出張先のホテルのベッドの中。夜中にふと、うそ寒さを感じて目を覚ませば、しっかりと抱きしめて眠りに付いたはずのハボックの姿がなかった。
「ハボック?」
 続き部屋の方にいるのかと声をかけつつ覗いてみるが、部屋はがらんとしてハボックの姿は見当たらない。
「どこへ行ったんだ…?」
 音もなく消えてしまったような錯覚にぞくりと背筋がすくみ上がる。ハボックを探して足早に部屋を出た。山奥のホテルは満天の星空の下、黒く静まり返っている。僅かに湿り気を含んだ空気の中、ホテルの裏手に足を向けた。金色の光を探して彷徨う自分の耳に微かにキィと軋む音が聞こえ、慌ててそちらへと向かう。生い茂った木々を抜けるとぽっかり開いた空間に小さな公園があった。そこのブランコにハボックが腰掛けているのが見えて、足早に近づいていく。草を踏む音にハボックが顔を上げた。
「大佐」
「こんなところで何をやってるんだ」
 突然消えた相手に、問いかける声は知らずとがったものになっていた。流石にこちらの不機嫌を察して、ハボックが苦笑する。
「なんか眠れなくて散歩に出ちゃいました」
「声くらい掛けろ。心配するだろうが」
「だって大佐、よく眠ってたし」
「ハボック」
 きつく名を呼ぶ自分をハボックは暫し見つめて、ふいと視線を逸らすと「すみません」と囁いた。ため息をついてその金色の頭にそっとキスを落とせば、僅かに身じろぐ気配がした。
「でも、大佐、いいもの見つけましたよ」
 そういうハボックに首を傾げれば「ほら」と草むらの方を指差した。ハボックの指差す先に微かに緑色に瞬くものが見えた。
「蛍?」
「近くに川があるんですかね」
 微かに瞬く光はすぅっと滑るように動くとふっと消えてしまう。
「あ、行っちゃった…」
 妙に幼い口調で呟いたハボックを見下ろせばその表情は半ば前髪に隠れて判らなかった。暫く俯くように視線を下げていたハボックだったが、よっ、と声をかけるとブランコを揺らし始めた。長い脚を器用に動かして、ブランコを揺らしていたがすぐ側に立つ自分を振り仰ぐと微かに笑って言った。
「大佐、背中押してくれません?」
「なに子供みたいなことを言ってるんだ」
「足、擦っちまうから漕ぎにくいんスよ」
 確かに子供用のブランコは座面が地面と近いため、背の高いハボックが揺らすのはかなり大変そうだ。
「大佐」
 甘えるように促す声に仕方なくため息をついて、ハボックの背中を押してやった。
 キィ、キィと。
 ブランコが音を立てて揺れる。段々と大きくなる揺れにふと不安を覚えて押すのをやめようとしたその時。
 ふわりと。
 ハボックの体がブランコから飛んだ。金色の髪が闇の中に尾を引いて、そのまますっと消えてしまうように見えて――。
 心臓がぎゅっと締め付けられる気がして、思わず腕を伸ばしたその先に、ハボックがトンと軽く飛び降りた。そうして肩越しに振り向いて小さく笑うその姿に知らず安堵する自分がいて。震える指を伸ばして、その体を掻き抱いた。
「大佐?」
 ハボックが不思議そうに言う。
「驚かすな」
 ため息とともに言葉を吐き出せば、くすりと笑う気配がした。
「ガキの頃、よく友達と誰が一番遠くまで飛べるか、競争しましたよ」
 オレ、結構上手かったんスよ、と自慢げにいうハボックの顔を引き寄せると噛み付くようにキスをした。
「ふ…っ」
 そのまま脚を絡めて体を預ければ、ハボックは二人分の体重を支えきれずに背後へと倒れこんだ。
「…っつぅ」
 圧し掛かられて苦しい息を漏らすハボックの唇を塞ぎ、シャツの裾から手を差し入れて直接肌に触れるとびくりと震えた。
「た、いさっ」
押し返そうとする腕を押さえ込んで上から見下ろすと空色の瞳が驚いたように見返してきた。
「ハボック…」
 名を呼んでシャツを剥ぎ取ろうとすると、僅かに抵抗するハボックに思わず舌打ちした自分をハボックが困ったように見上げてくる。
「大佐、ここ、草がちくちくして痛いっス…」
 ホテルに帰りましょう、と起き上がろうとするハボックを地面に縫いとめた。
「たいさ」
 宥めるように言うハボックの瞳を覗きこんで囁く。
「今ここで、お前が欲しいんだ」
 そういえば、夜目にもはっきりとハボックの顔が赤くなるのが判った。目を逸らすハボックの頬をそっと撫でると、諦めたようにため息をついた。
