ハイムダール国物語番外編  〜王子様のレッスン〜



Lesson2 by 古賀恭也


  「今度はオレ?」
  「そうです。現時点では“夫として妻を娶る場合と、妻として夫を迎え入れる場合”の両方ともが必要でなのです」
   王命を下した時の王の顔をティワズは思い出す。
  (あれは絶対に私の動揺具合を楽しんでいた)
   媚薬入りのクリームと説明書きをわざわざ持たせたという事は、ティワズという青年には経験が無いと知っての事だからだ。それでもこの命を真っ先に自らに打診してくれた事はありがたい。
  (他の誰かが、今こうして若を抱いているなど……どこかで案じている身になるのは嫌だ)
  「若がお疲れのようでしたら、日を改めて後日という事でも構いませんし、私は若と違って、成長した男の体ですから“抱く”のには不向きかもしれません。こちらの役目は……もっと若い少年でも構いませんよ。若がその方がいいのなら手配いたします」
   ハボックは他の少年を抱く事が出来るだろうかと考えてみる。だが、15年生きた中で男に対して好意を抱いた覚えがない身では、そちらの方が心もとない。
  「オレはティがいい。もしかして……ティは嫌?」
  「男は嫌いです。若の為でなければ、自らではこういう事はなかったでしょうね」
   今日のティワズは普段に較べ幾段と優しい瞳をしている。赤い色の眼は、ともすれば冷酷に映って見えがちだ。
  「だから……男を抱くのは女性を抱く経験があれば何とかなったのですが。男に抱かれるのは……どうにもピンときません。たぶん私も指導というのではなくなります。その……“初めてのお方を迎える場合”としてはいいのかもしれませんが…」
   ティワズがやや目を伏せて言葉を濁した。
   ハボックはキョトンとした。
  「初めてにしては慣れているみたいだったけど」
  「……若の為に知識は教本で勉強したのですよ。技術は女性との物でも応用が利く。それに、城には経験者がいますからね。経験談は気を払えばいくらでも拾えるんです」
   彼はそう言って、大変だったのだと苦笑した。
  「ティワズ……ティも初めてだったんだ……」
  「男の恋人を持った事はありませんし、私は王子の教育係兼遊び相手ですから、そういう趣味を持つ大人に手をつけられる可能性が少なかった」
   今度はハボックからティワズに口付けする番なのだ。
   今日の夜の営みは、父王に王命を貰ったのだろう。その時きっとティワズは驚いたに違いない。
  (父上が他の人にこの命を与えなくてよかった。こんな恥ずかしい事、ティとじゃなきゃ出来ないし……他の奴にこんな事されるなんて絶対に嫌だ)
  「オレにもティをちょうだい」

