| 偏愛2 第五章 |
| 「それでさぁ、もうホント可愛いこというわけよ、オレのエリシアちゃんは」 楽しそうに愛娘の話をするヒューズの前にハボックはデザートの皿とコーヒーを差し出す。手を上げて謝意を現すとヒューズは皿を手に取った。一口食べて僅かに目を瞠るとハボックの顔を見る。 「相変わらずいい腕だな、少尉」 美味いよ、と笑うヒューズに、どうも、と返してハボックはロイをちらりと見た。微笑んでヒューズを見たままコーヒーに口をつけるロイを見て、ハボックはホッと息を漏らす。今夜はイーストシティに出張に来ているヒューズが泊まる事になっていた。ロイを怒らせて仕置きをされるような事になるのだけは避けたいとハボックは思う。浅ましい自分の姿を知られるのはそれが誰であろうと堪らないが、特にこのロイの親友であるヒューズに知られるのはごめんだった。 「明日も早いんだろう、風呂でも入ってゆっくり休んだらどうだ」 ロイに言われてヒューズはうーんと伸びをした。 「やっぱホテルよりのんびりできるな。少尉の料理は美味いし。泊めてもらってよかったよ」 ヒューズはそう言うとソファーから立ち上がった。 「風呂場にタオルとか出してありますから使って下さい」 ハボックがそう言うとヒューズは手を振って部屋を出て行った。 「たいさっ…今日は…」 「今日はなんだ」 ベッドの上に組み敷かれてハボックが首を振る。 「中佐がいるのに…っ」 「別に構わないだろう」 「そんな…っ」 今は声を潜めているものの行為の最中に声を抑えることなどとても出来そうにない。ハボックは必死の思いでロイに言った。 「お願いです…今日はカンベンして…」 「ここは私の家だ。どうしてアイツに遠慮することがある?」 「でもっ」 なんとかロイを押し留めようとするハボックにロイは苛ついて舌打ちする。落ちていたバスローブの腰紐を拾い上げるとハボックの右手をベッドヘッドに括りつけてしまった。 「たいさっ」 「黙れ」 ロイはそう言うとナイトテーブルの引出しから錘のついたクリップを取り出す。それを目にしてベッドの上をずり上がって逃げようとするハボックの足首を掴むと、ロイは乱暴に引き戻した。 「それ、ヤダっ」 「ウソをつくな」 「いやだっ」 もがくハボックの体を押さえつけてロイはハボックの乳首をクリップで挟んでしまう。体を反されて四つん這いにされたハボックの胸から垂れ下がったそれは、ぎゅうと乳首を痛めつけた。 「うう…っ」 敏感な乳首を襲う痛みにハボックの目に涙が滲む。ロイはそんなハボックを見つめて面白そうに錘を弾いた。 「ひぅっ!」 ぶらぶらと揺れる錘が敏感なソコを苛む。クリップに挟まれて紅く腫れ上がった乳首をロイは指先でぐりぐりとこね回した。 「ひっ…いた…やめっ」 「ウソをつくなと言ったろう?」 ロイはそう言うと二つのクリップを繋ぐ鎖をぐっと引いた。 「ひいいっっ」 乳首を引きちぎられる恐怖に身を伏せようとするハボックの髪を鷲掴んで、ロイはハボックの体を引き上げる。乳首を襲う激痛にハボックは悲鳴を上げた。 「ヒッ…ヒアアアア―――――ッッ」 それでも情け容赦なくロイは鎖を下に、ハボックの髪を上に引っ張る。 「ひっ…ちぎれる…っ」 ハボックがそう叫んだ瞬間、ロイの手が鎖から離れた。その反動で錘が揺れて、ハボックは痛みに喘ぐ。だが、痛みに啼くハボックの中心は高々と反り上がりとろとろと蜜を零していた。 「こんなにしておいて、イヤだということはないだろう」 うそつきめ、と罵られてハボックの瞳から涙が零れる。痛みと恐怖にイヤだと思う反面、それを体が快楽として受け止めてしまう。そのギャップにハボックの心は引き裂かれそうだった。ロイの手がハボックの腰を抱え上げその奥まった蕾を押し開く。ひくひくと蠢くソコを空気に曝されて、ハボックの体が竦みあがった。 「相変わらず物欲しげな口だ」 ロイはそう囁くと、蠢く唇に指を這わせる。そうしてハボックに身を寄せると低い声で言った。 「ここにヒューズのが欲しかったか…?」 その言葉にハボックがふるふると首を振る。 「欲しかったんだろうっ?」 その言葉と同時に乱暴に指が突き入れられる。ハボックは痛みに体を仰け反らせながらも必死の思いで言葉を吐き出した。 「たいさの…たいさのがホシイ…っ」 「私の何をどうして欲しいんだ…?」 