| そういう人々 第二十三章 |
| 「セントラルのアンタのお友達もね。あの人、オレが獣人族だって気づいててオレにアンタを押しつけたんスよ」 「な……ッ」 「大佐のお友達というとヒューズ中佐のこと?全然気づかなかったわ」 「そりゃ中佐っスもん」 ハボックがそう言えばホークアイが苦笑する。ロイはふるふると震える拳を握り締めた。 「あの野郎ッ、私には一言もそんなこと……ッ!!親友だと思ってたのは私だけということかッ」 こんな大事な事を話してくれないとは、とロイはくしゃりと顔を歪める。そんなロイにハボックは言った。 「親友だからこそ言えなかったのかもしれませんよ。それにあの人、アンタを頼むって連絡してきた時すげぇ必死だった。あん時のあの人の声聞いたらきっとそんな心配は吹き飛びます」 ハボックの言葉にロイが目を見開く。 「まあ、実際アンタみたいに抜けてんの、中佐じゃなくても必死になりますけどね」 「さっきの少尉、本当に必死だったものね」 そう聞けば更に大きくなる黒曜石にハボックが照れたように頭を掻いた。 「おかげで中尉にオレの正体バラす羽目になったっスけど」 「それはお互いさまでしょう?でも、私が白を切り通したらどうするつもりだったの?」 「そうなったらヤバかったっすねぇ」 色んな意味で、と苦笑するハボックをロイは睨む。 「おい、お前まさか嗅いだ匂いだけで中尉に話をもちかけたのか?」 「そうっスよ」 「おま……っ、お前の鼻に私とお前の未来を賭けたのか」 とんでもない話だとがっくりと肩を落とすロイを見てハボックは言った。 「そうっスよ、だってオレ、獣人族としてのオレに自信ありますもん」 その言葉を聞いてロイはハッとしてハボックを見る。薄く笑みを刷いて見つめてくるハボックも、その隣で同じように微笑むホークアイも、その瞳にあるのは獣人族としての誇りと自信だった。 「そう言えばお前はどうやったら犬の姿になるんだ?中尉も。司令部で鷹なんて見かけたことないぞ」 不思議そうに言われてハボックとホークアイは顔を見合わせる。プッと吹き出したハボックがクスクスと笑いながら言った。 「そんなの、なりたいときになるに決まってるじゃないっスか」 「は?」 「空を飛びたいと思った時に鷹になって、戻りたい時に戻ります」 「そ、そうなのか?」 二人とも自在に姿を変えられるのだと知ってロイは呆然とする。 「だから私にあんな訓練を……」 自由に獣人族と人の姿をとれるハボックにしてみれば、自分の意志で戻れないなどとても考えられないのだろう。がっくりとソファーにヘタリ込むロイにハボックが言った。 「大佐は獣人族になって間もないから。まだ安定してないんスよ」 そう言われてロイがため息をつけば、ハボックがソファーの前にしゃがみ込む。 「それで?どうするんスか?オレと中尉と、大佐に秘密明かしました。中佐とブレダの正体もバラしたっス。それを聞いて大佐はどうするつもりっスか?」 言って見つめてくる空色はこれまでと変わらぬ落ち着いた色合いだ。ロイが顔を上げて見れば、ホークアイもいつもと同じ鳶色の瞳でロイを見つめていた。二組の瞳をロイはじっと見返す。そうすれば胸の内に沸き上がってくるのは獣人族としての誇りだった。 「そんなの、聞くまでもないだろう?私はお前に言ったはずだぞ、獣人族をアメストリスの為に役立てる、とな」 言ってニヤリと笑うロイにハボックとホークアイも笑みを浮かべる。互いに頷きあうとハボックが立ち上がってロイに手を差し出した。 「ついていきますよ、大佐」 「ハボック」 「優秀な人材が無駄に葬られることのない社会がくると信じてますわ」 「中尉」 かけがえのない仲間であり部下である二人にロイは力強く頷く。 「任せておけ。必ずこの私がアメストリスを変えてみせ────」 言いかけたロイは不意に鼻がムズムズと痒くなる。止めるまもなく大きなくしゃみが口から飛び出て、ハボックとホークアイの前には毛並みも美しい黒猫が鎮座していた。 「ああッ!また猫の姿になってしまったッ!!」 うわあ、と頭を抱えた黒猫は、次の瞬間「戻れ、戻れ」と念じ始める。その姿にハボックとホークアイはやれやれと顔を見合わせた。 「本当についていって大丈夫っスかね?」 「なんだか不安になってきたわ」 「くそうッ、戻れんッ!!お前達、どうやって戻ってるんだ、教えろッ!!」 ギャアギャアと喚けばボボンッと音が二つ重なってロイの前に金色の犬と優美な鷹が現れる。 「戻るのなんて簡単っしょ?戻ろうって思えば、──ほら」 「そうですわ。人の姿を思い浮かべれば簡単に」 その言葉と同時にたった今犬と鷹になった二人が人の姿に戻ってロイを見下ろしていた。 「ほら、やってみて、大佐」 「簡単にいうな、簡単に」 何でもないように言われてロイがウッと詰まる。それを見たハボックがポンと手を叩いた。 「そうだ、オレより中尉に訓練して貰ったらいいんスよ。中尉に指導して貰えばきっと一発っス」 「あら」 「いや、それはちょっと」 ハボックの言葉に狼狽えるロイを見つめたホークアイが爽やかな笑みを浮かべる。 「そうね、私たちの明るい未来の為には大佐をしっかりと教育する必要があるわね」 「いや、中尉、ちょっと待ってくれ」 「私の躾は厳しいですよ、大佐」 「あはは、頑張って下さい、大佐」 それじゃあと、早速訓練のスケジュールを立て始めるホークアイにロイが悲痛な声を上げた。 小さな黒猫を指揮官に鷹と犬が尽き従う。己の国により良い未来を築く為、自分達の能力を最大限に生かせる社会を作ろうと奮闘する、今はまだ秘密の多い、そういう人々。 2012/12/17 |
| 第二十二章 ← ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 柚木さまから頂きましたリクで「原作ベースのパラレルで、猫になる体質を持ったロイと世話をすることになってしまったハボックの話」でした。……うーん、いつもの事ではありますがどうもなんかちょっとばかりリクとは違う話になった気が(汗)最初はもっと可愛らしい話にしようと思っていたのですが、「ハボが犬になる体質でも面白いよなぁ。ああ、いっそのこと中尉達も」などと考え始めたら気がつけばこんな話になってました(苦笑)「ここで終わり?」と言われそうな気がしなくもないですが、これ以上書くとリクと益々離れてしまうので、いったんここで終わりにしています。ちなみに残りの連中、ファルマンがフクロウ、フュリーはコメントで頂いたメガネザルがピッタリ(笑)そしてブレダはオランウータンと考えてます。ヒューズはやっぱり狼ですかね(笑)あ、そうそう、ここでは変身した場合質量は保存されません。元の体重のままじゃ黒猫抱っこ出来ないし(爆)お洋服はキューティハニー方式で装着されると思います(ええっ?)夜一さんのようにマッパにはなりません(笑)こんな話になってしまいましたが、少しでも楽しんで頂けるところがあればいいなと思っております。柚木さま、楽しいリクをありがとうございました。 |