  「考えてみたら……最近のティの裸を見た事なかった。ティはオレの裸いつだって見ているのに」
   こうしてティワズの裸身を触るのは久しぶりだ。久しぶりの感覚にぺたぺたと触っていく。
   男の体に触りたいと思う事は未だもって無いけどティは別だ。幼い時などこの体にしがみついて寝たものなのだ。
  「私は湯浴みの時に、若の体を洗って差し上げているだけです……」
  「だからオレのくすぐったい所とか全部知っているんだ。すっげー、弱いとこも。でも……」
   肩や胸板を珍しい物を触るようにする15歳の少年の手をティワズはしたいようにさせていた。
  「オレは今はよくわかんないや。ティの体……すっかり大人になっちゃってる。オレと一緒に風呂入ってたのって、ティが今のオレと同じくらいの時だった……よね」
  「それは歳ですか? それとも今ご覧になっている物のサイズですか……?」
   王子の視線は、つい先程その躯の内を翻弄させたソレを見つめていた。
  「風呂……か。ずいぶん痛い思いをさせられました。若は油断したらすぐ引っ張るし」
   そう言ってティワズはまた苦笑いした。
  「だって、楽しかったんだもん。ティでも悲鳴上げて蹲っちゃうんだからさ」
  「男なら誰だって蹲りますよ。本当にやんちゃボウズなんだからな……」
   王子であるハボックは父や母に世話をされるという事は無い。王族だけでなく貴族でも、身の回り全般や教育は家臣や召使の仕事だ。もちろん子供の世話などしなくても、父王も亡き母妃も自分の事を大事にしてくれた。
   本来なら王子様の幼少の頃の湯浴みは、召使や侍女がする仕事である。のだが、ティワズが小さな王子様と一緒に風呂に入って全部の世話をするようになっていた。
   というより、一人で湯に入るのが嫌でたまらない王子様が「ティとなら入る」とごねた為に、困り果てた大人達に任されたのだ。
  「風呂だって、一緒にオレと入ればいいのに。城の湯浴みの桶は大人の二人ぐらい入れるんだから」
   まだ少年のティと入っていると、ほとんど湯の中で遊んでいるのに近くてハボックにはとても楽しかった記憶がある。
  「一定以上の年齢になったら、そういうのは恋人とか……愛人とかとするものですよ」
   6も年上のティワズは先に一定年齢に達して、もう王子と一緒に風呂に入るという事は無い。その上で徐々に王子の友人であり・家臣としてのスタンスも作っていくようになった。
   でも、ハボックにはそれもこれもが彼が遠ざかって行っているようにしか思えなくて不満がある。
  「ふうん」
   ハボックはティワズの体に圧し掛かりゆっくりとマントの上に押し倒した。半分以上は年上の青年が倒れてくれたのだが、そのまま被さるようにハボックは青年の唇にキスをする。
  「ティ……恋人とそういう事をしたりした……?」
  「恋人を作ってゆっくりデートする暇があればそういう事もあるかもしれませんね」
   第一王位継承者の王子の近従、そしていずれは王の側近になるはずの彼だ。若輩の身にはまだまだ覚えなくてはならない事がある。女にかまける暇はあまり無いのが現実だった。
  「こういうパーティーの時に、ティだって貴族のお嬢様と消えるだろ」
  「……そうやって、女性との付き合い方を覚えていく物なのです。若い貴族にも恋人や伴侶に適した相手を見つける良い機会だ。王子ご自身がもう少ししたら、引く手あまたになりますよ」
   なにせハボックは王位継承者。王子の心を射止めれば、正妃の座が望めるかもしれないのだから。
   今ですら、貴族の姫君は歳若い王子との顔合わせに余念が無い。
   公式の場でも非公式の場でも、親達は自分の娘がいかに裁量があり高貴でありかけがえの無い宝であるか王子に売り込もうとするのだ。
   子供として適当に挨拶してやり過ごせばよかった時期も過ぎ、次の段階に入るのかと思うとげんなりする。
  「めんどう。どうせ、父上とか重臣達が決めちゃってオレの意見なんか関係ない……」
   少年がついばむようにキスをすると年上の青年がそれに応える。もう少し長く強くキスしてやろうと少年が試みれば、それ相応のお返しをされ、いつの間にかすっかり激しい情動の渦の中に二人はいた。
  「知らない女の話なんかどうでもいいよ」
  「若?」
   キスしている間も王子の金髪の頭を優しく撫でていた手が止まった。
  「パーティーで女の人と消えたら、その人を知る機会なんだろ? じゃあ、男の人と消えたら?」
  「……そういうご趣味の方なら、同上なのでは……」
  「……そういうご趣味じゃ無いけど。それでもティと消えたんだから、ティを知りたい」
   愛撫される事なく勃ちあがりかけた王子のかわいらしく元気な物を見て、青年は最後の覚悟を決めるのだった。

