近くて遠いあなた  第九章


 抱き締めた金色の髪をロイは優しく撫でる。暫くそうやって撫でていればハボックがゆっくりと顔を上げた。
「たいさ…?」
 撫でてくる手の思わぬ優しさにハボックは困惑してロイを見る。自分がロイにしてきた事を思えば有無を言わさず燃やされたって文句は言えないはずなのに。戸惑いに揺れる空色の瞳を見つめてロイは僅かに首を傾げた。
「どうしてそう、まっすぐに想いをぶつけてくるんだ、お前は」
 ロイはそう言うと涙の滲むハボックの瞳を撫でる。金色に縁取られた綺麗な空色に浮かぶ情欲にロイは困ったように笑った。
「そんな風に強い想いをぶつけられた事などなかったな」
「……んなことないっしょ?あれだけモテるくせにそんな事言ってもちっとも本当には聞こえないっス」
「でもそうなんだ」
 ロイはそう言うと己の上に圧し掛かる男の頬を両手で包む。その瞳を覗き込むようにして悪戯っぽく言った。
「もしここでお前の手を取ったらどうなるのかな」
 そんな事を言うロイにハボックは目を見開く。グッと唇を噛み締めると吐き捨てるように言った。
「冗談でもそんな事言うべきじゃないっス。オレがアンタにどんな気持ちでいるか、良く判ってんでしょっ?」
「判ってるさ。判っていて言っている」
「…ッ、アンタねっ!」
 ハボックは頬を包むロイの手を振り解くと体を起こそうとする。だがそうするより一瞬早くロイの手がハボックの腕を掴んだ。
「逃げるのか、ジャン・ハボック」
 そう言って見上げてくる黒い瞳をハボックは目を見開いて見つめる。浅い呼吸を繰り返すと囁くように言った。
「いい加減にしてください。オレをからかって面白いんスかっ?」
「からかってなどいない、ハボック」
「だったら…っ!」
 ロイを再び力ずくで抱こうとしたのはほんの少し前のことだ。必死にあの獣じみた衝動を押さえ込んだというのに何を考えているのだとハボックがロイの腕を振りほどこうとした時。
「もう一度、その想いを私にぶつけてみたらどうだ?」
「…な、に言って…」
「もう一度、お前の想いを私に見せてくれ」
 そう言って笑うロイをハボックは信じられないものを見るように見つめる。ロイは手を伸ばしてハボックの金髪を撫でると言った。
「お前のその想いは嫌じゃない。だからもっと知りたいと思う」
「本気で言ってるんスか?」
「当たり前だ」
 ロイはキッパリと言うと首を傾げる。
「こういうのを絆されたと言うのかな」
「………アンタね」
 その言葉にハボックはロイの体の上に突っ伏した。それでも顔を上げると挑むようにロイの瞳を見つめる。
「後悔したってしりませんよ?」
「するもんか」
 そう言って鮮やかに笑う人にハボックは泣き笑いのような顔をした。そっと抱き締めてくるハボックの背をロイは優しく撫でていたが、ハボックが唇を寄せてくるとその体を押し返す。問いかけてくる空色の瞳にロイは苦笑して言った。
「後悔する気はないが、できればこんな埃っぽい床の上は御免蒙りたいんだが」
 この期に及んでそんなことを言うロイにハボックは声を上げて笑った。


 寝室に場所を移した途端ベッドに押さえ込まれて瞬く間に服を剥ぎ取られてしまう。以前無理矢理抱かれた時の獰猛さはないもののその性急な様子にロイはやんわりとハボックの背を叩いた。
「私はここにいるし、逃げたりしないよ、ハボック」
 そんな風に言われてハボックは顔を赤らめる。一つ大きく深呼吸すると服を脱ぎ捨てロイの体を跨ぎ、顔の横に両手をついてロイを見下ろした。
「すみません…なんか、アンタの気が変わんないうちにとか思っちゃって」