「アンタ、よくそんな恥ずかしいこと言えますね」
 空色の瞳が見上げてくるのに微かに笑いかけてキスを落とす。
「草がどうのなんて気にならなくしてやる…。」
 そういう自分にハボックが腕を回してきた。ゆっくりと唇を合わせるとねっとりと舌を絡ませて互いの唾液を混ぜあう。
「ふ…ん…」
 鼻から抜ける甘い息に口中を弄る舌の動きが激しくなってぴちゃぴちゃといやらしい音を立てた。シャツの中で肌を弄り、ぷくりと立ち上がった乳首に引っ掻くようにして刺激を与えてやると自分に回されたハボックの腕に力が入った。
「ぅん、は…、たい、さ…」
 強請るように腰を擦り付けてくるハボックの様子に笑みが零れる。下着ごとズボンを剥ぎ取ればすっかり立ち上がったソコは先走りの蜜に濡れていた。
「いやらしいな、ハボック…」
 そう囁くと
「アンタのせい…っしょ…っ」
 と、ハボックが悔しそうに睨んでくる。しっとりと汗ばんだ内腿に何度も指を滑らせる度に、ハボックのソレがぴくぴくと震え、透明な蜜が垂れた。尚も直接触れずに、筋肉に包まれた脚や根元の近くをさわさわと刺激する。ハボックが焦れて腰を揺らめかすのに堪らない愉悦を感じた。
「も…、焦らさんでくださ…っ…」
 涙を滲ませてハボックが訴える。ゆらゆらと腰を揺らすのにあわせて、蜜を滴らせたそこがふるふると震えるさまに腰がずんと来るような快感を覚えた。
「どうして欲しいんだ…?」
 尋ねられてハボックが息を呑む。
「言わないなら何もしない…」
 残酷な言葉にハボックの空色の瞳が泣きそうに歪んだ。
「そ、んな…っ」
「言ってみろ、そうしたらその通りにしてやる。」
 ふるふると金色の頭を揺らしてハボックが身悶える。耐え切れずに自身に伸ばそうとしたハボックの手を掴むと頭上に縫いとめた。
「はっ…、…き、しょう…っ、な、んでっ…」
「何も言わずいなくなったりするからだ。私がどう思ったと…」
「そんなこと…っ」
「強請ってみろ、ハボック」
 強情に口にしないハボックにそういえば空色の瞳から涙が零れ落ちた。
「ア、ンタ、さいて…」
「でも、私が好きだろう?」
 そう耳元で囁けばハボックの体が大きく揺れた。戦慄く唇が何度も言葉を形作ろうとして失敗する。だがやっと搾り出すように呟いた。
「さ、触って、くださ…。」
「どこに?」
「…っ、…オ、レのに、さわって…っ」
 ハボックの言うとおりにハボックのものに手を這わせる。
「それから?」
 尚も意地悪く促せば叫ぶように口にした。
「イ、かせて…っ!もうっ、へんにな、る…っ」
 その言葉にうっとりと微笑んで、2、3度扱いてやればあっという間に上りつめた。
「あ、あ、あ―――っ」
 びくびくと体を痙攣させて白い液体を吐き出すハボックの姿は淫猥だった。ぐったりと沈み込むハボックの体を抱き寄せてハボックが撒き散らしたものを、奥まった部分に塗りこめてやると震える吐息が唇から零れた。くちゅくちゅと音をたてて指を沈めていく。ハボックがうっすらと目を開けて欲に溺れきった眼差しを向けてきた。
「たいさぁ…っ」
「なんだ…?」
「はっ、アンタのっ、ちょうだい…っ」
 指をくわえ込んだまま腰を揺らめかす。多分もう、自分が何を言っているのかもよくわかっていないに違いない。
「たい、さっ、…はやく…っ」
 強請られるままに指を引き抜くと、取り出した自身でハボックを一気に貫いた。
「やっ、ああああ――――っっ」
 深々とねじ込めばその衝撃で、ハボックは2度目の絶頂を迎えていた。達して尚、あっという間に張り詰めていくソレにハボックは耐え切れずに泣き叫んだ。
「やだぁ、なん、で…っ」
 ツライ、と啼くハボックに暗い喜びを感じる。しなやかな体を組み敷いて、熱い欲望をその最奥へと何度も叩き付けた。


2006/6/23



NHKで蛍のニュースをやっていたので。私のネタ提供は結構NHKの朝のニュースだったり。でもあんまり蛍、関係ない話になっちゃった(汗)
ところで子供の頃、ブランコから飛び降りて遊びませんでしたか?今考えるとかなり危ない遊びでしたが、よくやってました。そういえば、ブランコの前の柵に頭ぶつけて保健室に担ぎこまれたのがいましたっけ…



→ 蛍2