   ハボックも先程されたようにティワズの体に口付けの跡を散らしてみる。ただし、加減というものがまだわからず、吸い過ぎて「痛い」と言われたり、弱すぎて「くすぐったい」と笑われたりしながら。
   相手を“愛撫している”よりは“甘えてじゃれている”だ。
   20歳を過ぎたティワズと違って、今日成人したばかりのハボックにはそもそも女性の経験も少ない。胸の飾りにイタズラしている少年を横目に、それを熟知している青年は例の媚薬入りクリームの瓶に手を伸ばした。
   痛い目をみないためには自分で慣らす必要がどうしてもあったからだ。迎え入れる場所は。
  「あ、それ! オレもティにしてやる。つか、やりたーい」
   ハボックは目ざとくそれを見つけた。
   嬉々としてそう言う相手に、ティワズは困ったような表情を浮かべる。
  「さっきティにされた時、どこを触られるかわかんなくて、何か腹の中がもぞもぞして。でも、思っていない所を触られて、ビックリするほどなんかきちゃって……そのうちとても熱いんだか重いんだかわかんなくなって……あれ、すごい気持ちよかったんだよね、オレは?」
   少年が体験を話すのはこれが限界かなという漠然感でハボックは先程の体験の感想を言った。
   男の子にそういう事をしたのがこれが初めて、自身には体験がなし、女性のそこに対して興味を示した事も無いのだから、気持ちよかったと言われるのなら「それは良かった」とティワズは喜べばいいのだろう。
   が。
  「私にもそれをやってみたいと?」
  「うん!」
   ハボックはやってみたくて堪らない様子を隠せなかった。好奇心に満ちた目でティワズを見る。
   年下の少年に満面の笑みで「やってみたい」と言われて、しかしティワズの方は怯んでしまった。セックスをするのだか、おもちゃにされる為に体を差し出すのだかわからなくなってきたのだ。
  (さすがに怖いぞ……)
   大人の残酷さなど十分知っているつもりだが、子供の無邪気さも残酷さに匹敵する事を知っているのだから。
  「……若にそんな労力を……」
  「オレもしたい!」
   ハボックがきっぱり言い切った。
   こうなると頑固な御仁だし、仮に慣らす自体は自分でできたところで、挿入された後に機嫌の悪いままに揺さぶられたらそれこそ堪ったものではない。なにせ、二人とも初めてなのだ。
  「若……敏感な部分だし、傷をすると治療をする事もなかなかかなわない部位なので、無茶はしないで欲しいです」
  「ティ……さっき信用してってオレに言ったのに、オレの事は信用してくれないんだ……」
   ハボックは口を尖らせてむくれた。
  「若が風呂での事を思い出させたからでしょうが」
   その件に関して言うなら、今でも信用できないぐらいあれは痛かったのだ。
  「ティのここを触って気持ちよくしてあげるのもオレが最初……」
   渡された潤滑油を指にすくって、まだ誰も触れた事の無い場所に指を滑らせる。ティワズも触りやすいように脚を開いた。
   きゅっと締まりこんだそこが、どんな風に自分を迎えてくれるのだろうと思うとハボックの胸は高鳴った。
   ふと見ると、ハボックの指の動きに呼吸を合わせるティワズの頬は朱が差しているようだ。
  「…ティはオレが最後にして欲しいな……」
   そんな顔を誰かに見せないで欲しいと思う。
  「オレはもしかしたら、嫁にされちゃったりするかもしれないけど」
  「あなたが嫌がるのなら、その者を私が亡き物にするのも厭いません。私はいつでも若の味方です」
   そう言ったティワズの汗ばんだ手がハボックのマントに置いた手に重なった。

