| お月見どろぼう その後 |
| 「ハボック、おい、ハボック」 廊下を歩いていたハボックは聞こえてきた声に辺りを見回す。そうすれば階段の陰からロイが手招いているのが見えた。 「そんな所でなにしてるんスか?大佐」 コソコソと隠れるようにしているロイにハボックは不思議そうに煙草の煙を吐き出しながら近づく。「なに?」と首を傾げるハボックにロイは小声で尋ねた。 「さっきのアレ、どうなった?」 「アレ?」 キョトンとしたハボックは次の瞬間「ああ」と頷く。アレと言うのが先程お月見泥棒になったホークアイに没収された菓子だと気づいてハボックは答えた。 「そりゃお月見泥棒なんスから中尉が持ってますよ」 オヤツに食うんじゃないっスか?とハボックが言えばロイが情けなく眉を下げる。ロイは言いづらそうにしながら尚も言った。 「ヌガーも、か……?あれも中尉がオヤツに食べるのか?」 おずおずと、だがこれだけは聞いておかねばと尋ねるロイにハボックが答えた。 「ああ、あれ。美味かったっスよ」 「え?」 「中尉がね、これは限定品だからってみんなに分けてくれたんスよ。流石限定品の事だけはあるっスね!オレ、ヌガーがあんな美味いもんだとは……って、大佐?」 初めて食べたヌガーの味を感激して語っていたハボックは、驚愕に目を見開いてヨロヨロと後ずさるロイを不思議そうに見る。 「えと……大佐?」 「食べたのか……あのヌガーを……ゆっくりじっくり味わおうと大事にとっておいたヌガーを私抜きで……」 「あ……や、その、大佐」 「……酷いッ!!」 ロイはワナワナと震えたと思うとキッとハボックを睨みつけた。 「あんまりだッ!大ッ嫌いだ、お前なんてッ!」 「あっ、大佐っ」 怒鳴るなり背を向けて、「わーんッ」と泣きながら走り去るロイをハボックは呆然と見送る。引き止めようと伸ばした手でボリボリと頭を掻いてため息をついた。 「わーんってどこの子供だよ……つか、人の話は最後まで聞けっての」 ハボックは呆れたように言うとロイが走り去った方角にゆっくりと歩きだす。途中扉をくぐり中庭に出たハボックは、よくロイが昼寝に使っている隠れ場所を覗き込んだ。 「大佐」 思った通り木の枝に囲まれた小さな空間に潜り込んでいるロイを見つけてハボックは声をかける。抱えた膝に顔を埋めていたロイは、聞こえた声にビクリと体を震わせたが顔を上げはしなかった。 「なに泣いてんスか、いい年して」 「煩いッ!私は深く傷ついたんだッ、私のショックが神経ワイヤーロープのお前に判ってたまるかッ!」 ハボックが呆れたように言えばロイが顔を上げずに答える。ひでぇ、と苦笑いしながらハボックは懐の中から取り出した包みでロイの頭をつついた。 「ヌガー、旨かったんスけど、甘いもん苦手なオレには多かったんで半分残したんスよ」 食います?と尋ねればロイが肩をピクリと震わせる。だが、返ってきた答えはハボックが想像していたものとは全く違っていた。 「お前の食い残しなんていらん!ヌガーなんて別に食いたくない」 「……」 それがロイお得意の意地っ張りだとは短くもない付き合いの中でよく判っている。だが、なんとなく面白くなくてハボックは目を細めて言った。 「そっスか。じゃあ食っちゃいますね」 「えっ?!」 思いがけない言葉にロイは驚いて顔を上げる。そうしてロイが見たのは、包みから取り出したヌガーをハボックが口に放り込む瞬間だった。 「あーッ!!」 パクンと口を閉じるハボックにロイは叫んで立ち上がる。ハボックの胸倉を掴むと乱暴に揺すった。 「貴様ッ!私のヌガーを返せッ!!」 「ちょ……ッ、なにするんスかッ」 ガクガクと揺すられてハボックがロイの腕を掴む。だが、ロイはやめるどころか更に数度乱暴に揺すって掴んだハボックの襟首をグイと引き寄せた。 「返せッ!!」 ロイはそう言うなりハボックの唇に己のそれを重ねる。ビックリして凍りつくハボックの口内に舌をねじ込むと溶けかけたヌガーを取り戻した。 「な……な……」 「私のヌガーっ」 口を押さえて目を見開いたまま凍りつくハボックを後目に、ロイは嬉しそうにヌガーを味わう。 「やはり旨いなッ、よし、ヒューズに言って送らせようッ」 ロイはそう言うとルンルンと弾むような足取りで立ち去ってしまった。その背を呆然と見送ったハボックは口内に僅かに残るヌガーの味に気づく。そうすればロイに口移しでヌガーを奪われた事実が鮮明に蘇り。 「オレの純情を返せ―――ッッ!!」 秋の空に大声で叫ぶしかないハボックだった。 |
| ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 摩依夢さまのお話を読んだ後、どうにもお菓子の行方が気になりまして思わず続きを妄想してしまいました。なんかロイが妙な事に……(汗)ちなみにこのハボックとロイはデキてません。ハボックはロイにチュウをお月見どろぼうされたってことで(苦笑) せっかくの可愛いお話にこんな妙な続きですみませんーーー(滝汗) |