ブレダを
初めとした司令室の面々が見舞いに来てくれたが、大佐は現れなかった。やっぱりというべきなんだろう。もしかしたら
あのまま死んでしまうだろうと思っていたオレが生き延びてしまって、どう対処しようかと考えているのかもしれない。
明日からの出勤に備えて早めにベッドに入っていたオレは控えめに鳴らされたノックの音を聞き逃す所だった。
ベッドから起き上がって玄関まで行き、相手を確認しようと声をかけたが返事がない。気のせいだったかとも思ったが
扉の向こうには確かに人の気配があって、オレは答えない相手にいらついて乱暴に扉を開けた。
「こんな時間に誰―――」
扉を開けながら苛々と言いかけた言葉は、そこに立っているのが大佐だとわかって、不自然に途切れた。
「すまない、こんな時間に…」
大佐は俯きながらそう言ったが、オレを見上げて小さな声で聞いた。
「入っても?」
縋るような瞳にオレは拒絶することができずに大佐を部屋に通した。部屋に入った大佐はどうしてよいか判らないと
言うように部屋の中央に立ち尽くしている。
「どうぞ、座ってください。コーヒーぐらいしかないっスけど。」
オレはそう言ってキッチンへと入るとコーヒーの用意をする。暫くしてカップを手にリビングへと戻ると大佐はぼんやりと
ソファーに座っていた。
「どうぞ。」
オレがコーヒーを差し出すと大佐はハッとしたように顔を上げた。オレは大佐の向かいに腰を下ろすと口を開いた。
「で、なんの用っスか?」
大佐は何を言うべきか言葉を捜すように何度か口を開いたが、結局当たり障りのないことを口にする。
「怪我の具合はどうなんだ?本当ならもう少し入院加療すべき所なんだろう?」
きっとオレに気を使って出てきたであろうその言葉は、だが、今のオレにはむしろ神経を逆なでするものでしかなかった。
「あんまり早く出てきたんで困りましたか?」
オレの言葉に大佐が目を瞠る。
「本音を言えば、あのまま死んでくれたらって思ってたんじゃないんスか?」
目を大きく見開いて、でも何も言わない大佐にオレは言葉を続けた。
「アンタをあんな目にあわせたオレを、憎んでるんでしょう?いっそあのまま死んじまえば直接手を汚さずにオレを
 処分できますもんね。」
オレは大佐の顔を見つめて言った。
「今だって、殺したかったら殺せばいい。指1つ鳴らせばいいんだ、簡単でしょう?ああ、そうだ。アンタが直接手を
 下したと判ると困るというなら命令すればいい。死ねって。」
突然大佐がバンッと両手でテーブルを叩き、オレは驚いて口を噤む。
「お前こそ…っ、お前こそそんなに私が憎いのかっ?お前が私を嫌っていたことくらい気づいていたさ。でも…っ、
 あんな形で私を辱めなければいられないほど、私が嫌いか?私はっ…、お前が私を傷つける目的で私を抱いたのだ
 と判っていた、でも、それでも…っ」
激昂するままに言い募る大佐をオレは呆然と見つめていた。
「嬉しかったんだ…ずっとお前が好きだったから…お前に触れられて、悲しかったけど嬉しかったんだ…っ」
ぽろぽろと涙を流す大佐をオレは言葉もなく見つめた。
オレが好きだった?
誰が?大佐が?
そんなことあるわけない。
あんな酷い事をしておいて、大佐がそんなこと言う訳ない。
そう思って、オレはふと意識をなくしていた間のことを思い出した。
泣きそうな声で何度もオレを呼んだのは誰だ?
唇に降って来た優しい感触は?
「…病院に…来た?」
呟いたオレの声に大佐がびくりと震えた。
「オレの名前を呼んでたの、アンタだったんスか…?」
ガタンと立ち上がって、部屋を出て行こうとする大佐の腕を掴んで引き止める。
「離せっ」
オレの手を振り払おうとする大佐の肩を掴んでオレの方を向かせた。
「オレにキスした…?」
びくりと震えて俯く大佐の顎を掴んで、オレはそっと唇を合わせた。途端に強張る体を優しく抱きしめて何度も触れる
だけのキスを繰り返す。その優しい感触は確かにあの時と同じで、オレは涙が零れそうになった。
「アンタが好きです…」
そう囁くオレを、大佐が信じられないというように見上げてくる。
「ずっと好きだったんだ…だからアンタに認めて欲しくて、側に近づきたくて、でもいつも上手く行かなくて…。だから
 嫌いだと思い込もうとした…アンタを傷つけて…最低っスね、オレ。」
オレはそう言うと大佐の体を離した。
「今更、許してもらおうなんて、そんなこと言える訳ないっスね…」
すみません、と呟いて、オレは大佐の体を部屋の外へ向けてトン、と押した。
「もう、帰ってください。2度とアンタには触れませんから。」
そう言って微かに笑ったオレの胸倉を突然大佐が掴んだ。
「何だ、それはっ!勝手に1人で決めるんじゃないっ!私の気持ちはどうなるんだっ?!」
きらきらと怒りに輝く瞳はとても綺麗で。
「お前が始めたんだろうっ、だったら最後まで責任を取れ!!」
そう叫ぶと大佐はオレに口づけて来た。オレは大佐の体を引き離してその顔を見つめる。
「側にいたいと言ったな、だったら今さら逃げるなっっ!!」
オレ達は、そのまま何も言えずにお互いの顔を見つめた。オレはそっと腕を伸ばすと大佐の頬に触れる。
「アンタはそれでいいんスか…?」
大佐は頬に触れるオレの手に自分の手を重ねて答えた。
「そうしたいんだ。」
オレの目を見つめてはっきりそう言う大佐にオレは泣きそうになった。オレは大佐の体を引き寄せると唇を寄せていった。