  「うん……本当だ、もぞもぞする」
  「だろー?」
   差し入れられた指がクリームの助けもあって奔放に秘所を探る。
  「こういうの、なんて言えばいいのかわかんないけど。で、いいとこに当たったらビックリするくらい衝撃が来るんだ。ティのがどこか捜してやるー」
   ハボックの口調は好奇心とイタズラ心が半々だろうか。愛情や快楽を得るという目的とは別次元の所に相手の気が行っているような感じがして体を預けている方は心もとなかった。
   二人は恋人同士でもないし、そうである以上は愛情は必要では無いのだが。学習する為にしたって、生身の体を使っているのだから思いやりというものはもちろん欲しい。
  「……っ」
   体の内部を忙しく探られるたびに違和感に眉根が寄る。苦痛というほど激しいものではないが、快楽が来ないというのは苦痛にも似るのかもしれない。
   しかも、媚薬入りのクリームに強制的に快楽を求めさせられているのだから。
  (確かに熱くてたまらない。王が私に持たせた筈だ。……しかし、ねだるわけにもいかないし、ねだった所で技量的に無理かもな……)
   抱擁する相手に余裕があるなら、体にキスをしたり愛撫をしたり、それこそ性器への刺激もくれるのだろうが、今の所は王子はそういう事には気が行かないようだ。
   少年の指が行き来する箇所に意識を向けると、自分は男を迎えるための準備をされているのだと思い知る。
   秘所からは、快楽がないそれですらクチュクチュと水音が聞こえるのだから。
   自分で慣らしたほうが数段気が楽だ、と天空に白く輝く月を見ながらティワズは思った。
   人前での自慰に等しいそれに羞恥心は付きまとう。しかし誰かと体を迎合させる事はどうやったって恥ずかしさはある。ならば、より快適な方をとりたいと思うのは大人であるからか。
   幼少時から身を預かる王にもその重臣も城に出入する有力貴族からもそういう対象にされた事は幸い無い。
   強いていうなら、同齢の剣を交えて交友のある貴族の子弟とは、貴族の趣味として誘いを受ける事があるくらいだ。
   それでも自分にとって魅力的なのは、女性の丸い柔らかい体の方だった。時にはかしましいと思うが、キャラキャラと笑う高い声が組み敷いた相手から聞こえるのがいいのだ。
   実は今でも、何を好き好んで男の体に触れたがるのだろうと彼らが不思議でならなかった。
  「……ティ……感じない?」
   そうこうして、ハボックが困ったような声をあげた。
   ティワズは背を預けていたマントから少しだけ体を起こした。ハボックは困ったような表情で準備が整わない場所を見詰めている。
  「というより……うまく外されている感じ……のような?」
   触られている感触があるのだから、特別自分が鈍いというわけもないだろう。入口自体は随分慣れているみたいなので、もう主を迎え入れてしまってもいいように思えた。
   ハボックの手は休まずに前後する。
  「若、もういいですよ」
  「でも、オレもティを気持ちよくしてやりたい」
   ティワズが見れば、入りたくてしょうがないのだろうハボックの性器は膨れて濡れている。もう三度も達しているはずなのに元気なものだ。どうにかしないと、これではお互い生殺しだった。
  「う…ん。入口に指が当たる分では快楽が来るんです……若……ゆっくりと、少しづつ内壁を撫でてみて……ぐるっとまわすように」
   さっきまで勢いづいて指を動かせていたのを止め、慎重な指使いで言われたとおりハボックは中を探ってみる。
   すると、そう待たずに。
  「あ……そこ、だ」
   ティの指がくっと掴んでいたハボックの腕に食い込む。今さっき当たった箇所を、ハボックが強く擦ってみるとようやく望んでいた上ずった声が聞けた。
  「あ…うっ……く! …わ…かっ」
   今まで反応しなかったティワズの体が大きくびくりと震え、萎えていた性器が勃ち上がったのだ。

   やっと見つけたその場所を指でバラバラと刺激すれば、鍛えられたティワズの体がのけぞった。ハボックのように大きく声を上げる事はなかったが、それでも過ぎる衝撃に声は漏れた。
  「うん…んっ」
   均整の取れた体に汗がうっすらと乗るのが月明かりの下でさえ見て取れた。
  「ティ……気持ちいい?」
   当惑したようでいて陶然としているような瞳が覗き込むハボックを捉える。
  「待っていたものが来た……感じっ、もっと……」
   そう言うと彼は瞳を閉じた。後は指の動きに息を弾ませるのみだ。
   ハボックは知っていた。
   ティワズをこういう風に乱してみたいと思っている者が城には多くいる事を。それは彼が剣を交える者や学友や率いる護衛部隊の兵士の中ですらだ。
   貴族の子弟の中には妹を紹介するといって歳下のティワズを誘うものもいたが、子供のハボックから見てもあきらかにそいつの方がティワズ狙いにみえた。
   だから、ティワズが自分の知らない所に行くのが嫌いだ。もし、男の恋人なんて作って、そっちの子の方にばっかり行っちゃったらどうしようと思った事すらある。
  「男が嫌いだ」ときっぱり言い切ったティワズからしたら心外かも知れないけど。
  (誰かにとられていなくなってしまうのは嫌だっ)
   ハボックの下腹部にドクンと突き上がるものがある。さきほど、抱かれた時に感じたものとはまた違う感じだ。
  「あ……っ、若…っ」
   ハボックは指を引き抜いて、ティワズの腿を抱え上げる。仰向きの彼の顔を覗き込み、了承もなく自分の堪え性の無い濡れたものを緩めた入口に宛がった。
  「ゴメン…ティ! もう我慢できない。挿れたいっ」
   腹の中がうずいてうずいて仕方が無かった。彼の中に、自分の物を埋めたいのだ。
  「ああ……“男”の顔をしていらっしゃる……」
   ティワズは腕を伸ばしてハボックの顔を撫でた。そして愛しそうに呟く。
  「さあ、我が主。…おいでください」
  「うん。一つになろうね」
   ティワズにはまだ余裕があったようだ。けど、彼も内へ男と情愛を結ぶのは初めてらしいので、この後襲う痛みや違和感を知らないはず。その分ではちょっとだけ経験者だ。
   ちゃんと始末はしてもらったものの、それでも残ったティを迎え入れた場所から名残が腿を伝って流れているのだから。

