純愛  chap.4



 ハボックが目を覚ました時には全てが終わっていた。メッケルは違法な薬に手を出していた咎で失脚していた。本人は否定していたようだが、証拠の書類や写真が揃っており、なによりその体から薬物が検出されては言い逃れのしようがなかった。メッケルが捕まった時、一緒にいたハボックも形ばかりの取調べを受けたが、特に追求されることもなく、早々に解放されていた。
 数日たったある日、ロイを自宅まで送ったハボックは、ロイに家に上がっていくように促され、迷ったもののロイに確かめたいこともあり、ロイの家の玄関をくぐった。珍しくロイが淹れてくれたコーヒーを前にリビングのソファーに腰を下ろす。
 互いに何から話してよいか判らず、気まずい沈黙が広がる中、ようやくハボックが口を開いた。
「あそこのホテルからオレを連れ出してくれたのは中佐ですか?」
「そうだ」
 ロイの返事にハボックは唇を噛み締めた。ロイに見られたのだと思うと情けなくて涙が零れそうになる。それでも何か言わなくてはと必死に言葉を探すハボックより先に、ロイが口を開いた。
「すまなかった、ハボック」
 そう言うロイにハボックはハッとして顔を上げる。
「なんで、アンタが謝るんです?」
「私がもっと早く気がついていれば、お前をあんな目に合わせずに済んだ」
 辛そうにそう言うロイにハボックは苦く笑った。
「アンタの所為じゃありませんよ。それに、もう、ずっと前からですから…」
 苦く呟くハボックの言葉にロイが目を瞠った。
「メッケル准将の下にいた1年の間、ずっと、です。もっと酷い目に合わされたこともあります。だから、アンタが気にすることなんて、なにもないっスよ」
 そう言って微かに笑うハボックにロイは絶句した。
「そんなことより、アンタ、どうしてあんなことをしたんです?」
「あんなこと?」
「メッケル准将ですよ、あれ、アンタが仕組んだんでしょう?なんであんなことを…」
 もし、バレたらと、詰るように言うハボックを睨んでロイは答えた。
「お前を傷つけたからだ」
「っ?!」
「アイツは最低な方法でお前を傷つけた」
「ちゅう、さ…?」
「本当なら焼き殺してやりたいくらいだ」
「中佐っ!」
 ハボックはふと思い至った事にハッとなって言った。
「アンタ、まさかあの酒瓶、錬成して…」
「薬を仕込んでから蓋を錬成した。よく出来ていただろう?」
 にやりと笑って言うロイにハボックは息を飲む。
「もしバレたら…っ」
「構わない」
 目を見開くハボックの側へやってくるとロイはハボックの髪を撫でた。
「お前を傷つけるヤツは誰だろうと許さない。その為にはなんだってやるさ」
「ちゅうさ…」
「お前が好きだ、ハボック」
 ロイの言葉にハボックがびくりと体を震わせる。
「私はお前が好きだ。お前は?この間キスしてきただろう、あれは…」
「あれはっ!」
 ロイの言葉を遮るようにして、ハボックは大声を上げた。押し黙るロイにハボックは早口で告げる。
「あれは、忘れてください。どうかしてたんです」
「ハボック!」
「オレにはアンタを好きになる資格も、アンタから好きになってもらう資格もないんスよっ!!見たんでしょうっ?!」
 オレがアイツに何をされてたか、とハボックは呟くように言った。
「上官命令だって、イヤだったけど、でも結局はアイツのいいようにさせてた。アイツのもん咥え込んで、あ、喘いで たんスよ、オレ…っ!こんな薄汚い…っ!アンタにキスするなんて、どうかしてたんです!だから忘れて―――っ」
 言い募るハボックをロイはかき抱いた。折れんばかりに抱きしめると耳元で囁く。
「お前が好きだ。お前がいいんだ、お前でなければイヤだ。お前は?」
 そうして少し体を離すとハボックの空色の瞳を見つめてロイは言った。
「お前は?ハボック?」
 黒い瞳に真っ直ぐに見つめられてハボックは息を飲んだ。
「…オレは…」
「お前は?」
 ハボックは泣きそうに顔を歪めて俯いた。
「だって、オレは…アンタのこと好きになっちゃダメだって…ずっとそう思って…」
「ハボック…」
「でも、どうしても止められなくて…好きになる資格なんてないのに…」
 ロイはハボックの顎を掴むと上向かせた。
「資格なんて、誰が決めるんだ。いい加減にしろっ!」
 それからふっと瞳を和らげると囁く。
「私がお前を好きなんだから、それでいいんだ」
 ハボックの瞳に涙が膨れ上がった。
「お前が好きだ、ハボック。お前は?」
 膨れ上がった涙がぽろりと零れ落ちる。
「オレも…オレも中佐が好きです…」
 嬉しそうに笑ったロイの唇がハボックのそれにゆっくりと重なっていった。