「あっ…」
跳ねる体をベッドに縫いとめて、オレは大佐の体に舌を這わせた。強く吸い上げるたび震える大佐が愛おしくて、その
白い体にいくつも痕を残していく。ぷくりと硬くなった乳首を舌でねぶると大佐の唇から感じ入ったようなため息が零れた。
赤く色づいたソレは酷く美味しそうで、オレは飽きもせず舌を這わせ続けた。
「も、やだっ…そこばっかり…っ」
同じ場所ばかり攻められて、大佐が音を上げる。オレはくすりと笑うと大佐の顔を覗き込んだ。
「でも、すげえ美味そうなんスよ…?いくら食べても食べ飽きないくらい…」
「ばかっ」
目元を染めて睨んでくる様が可愛くて、オレは大佐に口付けた。舌を絡ませながら、指で乳首をいじれば泣き声の
ような喘ぎがあわせた唇の間から零れた。流石に可哀想になって、乳首から指を離すとそのまま下へと滑らせて
いく。脚の間に手を這わせれば、その中心はすっかり立ち上がってとろとろと蜜を零し続けていた。
「胸をいじっただけで感じちゃいました?」
意地悪く囁くと大佐が伏せていた目を上げて答えた。
「お前だから…」
その言葉と視線に、鼓動が跳ねた。噛み付くように口づけて、口中を乱暴に弄る。中心に這わせた手で、大佐のモノを
強く扱いた。熱い吐息も悲鳴も何もかも飲み込んで、大佐を追い上げていく。びくんと震えた体が白濁した液を吐き
出してオレの手を濡らした。
「たいさ…」
囁くオレに大佐は恥ずかしげにゆるゆると首を振った。その額に口付けをおとして、オレは大佐の脚を大きく開いた。
「やっ…」
大佐の熱で濡れた指を奥まった蕾へ差し入れようとすると、大佐は身を捩って悲鳴を上げた。以前、乱暴に引き裂いた
ことを思い出し、オレは大佐に囁く。
「アンタと1つになりたいんです…」
ダメっスか、と聞くオレに大佐はおずおずと脚を開いた。その仕草にはやる気持ちを抑えて、俺は大佐の蕾へ舌を
這わせる。たっぷりと唾液を流し込み、舌を差し入れ丁寧に解していった。大佐の指がオレの髪を引っ張るのに、オレは
顔を上げた。
「もう、い、いからっ…はやく…っ」
「でも…」
「はやく…お、まえを…かんじさせてく…れっ」
その言葉にオレはもう、自分を抑えることができずに大佐の脚を抱えると、滾る自身を大佐の中へと突き入れていった。
「あああああっっ」
熱い粘膜がオレ自身に絡みつき、堪らない快感がオレを襲う。柔らかい襞が誘い込むままに深くつき上げた。
「ああっ…はあ…っ…ハボ…ハボっ…!」
オレの腰に脚を絡ませ、腰をくねらす様は、普段の大佐からは想像も出来ない姿で、乱れる大佐にオレの熱が益々
熱く滾って、大佐の中を押し開く。
「はあっ…おっきいっ…あ…イイ…っ」
イヤらしく腰を振りながら、大佐はオレにしがみ付いて来る。きつく突き上げればオレを咥えた大佐のソコが蠢いて
オレに噛み付いた。
「んああっ…ハボっ…もっと…もっと…っ」
涙を零しながら強請る大佐の体を揺すり上げ、悲鳴を上げる唇を貪る。もっと深く交じり合いたくてオレは大佐の脚を
押し開くと大佐の最奥を犯す。
「あああああっっ」
大佐の中心から熱が迸り、その指が快楽と苦痛に耐えかねてオレの背に傷をつける。その痛みを快感に感じながら
オレは大佐の中へ熱を放った。

何度も求め合って、最後には意識を飛ばしてしまった大佐をそっと抱きしめて、オレはその髪に顔を埋めた。大佐の
香りを吸い込んで、乾ききったオレの心が潤っていく。どこまで一緒に行けるのか、どれだけ彼の力になれるのか、
今はまだわからないけれど、この命が続く限りこの人の側にあり続けようと、オレは眠る大佐に口づけて誓うのだった。


2006/8/31


拍手リク「ジャクロイで、完璧にソツなく作戦をこなす指揮官のロイを見て、男として悔しくなって 犯して、そのあと自分の恋心に気付くハボックとかどうでしょうかv気絶したロイにキスしたり…」でした。……す、すみません…。ジャクロイって言うより、ハボロイだし。何か微妙にリクと違うし〜〜っ…。でも、私にはこれがいっぱいいっぱいなんで(滝汗)今回は私にしてはすご〜く難産で、全然話が進まないどころか、他にもリクが来ているのをいいことに、書きかけちゃ他のssを書き…とちっとも集中して書けませんでした。やたらハボがグルグルだし、お待たせしたわりにこんなんですみません…。ちょこっとでも楽しんでいただけたら嬉しいのですが…。