第二十章 |
「やったっ!」 ハボックに向けて銃を放ったヒューズは短く言って拳を握り締める。銃の腕には自信があった。銃に込められていた銀製の弾はハボックの心臓を貫き、彼の体は塵となって消えただろう。そう確信したヒューズが笑みを浮かべた時。 「そんなもんじゃオレは殺せないっスよ」 耳元で低い声が聞こえてヒューズは凍り付く。驚愕に常盤色の目を見開いてゆっくりと振り向いたヒューズは、すぐ後ろで空色の瞳が自分を見つめていることに気づいた。 「ど、うして……?」 「確かに撃った筈なのに、っスか?」 呻くように言うヒューズの言葉を拾ってハボックが続ける。ハボックはうっすらと笑って言った。 「そうっスね、アンタ、銃の腕は悪くないし、普通のヤツなら一発だったでしょうね」 ハボックはそう言ってヒューズの常盤色の瞳をじっと見つめる。 「でも、アンタにオレは殺せない」 ハボックは言ってズイとヒューズに一歩近づいた。思わず気圧されるように一歩引いてヒューズはチッと舌打ちする。挑むように睨んでくるヒューズを見つめてハボックが言った。 「アンタは知らないっしょ?オレがどれだけ長いこと一人きりだったか。人間だけじゃない、鳥も花も季節すらオレと一緒にはいてくれなかった。望んでこうなったわけじゃない。永遠に凍り付いた時の中で過ごす孤独が、どれほどのものかアンタは知らないっしょ?知らないヤツにオレは殺せやしない」 「お前……」 感情の籠もらぬ淡々とした声は、だがむしろヒューズにハボックの哀しみの深さを感じさせる。長い長い時の中、ハボックが抱え続けてきた深い哀しみを。そのあまりに深い哀しみの念に飲み込まれそうになったヒューズは、それでも唇を噛み締めて言った。 「そうだな、お前が抱えた孤独なんて俺の知ったこっちゃない。お前にロイは渡さない、ただそれだけだ」 「あの人だって誰にも癒せない孤独を抱えてるのに?あの人の孤独を埋められるのはオレだけっスよ」 「そんなの貴様の思い込みだッ!」 ヒューズはそう怒鳴ると手にした銃をハボックの胸に押しつける。ハッと見開く空色にニヤリと笑って言った。 「これなら逃げられんだろう?……消えてなくなれッ!!」 ヒューズはそう怒鳴ると同時に、躊躇うことなくハボックの胸に押しつけた銃の引き金を引いた。 2010/10/12 |
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