純愛2  chap.3



 ハボックがいなくなってから一晩がたち、ロイは苛立ちを募らせながら朝を迎えていた。ハボックを探す事に全てを注ぎたいとロイは思っていたが、司令官としての立場がそれを許さず、一介の尉官に過ぎないハボックを探す事に多くの人員を割くことも許されず、それでもロイは必死の思いでハボックの行方を追っていた。
「ハボック…」
 ハボックの安否も連れ去られた理由も判らない。
 ダンッッ――!!
 ロイは執務室の机を両手の拳で殴りつけると唇を噛み締めて目を閉じた。


 メッケルはハボックの体の中からずるりと己を引き抜いた。その動きに身じろいだハボックの頭上でジャラリと鎖が鳴る。
 ここへ連れてこられてから何度となく受け入れさせられ、快楽を引きずり出され、ハボックの下肢はお互いの放ったモノで白く汚れて蕾からは含みきれない白濁がとろとろとあふれ出していた。ぼんやりと宙を見上げるハボックの頬を撫でると、メッケルは立ち上がって戸棚から箱を持ってくる。それを開けると中から注射器とアンプルを取り出し、アンプルの中身を注射器に吸い上げた。
「少尉。これを覚えているかね?」
 メッケルはハボックに見えるように注射器を持つと囁く。ぼうっとソレを見ていたハボックの焦点が合ったかと思うと、ハボックは鎖で繋がれていることも忘れて起き上がろうとした。がちゃがちゃと鎖を鳴らして暴れるハボックをメッケルは楽しそうに見下ろす。
「楽しかっただろう、コレを使った時は」
 にやりと笑ってそういうメッケルをハボックは顔色を失くして見上げた。
「い、やだっ!それだけはいやだっっ!!」
 ハボックの叫びをメッケルは心地よさそうに聞いている。ハボックを壊してしまったらあの男はどんな顔をするのだろう。自分から全てを奪っていったあの男は。
 メッケルはにたりと笑ってハボックを見下ろした。


「准将閣下はいいペットをお持ちだ」
 男は身支度を整えて寝室から出てくるとメッケルに言った。
「たっぷりと楽しませてもらいましたよ」
 男はそう言うと、このお返しは例の件で、と言い置いて部屋を出て行った。笑って相手を送り出したメッケルは、扉を締めた途端怒りに顔を歪めると、寝室へと入っていく。すえた匂いが漂う部屋の中でベッドに俯せるハボックの髪を鷲掴むと乱暴に持ち上げた。
「随分と可愛がってもらったようだな」
「う…」
 抵抗することも出来ないハボックをベッドに投げ下ろすと、メッケルは戸棚から箱を持ち出してきた。中から注射器とアンプルを取り出してセットするとぐったりとしたハボックの腕を取った。
「准…将?」
「お前の立場を思い出させてやろう」
 メッケルの言葉に続いてハボックの腕にちくりとした痛みが走る。
「なに…?」
 見下ろすメッケルの視線のもと、注射をして暫くするとハボックの様子に変化が現れた。頬に赤みが差し呼吸が荒くなって視線が合わなくなっていく。ハボックは震える腕でわが身を抱きしめるとかすれた声で呟いた。
「あつい…っ」
 体の中心から湧き上がった熱がどんどんと全身に広がっていく。ハボックは目をぎゅっと閉じると震える唇を噛み締めた。体を支配する熱に全身をどろどろに熔かされてしまうのではないかと言う恐怖に駆られて、ハボックは自分を見下ろすメッケルの腕に縋った。
「たすけ…」
「助けて欲しいのか?」
 メッケルが目を細めて尋ねてくるのにハボックは必死に頷いた。頷く間にも自分がシーツの上に溶け出していくような気がする。
「おねが、い…っ」
 メッケルはにやりと笑うとハボックを組み敷いた。小刻みに震えるハボックの中心を握るとゆっくりと扱き出した。僅かな愛撫にハボックのソレは瞬く間に熱を蓄えてそそり立つ。先端の穴を爪で押し開くように刺激するとハボックは熱を迸らせた。
「あっああっっ」
 びくびくと体を震わせて白濁を吐き出すハボックをメッケルは満足そうに見下ろす。掌に受けたソレをハボックの後ろに塗りこめるとつぷりと指を差し入れた。
「い、やっ」
 びくんと震えて身を捩るハボックにメッケルは囁く。
「助けて欲しいのだろう?逆らうんじゃない」
 その言葉にメッケルの腕に縋るハボックの指が震えた。ぐちぐちと乱暴にかき回されて痛みとも恐怖ともつかぬ物がハボックの心を支配していく。メッケルは怯えるハボックの蕾から指を引き抜くと両脚を抱えあげた。そうして滾る自身を宛がうとハボックの中へずぶずぶと沈めていった。
「あああっっ」
 突き上げられると同時に先端の柔らかい部分を爪で引っかかれてハボックは堪らず悲鳴を上げた。どろどろと溶ける体がメッケルの肉棒でかき回されるおぞましさにハボックは涙を零し続ける。助けて欲しくて縋りついた相手に乱暴に体を開かれ快楽を引きずり出されて、ハボックはもう何もわからなくなっていった。