 すまなそうにそう言うとハボックは確かめるようにロイの頬を撫でる。その白く肌理細やかな肌と見上げてくる黒曜石の瞳にハボックはため息を漏らした。
「たいさだ…」
 ハボックはそう囁くとロイの頬に唇を寄せる。頬に、額に、鼻に、顎に、キスを落として最後に桜色の唇に己のそれを重ねた。
「ん……ふぅ…」
 角度を変えて何度も口付けるうちロイの唇から甘い吐息が零れる。その声に深い喜びを感じながらハボックは重ねていた唇を首筋へと移動させた。きつく吸い上げれば白い肌に綺麗な紅い花びらが散る。ぴくんと震えるロイに笑みを零してハボックはロイの肌に幾つも花びらを散らしていった。
「あっ……んあっ」
 花びらを散らす唇がロイの胸の頂に辿り着いた時、零れる吐息に甘い悲鳴が混じる。ハボックはぷくりと立ち上がったそれを舌でねぶり吸い上げ、時折甘く噛み付いた。もう一方を指の腹で捏ね回しては摘みあげれば、ロイが身を捩って逃げようとする。それを赦さずハボックが執拗に胸の飾りを嬲ればロイがハボックの髪を引っ張った。
「そこばっかりしつこいぞ、お前…っ」
「でも、気持ちイイでしょ?」
 ハボックはそう言って立ち上がって蜜を零し始めているロイの楔をやんわりと握り締める。何よりも雄弁にロイが感じている快楽を伝えるそれを握られて、ロイはヒュッと息を飲んだ。
「気持ちイイんですよね?」
 笑いを含んで聞く声にロイは悔しそうにハボックを睨む。その瞳にハボックはごめんなさい、と呟いて軽くキスをした。
「もっと気持ちよくしてあげるっス…」
 ハボックはそう言うと手にした楔をゆっくりと扱き始める。直接的な刺激にロイはシーツを握り締めて喘いだ。
「はあっ……アッ…アッ……ハボ…ハボック…ッ」
 込み上げてくる快楽にロイの腰が自然と揺れる。まるで強請るように突き出される楔をハボックは緩急をつけて扱いた。
「ハボック……ダメだ、も、でる…ッ」
「いっスよ、イく顔、見せて……」
「あ……んあっ……や、あッ…イクッ……アアアッッ!!」
 背を仰け反らせ、ハボックの手のひらに己を押し付けるようにしてロイは熱を吐き出す。びゅくびゅくと吐き出した白濁でハボックの手を汚しながらロイは腰を突き出したまま小刻みに震えていたが、やがてガクリとベッドに身を沈めた。
「は、あ………」
 はあはあと荒い息を零しているロイの顔をハボックはうっとりと見つめる。掌に吐き出された白濁にハボックはねっとりと舌を這わせた。
「ば、か……そんなもの、舐めるな…ッ」
 薄く目を開いてハボックを見上げるロイが言うが、そんなものはただの甘い囁きにしかならない。ハボックはロイの唇に軽くキスをすると、力の抜けた脚を押し広げた。
「やっ……ハボック…ッッ!!」
 秘所を晒す格好にロイが羞恥に駆られて声を上げる。だが、ハボックはそれには構わずロイの双丘を押し開くと舌を差し入れた。
「ヒィッ……アアッ!」
 ぬめぬめと這い回る感触にロイは悲鳴を上げるとハボックの髪を乱暴に掴む。引き剥がそうとする手に髪を引っ張られて痛みを覚えながらもハボックは指で押し開いたロイの蕾に舌を差しいれ唾液を送り込んだ。
「ヒ、ウ……やめ…っ……ッッ!」
 いやいやと首を振ってロイがやめてくれと言いかけた時、太い指が蕾に差し込まれる。息を飲むロイの蕾をグチグチとかき回しながらハボックが言った。
「好きです、たいさ……アンタと溶け合いたい…」
 囁かれる声にロイは閉じていた目を開ける。見下ろしてくる色を増した瞳にロイはそっと手を伸ばした。
「…だったらさっさとしろ」
「…アイ・サー」
 蠢く指の動きを耐えるように目を閉じたロイにハボックは答えると沈める指の数を増やしていく。厭らしい水音を立てる蕾が3本の指を難なく飲み込むようになると、ハボックは指を引き抜きロイの脚を抱え上げた。