   男の体内に自分の性器を突き入れるのはこれが初めてで。そして、願う事ならティ以外とする事がこの先に無いようにと思った。
  「……やっぱ……狭いね」
   女性の受け入れる場所とは違って、この挿入口には圧力があるのだ。
   組み強いた体から声が発せられる事がなかった。先程、自分も経験した痛みに苛まれているのだろう、体は小刻みに震えている。ハボックと違うのは、苦痛をやり過ごそうと荒い息を整えようとしている所だ。
   まだ少年のハボックには、挿入するという行為自体が拙い。たとえ、性器が未成熟とはいえ、立派に用を成せるサイズではあるのだから、挿れる時にモタモタすればするほど、相手には苦痛を与えてしまうのだ。
   ようやく先端の一番大きい部分が入口にもぐりこんだ。クリームの助けを借りてもこれだけもたつけば随分と痛みが走っただろう。
   自分のより大きいティワズの張り詰めた物が体の中に入ってきた時、苦痛に体がすくんだのは覚えている。でも、彼は上手に挿れてくれたのだとわかる。
  「大丈夫? ……ティ」
  「若……」
   瞑られていた目がすっと開いた。自分を覗き込む少年に彼の紅い瞳は乞う。
  「そのまま一気に奥まで……入れて」
   促されるようにすると、できるだけ速やかに性器の根元まで突き進めた。
   短く悲鳴が上がったものの、それでもその後は無言で堪えている。ハボックの体を傷つけないために、握り締めるのはマントだった。
   グチュリと二人が繋がった箇所から音がした。少し体をずらせば、水音も追う。なんていやらしい光景だろう。
  「うう…ん、始めは……きついかと思います…が、じきに慣れます……から」
  「すごい、中…温かいよ」
   息を整えながら、促したのはやはりティワズの方。ハボックは言葉が終わるのを待てずに腰を打ち付けだした。
   締め付けは凄かったが、中はクリームのおかげもあって滑りはいい。あのティワズに本当に無防備な格好で、男のものを受け入れさせているのだと思えば、少年のものがさらに中で膨らむ。
   ハボックが腰を上下させるたびに、青年は身をすくめた。その端正な顔が苦痛に歪む。
  「はあ……ティ……」
   欲望に流されるままにハボックはティワズの中をむさぼった。
   深く深く奥まで。もっともっと気持ちよく。がつがつ攻め立てる。
  「ん……う…ううっ!」
   ティワズから苦悶の声が漏れた。かと思うと、赤い髪をマントに打ち付けるように首を振り声を上げた。
  「…痛ぃ…ぅ…わ…かっ! 速度…緩めて…っ」
  「ティだってオレの時はガンガン攻めたじゃないか……」
   多少の速度を落としても腰を打ちつけるのを止める事はできなかった。
   たぶんそれは、本日初めての大きな悲鳴。
  「この体勢は……っ、腰を揺らせない!」
   なにせ、しっかりと両脚を抱え込んでほとんど上から打ち込んでいるのだから。衝撃はストレートに体の中と腰に伝わってしまうのだ。
  「あ……!」
   びたっとハボックは腰の動きを止めた。そして抱えていた彼の脚を解放する。
   両脚はゆっくりと力なく地面に落ちた。
   シーンと静まり返った森の中、喘ぐティワズの荒い息だけが耳に届く。
   よっぽど痛かったのだろう、ティワズの目には涙が浮かんでいた。かいているのも冷や汗だ。
  「痛たたたっ。……初めての方に、こんなムチャをしたら嫌われますよ……っ。男だろうと女だろうと」
   そう言ってしきりに腰をさすった。
  「もっと、早く言ってくれたら」
   苦痛から解放された組み敷いた体はぐったりとしてしまっている。未だハボックの中心が彼を捉えているが、青年の物はすっかりと萎えていた。
  「私だって、初めてなんです。まさかあんなに痛いだなんて思いもしない」
  「オレ……ゴメンね…でも、すごく気持ちよくなっちゃって……」
   少年の顔が泣きそうなのに気づいたティワズはちょっと乱暴に撫でた。こういうのも初心者には有りがちだと知っているから、責めたりはしない。
   これはレッスンだ。失敗は前提だし、愛の営みではないのだから、怪我さえしなければいいのだろう。それと現実的な話で、城に戻る体力さえ残れば。
  「今も私達が繋がっている場所は、本来の目的は別の事にあります」
   ハボックはティワズが昼の講義の時の口調で切り出したのにキョトンとする。
  「セックスでここにダメージを食らうと、本来の目的の時に……ひっじょーに苦しむ事になります。絶対に頭の中に容れておいて下さい。そしてくれぐれもお忘れなく」
   キョトンとしたままにハボックはこくんと頷く。
   ティワズは腰を揺らすと、ハボックの未だ膨らんだ物の当たる角度を変えた。
  「若……ここを突いて下さい」
   望まれるままに、突き入れてみる。するとビクッとティワズの体が歓喜に震えた。
  「っ……あぁ、やっぱり、そこだ…」
  「…ここ? そんなにいい?」
   ハボックの問いに応えずティワズは自ら腰を進める。ハボックもそれに合わせた。組み敷く体はそこを打つたびにビクビクと震え、包まれている場所がハボックをきゅっと締め上げる。
   勢いに任せて打ち付けた時と違い、何だか喜んでいる感じさえうかがえるのだ。
   ゆっくりと穏やかに腰を進めても、それでもすごく気持ちがいい。
  「ねえ、ティ……オレの事欲しい?」
   萎えてしまったティワズのモノもまた勃あがり、嫌がっていない事はハボックにもちゃんとわかってはいたけど。
   二人の息も熱も上がる中だからこそ。
  「……欲しいです。もっと……」
   そう言ってもらいたいと思ったのだ。