 僅かな刺激にも過敏に反応する体を思うままに嬲られて、ハボックは気が狂いそうになっていた。助けてくれる相手は自分を蹂躙する目の前の男しかおらず、ハボックは乱暴に揺すりあげられながらも必死にメッケルに縋った。
「も…ゆるし…」
「辛いのか?」
 答えることすら出来ずに唇を震わせるハボックにメッケルは薄く笑う。
「では、誓え。お前は私のものだと」
 言われている意味が判らず、ハボックはぼんやりとメッケルを見返した。そんなハボックの様子にメッケルは舌打ちするとハボックを突き上げる。
「ああっっ」
 どくりと、もう何度目になるか判らない熱を吐き出しながらハボックはびくびくと震えた。
「誓え、准尉。お前は私のものだ」
 メッケルは汗に濡れたハボックの髪をかき上げながら囁く。
「ち、かう、から…」
 たすけて、と呟くハボックにメッケルは満足げに笑うと、ハボックを責め続けた。


「あの時、お前は誓ったはずだ。違うか?」
 メッケルは身を捩るハボックの腕をさすると囁いた。
「あの男の元に返すくらいなら壊してやる」
 メッケルの言葉に絶句するハボックを見下ろしてメッケルは笑う。その笑いにぞっとするものを感じて、ハボックはがちゃがちゃと鎖を鳴らして暴れた。
「放せ…っ」
 メッケルはハボックの腕に注射器を近づける。腕をぐっと押さえつけると、針を突き刺した。
「いやだぁっ」
 液体が注入される感触にハボックは大声を上げる。
「心配は要らない、すぐに何もかもわからなくなる…」
 その言葉にハボックの瞳から涙が零れ落ちた。


 カツン。
 幾つめのアンプルか、もう数えることも面倒になるほどの空になったそれをメッケルは床に落とした。そうして、ベッドに横たわるハボックの腕をとると針を刺す。注射器の中の液体がハボックの腕に吸い込まれていくのを見ながらメッケルはくつくつと笑った。もう少ししたらハボックは再び狂ったように自分を求めてくるだろう。そして、薬が切れればその苦しさにやはり自分を求めてくる。初めてハボックを見たときの明るい太陽のような輝きは消えてしまったが、自分から地位も名誉も何もかもを奪っていった男のもとへ帰すくらいなら、たとえどんな姿であれ、側に置いておきたいと思う。あの男の側で幸せそうに微笑む姿など見たくない。そんなことは許せない。メッケルは体を支配する快楽という名の熱にうかされたハボックが自分のほうへ腕を伸ばしてくるのを、満足そうに見つめていた。


「大佐!ハボック少尉を連れ去った男の居場所を突き止めましたっ」
 執務室に飛び込んできたフュリーにロイはがたりと音を立てて立ち上がった。
 事件後、さほど時間をおかずにハボックを連れ去ったのが銀髪の背の高い男で、車で南東に走り去ったことまではわかっていた。だが、その足取りは杳としてつかめず、ロイは日に日に焦りを募らせていたのだった。
「どこにいる?」
「街の中心から南東に20キロ程いったところにある小さな町です。そこの町外れの屋敷に数日前から見慣れない銀髪の男が出入りしているという情報が」
「車を回せ、すぐ出発する」
「大佐」
 心配そうに声をかけてくるホークアイにロイは頷いた。
「中尉、後を頼む。ブレダ少尉はいるか?」
「ブレダ少尉なら今朝から昨日の爆弾テロ未遂事件の聞き取りに出ています」
「そうか…。フュリー、一緒に来い。それとハボックのところの軍曹と、後何人か呼べ」
「大佐、きちんと編成を組んででた方が…」
「時間をかけたら逃げられる」
 ホークアイの言葉にぴしゃりと答えると、慌てて部屋を出て行ったフュリーの後を追うように、ロイは執務室を後にした。



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