お月見どろぼう


 コンコン!
「ホークアイ中尉、入ります」
 正確なノックの後、涼やかな声と共に、ロイの副官が入ってくる。その後ろからは長身の護衛官。
 しかし「何だ?」と言うロイの言葉は、その途中で不自然に途切れた。何となれば鷹の目の異名を持つ腹心がロイにピタリと銃口を向けていたのだった。
「!!!」
「お月見どろぼうです。お菓子を出しなさい!」
「………………はぁ?」
 緊張感のない間抜けた声が出てしまったのは、ロイに非はないだろう。もう一人の金髪の護衛官も、困ったようにロイを見ながら顎をかいている。
「あ〜…、ネタ元はファルマンなんスけどね」
 銃口を外そうともしない上官と、ちっとも状況が掴めないでいるらしい上司を見比べながら、ハボックは仕方なさそうに溜息をつく。
「東の小国の風習らしいんですが、お月見の夜に子供たちが『お月見どろぼうです』って言いながら家を訪ねて回るらしいんスよ。で、お菓子をもらうんだそうで…」
「ですから、今からこの部屋にあるお菓子を回収します。ハボック少尉!」
「イエス、マム」
 ひょいと肩をすくめてから、ハボックはロイの机の引き出しやサイドボードを開けて、手際よくロイが大事にしまっておいたクッキーやらキャンディやらチョコレートやらを、持っていた袋に放り込んでいく。
「ハボック少尉、花瓶の中に隠してあるヌガーも回収しなさい」
「……イエス」
 無造作に花瓶に手を伸ばすハボックに、ロイはようやく我れを取り戻す。
「ま、まてっ!それはセントラルから取り寄せた限定品なんだ!」
『いや、突っ込むトコはそこじゃなくて、ガキみたいに花瓶に隠してる自分を恥じてくれ』のハボックの心の声は、当然上司に聞こえるはずもなく……。
「最初に『お月見どろぼうです』と言ったはずです。おとなしくしていなさい」
『いや、ここまでやったらどろぼうってより強盗だろう……』の心の叫びも、美しい上官に届くはずもなく……ハボックはもう一度盛大な溜息をついた。


   ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

先日の中秋の名月の折り、摩依夢さまから「お月見どろぼうという日本版ハロウィーンがある」というのを教えて頂くと同時に可愛いssを頂いてしまいましたvあんまり可愛かったので思わず勝手に続きを書いてしまった上、「宝部屋に飾らせて下さいーッ」とワガママ言って載せさせて頂いちゃいましたvえへへ、だって殆ど強盗まがいにお月見どろぼうする中尉といい、花瓶にヌガー隠しているロイといい、とんでもない上司に振り回されるハボックと言い、とってもかわいかったんですものvv摩依夢さま、可愛いお話をありがとうございますーーvv

でもって、私が書きましたしょうもない続きはコチラ