  「あらあら、ティワズ様。お珍しい。ハボック様の添い寝ですか?」
   姿を見せない王子の姿を見に来たらしい王子の部屋担当の侍女が、入室を許可されて、室内を目にした途端にそう言った。
   王子の寝所には、すやすやと眠る王子とその横によく知る赤い髪の近従が寝そべっていた。
  「ああ。夜駆けに出かけたのだが、さしもの若もお疲れになってしまったようで」
   ティワズはゆっくりと体を起こした。寝起きのためか侍女ですらわかる緩慢さだ。
  「城に戻るのに苦労したから、もうここで眠る事にした。……誰かの命でここに来たのか?」
   気だるそうに赤い髪をかきあげ、ベッドに日が差し掛からない場所のカーテンを侍女に開けさせた。
   いつもなら定時に侍従が室内の調整に来るのだが、祭りや儀式等の特別な行事の後は、室内への立ち入りは許可が下りてからになる。高貴な方が何かをされている時に邪魔をしないように。
  「はい。ハボック様が起きて参られないし、ティワズ様すらおいでにならないので王がお部屋の様子をうかがうようにと……」
  「私をお呼びなのか?」
   王命であるなら参じなければいけない。だが、とても体がだるい。
   女性を抱いたのならこうはならない。昨日抱いたのは少年で、抱かれたのも少年にだった。
  「あ、いえ。眠っておられるのでしたらそのままにしておけと。ただ、なんだか落ち着かないご様子でした」
  「では、我が王には“万事滞りなく”と。それだけ伝えておいてくれ。ああ。それから、今日は二人とも自室にて過ごしたいと……」
   正直、今は事のあらましを知る人間には会いたくない。たとえ敬愛する国王だろうと。
  「昼餉はどうされます。こちらにお持ちしましょうか」
   侍女はとりあえず、部屋に訪れた時の基本の仕事。手水の支度と、飲み物の給仕を始めた。
  「そうだな。若の好物が一通り欲しいな。きっと腹をすかせている」
   侍女が笑った。城から抜け出すのがままある王子様なのは知られている。
  「ハボック様ったら。ご自身のお誕生日のパーティーなのに抜け出されたのですね」
  「まあ、いいさ。私もついていたのだから」
   成人したとはいえ、幼さの残る寝顔を覗き込む。この方にとって、昨日の出来事がプラスになればいい。
  「夜には誰もがお気に入りの相手と仮初の恋語りに勤しむじゃないか。もう若の存在など気にしてやしない。そういうお相手もいないから若には退屈だろうな。幸い私にも、昨日はお目当てのご婦人もいなかったから……夜駆けも若にはこれから必要になってくるか。もっと教えて差し上げなければ」
  「ティワズ様はご結婚はお考えにはならないのですか?」
  「お前達ですら気になるか?」
   侍女が気になると言うのは、もっぱらゴシップ好き程度の話だろうが。
   20歳にもなればもっぱらその話だ。ティワズでさえウンザリするくらいである。だから実は王子が婚姻の話に嫌そうにしているのは同情できるのだ。
  「それは、城の若い女ならもう……」
   花嫁になる事は叶わなくても一度くらいお手がついてみたいと思う若い侍女は多いのだとは、高貴な方には言えないけれど。
  「私の方も家が持ち込んだらあるかも知れないがな……果たして私は、家人である事を覚えてもらっていただいているのかあやしい所だよ。ああ。下手をすれば、王が私にも政略結婚を持ってくるという可能性の方が大きいかもしれないな」
   親元を離れて十何年ここにいるだろうか。血の繋がりは切っても切れぬ濃いものだと皆は言うが自分にはよくわからない。
  「そうなのですか? そうなると、若様はまたごねられるでしょうねえ」
   侍女が溜息混じりにそう呟くのにティワズは不思議そうに尋ねた。
  「どうして私の婚姻に若がごねるんだ?」
   侍女は思い出し笑いをして。
  「……ティワズ様は知っていらっしゃいました? 若様はパーティーがお嫌いなんですよ」
  「初耳だな。……ご馳走が食べられるからいつもわくわくしていらっしゃるように思えたが。やはりあれかな、儀式や式典とかが堅苦しいか」
  「それもあるのでしょうけど。一番の原因は、ティワズ様が貴族の姫君のお手をとられて若様のお傍にはいらっしゃらないからです」
   ぺこりと挨拶をして、侍女は退出した。