「挿れますよ…?」
 そう囁けば黒曜石の瞳がハボックを見上げ、白い腕がハボックの太い首に回される。ハボックは戦慄く蕾にそそり立った熱い楔を押し当てると一気に突き入れた。
「ヒアアアアッッ!!」
 ズブズブと狭い器官を押し入ってくる塊りにロイの唇から押さえきれない悲鳴が上がる。ハボックは一気に奥まで突き入れた楔を今度は入口ギリギリまで引き戻すと、再び乱暴に突き上げた。
「アアッ……ヒィッ…ッ!…ま、待っ…ッ、アアアッ!!」
 激しい抽送に身の内を抉り取られてロイが泣きながら喘ぐ。ハボックは白い頬を伝わる涙を唇で拭うと言った。
「たいさ……すきです、好きッッ」
 押し広げた脚を胸につくまで折り曲げられてガツガツと突き上げられながらロイはハボックを見つめる。好きだと言う言葉と共に身の内に広がっていくのは確かな快感と暖かい気持ちで、ロイはハボックの首に回した手をグイと引いて引き寄せた。好きだと何度も呟くその唇に己から口付けると涙に濡れた顔に笑みを浮かべる。
「私もお前が好きだよ、ハボック……」
 その囁きにハボックの動きが一瞬止まったが、次の瞬間更に激しく突き上げられた。
「ヒイアアアッッ!!アアアッッ!!」
 熱い内壁をこする楔がロイの感じるポイントを探り当て執拗に突き上げる。ロイはハボックの背に回した手でその逞しい背に傷を刻みながらびゅるりと熱を吐き出した。
「アアアアアッッ!!」
 見開いた黒い瞳から涙の滴が舞い散る。達したロイに埋めた自身をきゅうきゅうと締め付けられて、ハボックはロイの熱い内壁に熱を叩きつけた。
「…っくぅ……た、いさ…ッ」
「アアッ…あつい…ッッ」
 体の最奥を焼く熱にロイはビクビクと体を震わせる。ハボックはロイの体をかき抱くと噛み付くようにその唇を塞いだ。
「んんっ……ンッ」
 呼吸さえ奪われてロイはハボックに縋りつく。深く合わせた唇の奥できつく絡めた舌を漸く離すとハボックはハアハアと息を弾ませるロイを見下ろした。
「たいさ……たいさ…」
 涙と汗に濡れた白い顔中にキスを降らせる。想いを込めて呼ばれる名を甘く聞きながらロイは笑みを浮かべるとゆっくりと闇に落ちていった。


2009/01/06


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◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「完全にハボの片思いからのハボロイがないので、書いてもらえませんか?ロイは本当にハボを部下としてしかみていなくて、ハボはそんなロイに告白するけど、男に興味は無いと断られてしまって、でもハボはあきらめきれ なくて…ロイは部下としてはハボは優秀なので、「信用してる」と言って置いておくけど、そんなロイに苛立って犯してしまうハボ。でも、部下としてしか見れないと言われて…ハボは一度はあきらめるけど、やっぱり好きで、また犯してしまいそうなって、ロイに自分を部下を解任してくれと言って…ロイは、そのハボの強い気持ちに、少し心を動かされてしまう…というようなものを」というリクエストでしたー。
いやもう、すっかり最初から最後まで流れの決まったリクでしたのでお話としては迷わず気楽に書かせて頂いたのですが、うーん、どうもロイの気持ちを上手く消化できなかったような気がしますー。もうちょっと書きようがあったような気がするんですがどうにもこうにも…(汗)
と、こんな形の結末ではありますが、少しでもお楽しみ頂けましたら嬉しいです。