「んっ…」
 怯えて強張る体をロイはゆっくりと開いていった。何度もキスを降らせ名前を呼び続ける。とろりと蜜を零すハボック自身に唇を寄せて、ロイはねっとりと舌を這わせた。ちゅぱちゅぱと吸い上げて先端を舌で押しつぶす。上目遣いにハボックを見上げれば、目元を染めて喘ぐ様子が可愛くて仕方がなかった。きつく吸い上げると小さな悲鳴を上げてロイの口の中へ熱を放った。
「あ…ごめんなさい…っ」
 ロイから身を離そうとするハボックの体を引き戻してロイはハボックの耳元にキスをした。
「どうして謝る?」
「だって、き、汚い…っ」
「汚くなんてあるもんか」
 美味しかった、とロイが囁くとハボックの顔が真っ赤になる。そんなハボックが愛しくて、ロイはくすくすと笑った。ロイは指を滑らすとハボックの双丘の狭間へ指を這わす。途端に強張る体を優しく撫でてロイはハボックに囁いた。
「好きだ、ハボック」
 そう言ってロイはハボックの脚を開かせると、その蕾へ舌を這わせた。
「ひあっ」
 びくんと跳ねる体を押さえつけて、唾液を送り込みながら丁寧に解していく。中を這い回る舌の動きに、ハボックの中心からびゅくと白濁が零れた。
「あっ、やだぁ…っ」
 腕で顔を覆って涙声を上げるハボックに、ロイの唇に笑みが浮ぶ。体をずり上げて、ハボックの腕を外させると嬉しそうに囁いた。
「気持ちよかった?」
 ぎゅっと目を閉じてふるふると首を振るハボックをロイはそっと抱きしめた。
「ハボック、気持ちよくていいんだ。それは悪いことじゃない」
 見上げてくるハボックにロイは微笑んだ。
「二人で気持ちよくなりたい」
 いいか、と尋ねるロイにハボックはおずおずと頷く。ロイはハボックの目元にキスをすると、その両脚を抱え上げた。滾る自身を奥まった蕾に押し当てるとハボックの体がびくりと震える。ゆっくりと体を押し進めると、目に見えてハボックの体が堅く強張った。
「好きだよ、ハボック…」
 怯えて強張るハボックの頬をロイは何度も撫でた。浅い呼吸を繰り返してぎゅっと目を閉じているハボックにロイは何度も好きだと囁いた。
「目を開けて、ハボック。お前を抱いているのは私だ」
 うっすらと目を開けて、ハボックは唇を震わせた。
「ちゅうさ…」
 ぎゅっとロイにしがみ付いてハボックは呟く。
「こわい…だって、いつも…っ」
 強張る体を抱きしめて、ロイは何度もハボックの背を撫でた。強引に体を割り開かれ、快楽を引きずり出され、ハボックにとってのセックスは多分恐ろしいものでしかなかったのだろう。ロイはそんなハボックを愛しいと思うと同時にセックスは気持ちがいいものだと教えてやりたいと思う。快感を感じることは悪いことではないのだと教えてやりたい。
 ロイはハボックに口付けると小さく笑った。
「大丈夫だから」
 動くぞ、と囁いて、ゆっくりと抽送を始めた。ロイの背に回されたハボックの腕に力が入る。目を閉じようとするハボックにロイは言った。
「私を見ていろ、ハボック…」
 ロイの言葉にハボックは必死に目を見開く。激しくなる抽送に体の奥から湧き上がる快感にハボックは怯えた。滾るロイ自身がハボックの奥まったしこりを掠めた時、それまで感じていた快感が子供だましとしか思えないような凄まじい快感が脳天を突き抜けた。
「ひああっっ」
 飛び跳ねる体に、ロイはうっとりと笑った。
「ここがイイのか…?」
「あ…あ…」
 目を見開いてびくびくと体を震わせるハボックの感じる部分を再びロイが突き上げる。
「―――っっ!!」
 ハボックの唇から声にならない悲鳴が上がり、ロイの背に回された手が爪を立てた。背中に感じる痛みがそのままハボックの感じる快感なのだと、ロイの心をゾクゾクするものが満たしていく。強く揺すり上げれば、ハボックの中心から熱が迸った。達して弛緩する体を容赦なく突き上げ、ハボックの体を快楽で染め上げていく。泣きながら縋りついて来るハボックが愛しくてもっともっと感じさせてやりたくて、ロイはハボックの体を余す所なく触れていった。外からも内からも全てを愛して、ハボックの全部を自分で満たしたいとロイは思う。もう、何度目か判らない熱でハボックを濡らし、ハボックにも熱を吐き出させた。感じることに怯えていたハボックも、いつしか素直に声をあげ、ロイを受け入れていく。
「う、んっ…ちゅうさっ…」
「ん…気持ちいいのか、ハボック…」
「あ…いいっ…き、もち、イイ…っ」
 そう答えるハボックが愛しくて優しくその髪をかきあげるロイにハボックが囁く。
「ちゅうさは…っ、ちゅうさは、きもち、いい…?」
 そう聞いてくるハボックにロイは目を見開いた。
「ね…ちゅうさは…オ、レで…きもち…いい?」
 その言葉にハボックの中に埋めたロイ自身が嵩を増した。
「あっ…な、んでっ…おっきく…っ」
「あんまり…可愛いことを、いうな…っ」
「え…?」
「止まらなくなる…」
 ロイの言うことが理解できずに不安そうな顔をするハボックにロイは微笑んだ。
「イイよ…最高に、気持ちイイ…」
 ロイがそう囁けば、ハボックが嬉しそうに笑った。
 誰よりも大切な人を腕に抱いて、決してその腕を離さないと誓い合うかのように、二人はゆっくりと唇を重ねていった。


2006/9/12


ハボロイで初物語をいくつも書いていたらロイハボでも書きたくなってしまい、ついうっかりこんなのを書いてしまいました。す、すみません、ハボが可哀相で(汗)いくら初物語が書きたいといっても何もこんなのでなくても〜と思ったりもしたのですが、あれれ?どうしてかなぁ…。いろいろと矛盾点、こじつけのある話ですが、その辺は大めにみてくだるとありがたいです〜。



→ 純愛2 chap.1