  「……ティ……。結婚の話があるの?」
   寝起きのくぐもった声がする。
  「個人の売り込みはありますが、予定は無いですよ。ご心配なく、若」
   ハボックがまだ眠そうに目を擦る。それから横に座るティワズの左腿にしがみついた。
  「まあ、若の方が先になるんじゃないですか」
  「オレ、まだいらない……」
  「恋人の数人くらいはお作りなさい。その方が、うるさいのが回避できます」
   それは実経験だ。恋人すらいないと、本当に心配させるのだ。しかも、結構心外な方向で。
  「そうなの?」
  「まだ遊びたい盛りなのだと思ってもらえます。なにせ、古い方だっていまだに遊びたい盛りの方が多いですからね。そこをつけばくどくど説教も食らいませんよ」
  「ティでもお説教貰うんだ?」
  「それはもう、若より六年分多いです。私が若い頃はもう子供がいて、愛人すら囲ってたとか……説教なんだか自慢なんだかわかりゃしない」
   ティワズがウンザリしているのを隠さないのにケタケタとハボックは笑った。
  「腰も例の場所も……具合大丈夫ですか?」
  「腰がすごくだるいよ、オレ頑張っちゃったもん。ティこそ大丈夫? オレは一回だけど、ティは二回だし」
   昨晩、実は……一度でティワズを満足させる事が出来ず、二度目を敢行していた。早い話が、自分だけ先に達しちゃったというやつである。