必死の言葉にそう返されてハボックは息を飲む。早く奥をついて欲しくて、ハボックは唇を震わせると囁いた。 「たいさの…ぺ…ニスを…」 首筋まで真っ赤になってハボックは言葉を紡ぐ。 「オレの穴に…い、挿れて…」 「挿れるだけでいいのか?」 ロイはそう答えると指を引き抜いて自身を押し当てた。短く息を飲むハボックの腰を押さえつけると一気に貫く。 「ヒアアアアッッ」 ハボックは中心から白濁を迸らせながら悲鳴を上げる。期待に震えるハボックに、だが、ロイはそれ以上何もしようとはしなかった。 「あ…たいさっ」 中をかき混ぜて欲しくて、最奥を貫いて欲しくてハボックはロイを呼ぶ。だがロイは意地悪く笑っただけで動こうとしなかった。 「たいさぁ…っ」 呼ばれてロイは楽しそうに答える。 「なんだ、またこれを弄って欲しいのか」 ロイはそう言うと紅く晴れ上がった乳首から垂れ下がる鎖を引いた。 「ひっ…やっ…ちが…っ」 「じゃあなんだ」 意地の悪いロイの問いにハボックが答えようとした時。 「ロイ?」 軽いノックの音と共にヒューズの声がした。 眠ろうとしてベッドに入ったヒューズは、だが、微かに聞こえた悲鳴に眉を顰めた。この家には自分以外にはあとロイとハボックしかいない。だとしたらあの悲鳴はその二人のうちのどちらかのものである筈だ。ヒューズは暫くの間ベッドに身を起こして考えていたが、やがてベッドから脚を下ろすと寝室を出た。薄暗い廊下を足音を忍ばせて歩いていく。自分の寝室として宛がわれた部屋からロイの寝室へと、さほど長くはない距離を歩きながらヒューズは考えた。 自分の知っていたロイはあんな男だったろうか。確かに自身満々で不遜で、傲慢な反面人の意見に耳を傾けるだけの器量を持っているのは今も変わらないように思う。だが、ロイはあんな昏く澱んだ空気を纏っていただろうか。それに、ハボックだ。相変わらず咥え煙草で減らず口を叩いてはいたが彼が回りに放つ光はもっと透明だったような気がする。ヒューズはロイの寝室の前まできて立ち止まった。 悲鳴の出所は十中八九ここだろう。扉をノックするのが酷く躊躇われて、ヒューズは上げた手をそのままに立ち尽くす。やはりこのまま聞こえなかったフリをしてしまおうかとヒューズが思ったとき。微かな悲鳴が聞こえてヒューズは反射的に扉を叩いてしまった。 「ロイ?」 アッと思ったものの腹をくくってロイの名を呼ぶ。そうして友人が顔を出すのを待った。 聞こえた声にハボックの体が酷く緊張したのがわかった。不安げに見上げてくる空色の瞳を見返して、ロイはハボックの体を揺さぶる。 「…っっ!!」 与えられた刺激にハボックが必死に唇を噛み締めるのに薄く笑うと、ロイはずるりとハボックから己を引き抜いた。 「んくぅ…っ」 びくんと震えるハボックの体をそのままに、ロイは服を整えるとそっと寝室の扉をすかした。 「どうした、ヒューズ」 寝室から顔を出したロイにヒューズは一瞬迷ったような素振りを見せたが口を開いた。 「今、悲鳴のような声が聞こえた」 「悲鳴?」 「ああ」 「気のせいじゃないのか?」 うっすらと笑って答えるロイにヒューズは酷い違和感を覚える。 (コイツは本当に俺の知ってるロイなんだろうか…) ヒューズは軽く首を振ると言った。 「少尉はどうした?」 そう聞かれてロイは一瞬口をつぐんだが答える。 「中にいる。色々話をしていたんだ。笑い声が悲鳴のように聞こえたんじゃないか」 「だが、笑い声には聞こえなかったぞ」 「夜だからな、普段なら普通に聞こえるものが歪んで聞こえることもあるさ」 あくまでそう言い張るロイにヒューズとしても言うべき言葉が浮んでこない。ヒューズは何とかロイの体のすき間から寝室を覗こうとしたが、笑みを顔に貼り付けたままのロイに阻まれて叶わなかった。 「少尉を呼んでくれないか?」 すんなり引っ込んでしまうことできず、ヒューズはロイにそう言った。ロイは僅かに眉を跳ね上げ、暫くヒューズを見つめていたが口を開く。 「酒が入っていてね、ついさっきつぶれたよ」 「おい、それってあまりに都合のいい――」 「ヒューズ」 遮って自分を呼ぶ声にヒューズはロイをみつめて、そしてその昏い瞳に絶句する。 「そろそろ休みたいんだ。お前も朝早いんだろう。休んだ方がいいぞ」 そう言うロイにヒューズはそれ以上何も言うことが出来なかった。 |
→ 第六章 |