  「ゴメン。オレだけ先に……っ」
   もう何度謝ったのだろう。ティワズは苦笑していた。
  「…仕方ないですよ。私のは自分で始末しますから。抜いてください」
   まだティワズは一度しか達してない。ハボックの内に埋めた時の一度だけ。
  「でも……」
   まだ勃ったままのモノは濡れて解放を待っている。
  「お気遣いなく」
  「だめ。ちゃんとオレのでイカしたい。オレは男なんだし」
  「……わっ若!? やめっ…! 城に戻る事考え……っ」
   と争う体を抑え込んで、すぐに元気になったモノで攻め立てたのだ。
   なにより、彼が達した所を見たかった。

  「あの後、死ぬ思いでここに戻ってきたんですからね」
   そして、すっかり疲れて眠り込んだハボックを背負って、ティワズはこの部屋まで戻ってきたのだ。
   少年というものが前後の見境が無いというのを計算に入れていなかったための苦労だ。もう自室に戻る気力もなく、やはりこういう時は朝目覚めた時に傍にいたほうがいいのだろうと、ハボックの隣で眠りについた。
   それこそ泥のよう眠ってしまった。
  「初めっからここですればよかったのに……」
  「ここで? 私達が睦み合っているのを知らない方の乱入や、知っている方のデバガメが考えられるし、成人したばかりの王子様の寵愛を戴こうと寝所に参られる方がおられるかもしれない。私はこれでもデリケートな方なのでそういうのは遠慮したいのです」
  「あー、それはすごい気まずいー」
   女の子と遊んでいてもそうだが、ティワズとなのだ。しかも、上になったり下になったりしたのだから。
   ざわざわと木の葉のさざめきが聞こえるだけの中、月光の下で二人で絡み合った。
   考えに考えた場所だったのだと思う。デリケートな彼にとって。
  「ティワズー」
   とハボックが声を掛けると。
  「なんですか?」
   そっけない口調でティワズが返す。
  「昨日はすごくよかった。それからお世話様でしたっ」
   満面の笑みでお礼を言うと。
   ティワズは薄く赤くなりつつ。
  「はい。お世話しました」
   またそっけない口調で返したのだった。



                          〜了〜


    初めは、ティハボ&ハボティの両方をみつき様が書く筈でした。
    が、そのうち珍しく「恥ずかしいっ、恥ずかしすぎるっっ」とおっしゃられて躊躇されたのでハボティの方は私が書く事に相成りました次第です。
    小説を他所様に贈るのは初めてで、しかも合作も初めて。なんてチャレンジを。
    そしてうちの子がモデルのキャラを使ってのパロディーとなるともはや何に部類されるのかすらわかりません。
    わあ、どうしようと、いう話なんですが……ともかく“絵茶での話題”がこういう形になりました。
    皆さんのティワズのイメージが壊れなかったらいいのですが。

    ちなみにみつき様が何を恥らったかと言うと、ティワズに「さあ、王子。おいでください」のこの台詞を言わせる事。ちょっと台詞を変えたけど、言わせてみせたからね。(笑)

    みつき様のレッスン1が可愛い系のエロできましたので、それを受ける形のレッスン2は色っぽい系(+お姉さん)を目指してみました。私は終始、百合だ百合だと言ったから。
    それから「初心者って必ず事故るんだよね、後々のためにもここで失敗しておけ」というのも入ってみてと。
    まあ……受けとしてのティの体がよさそうなのかどうかは皆さんの推察にお任せです。



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  ということで、古賀さまから王子様のレッスン2を頂きました!
  もう、無邪気で興味津々なハボと抵抗アリアリだけど王子の為に頑張るティのやり取りが最高で読んでる間中顔がニヤけて止まりませんでした(笑)それでいて色っぽくて、もう、ホントにステキvvv 正直、レッスン1も古賀さまに書いて頂けばよかったとすっごい後悔しましたよ(苦笑)でも、思いがけず合作なんて機会を頂いて本当に楽しかったです!
  エロ可愛いティハボ絵と、二人のやり取りが最高のレッスン2、
  古賀さま、ステキなハボティハボをありがとうございました!!

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