エフィアルテスの悪夢  第七章


 ロイは口づけたハボックの指を口に含んで舐ってやる。関節や爪に舌を絡めるようにすればハボックがホッとしたように息を吐いた。
「ちょっと待っていてくれ」
「やっ……ぁ」
 舐めていた指を離してベッドに下ろした途端、むずかるように顔を歪める様が可愛いと思いながらロイは濡れて貼り付く服をなんとか脱ぎ捨てる。そうして改めてハボックの手を取ると、かけてやっていたブランケットをどけてハボックの躯に圧し掛かった。
「ハボック」
 そう囁いて金色の髪をかき上げる。見下ろすロイの首にハボックが伸ばした腕を絡めた。ギュッと抱きついてくる熱い躯を抱き返して何度も口づける。啄むだけのキスから舌を絡め貪るようなキスへ。繰り返し口づければ空色の瞳がロイを見上げた。
「たいさ…ぁ」
「私が判るか、ハボック」
 紗がかかったようだった瞳が晴れた空の輝きを取り戻したのを見てそう尋ねれば、ハボックがほわりと笑う。
「やっと……抱き締めてくれた」
 言われてロイはすまなそうに眉を下げた。
「悪かった、判ってやれなくて」
 表面的な傷ばかり目に入って、身の内を焼く熱にハボックがどれほど苦しめられているか気づかなかった。ロイがそう言ってハボックを抱き締めればハボックが辛そうに息を吐き出す。
「躯ん中、すげぇ熱いっス……どろどろに溶けて…辛くて……」
「キメラの毒素が残ってるんだ。ちょっと洗浄したくらいじゃ効き目がないらしい」
 ロイが言えばハボックがハッとしたように目を見開き、次の瞬間くしゃりと顔を歪めた。
「……訳、判んなくなるくらい……突っ込まれたから、オレ…ッ」
 そう口にすればあのおぞましい時間が脳裏に蘇る。入れ替わり立ち替わり、時には複数の触手に同時に犯され、どろりとしたキメラの体液を散々に注ぎ込まれた事を思い出して、ハボックは唇を噛み締めた。あの時の己の狂態すら生々しく蘇って、ハボックは消えてしまいたくなる。
「あのままヤり殺されちまえばよかった……」
 激しい羞恥とロイへの罪悪感に駆られて、ハボックが伸ばした手を離してロイを押し返そうとすれば、ロイはハボックの躯をかき抱いた。
「馬鹿な事を言うなッ、お前は何も悪くないんだから」
「でも、たいさ…ッ」
「お前は何も悪くない、ハボック。躯の中にあの忌々しいキメラの毒が残っているというなら、そんなもの私が全部燃やし尽くしてやる」
 そう言うロイの黒曜石の瞳には怒りと嫉妬と後悔と、ありとあらゆる感情がせめぎあって揺れている。だが、それら全ての感情を覆い隠そうとするほどの強い恋情の焔を見て取って、ハボックは目を瞠った。
「お前の躯をもっと傷つけてしまうと思う。お前には辛いばかりかもしれないが」
 それでもいいかと尋ねてくるロイにハボックは泣き笑いのように顔を歪める。
「そんなの、聞く必要ねぇっス」
 ハボックはそう言ってロイに向かって腕を伸ばした。
「この熱……止めて、たいさっ」
 言って縋りついてくる躯をロイはしっかりと抱き締めた。

 抱き締めた腕を弛めてロイはハボックを見下ろす。見上げてくる空色の瞳に微笑んで、その瞳にそっと口づけた。口づけで閉じさせた瞼にロイはねっとりと舌を這わせる。薄い皮膚と長い睫を舌先で舐れば瞼がピクピクと震えた。そこから舌を滑らせて今度は耳に舌を這わせる。弱いと判っている耳朶に歯を立てた途端、ハボックの唇から悲鳴のような声が零れた。
「たいさっ」
「好きだろう?ここをこうされるのが」
 ロイはそう言いながら耳の輪郭に沿って歯を立てる。痛いほどに食い込むそこからじんわりと沸き上がる快感に、ハボックは甘い吐息を漏らした。
「あ、ん…ッ、ぅふ……」
 散々に噛んで白かった耳朶がピンク色に染まる頃になって漸くロイは首筋へと唇を移す。ホッとしたように弛緩する白い喉にきつく吸いついて紅い花びらを散らすと、ロイはそのまま唇を胸へと滑らせた。
「あ……あ…たいさぁ…ッ」
 鍛えられ引き締まった肌に残る無数の蚯蚓脹れのような痕。それがあのキメラの触手が這い回り、締め付けて出来たのだと思うと俄に怒りの焔が燃え上がる。その痕を塗り潰すように歯を立て、爪で引っ掻けばハボックが悲鳴を上げた。
「ヒィッ!いたぁ…ッ!!」
 その悲鳴を聞いてすら怒りの焔は鎮まらない。その焔に煽られるままに容赦なく己の痕を刻み込めば、白い肌に幾筋も血が滲んだ。
「アッ!ヒ…ッ、たいさ…ッ!」
 痛みに悲鳴を上げ涙を零しながら、だがハボックはロイの手を振り払いはしなかった。むしろそうして全ての傷痕をロイの手によってロイの痕に塗り潰して欲しくてわざとのようにキメラが刻んだ痕を晒す。背を走る長い痕をなぞるようにしてロイの爪が走った瞬間、ハボックは突き抜ける快感に熱を吐き出していた。
「アアアアアッッ!!」
 背を仰け反らせてびゅくりと熱を吐き出すハボックにロイはうっすらと笑う。荒く息を弾ませる唇を己のそれで塞いで、その呼吸すら奪った。
「んっ……ンンッッ!!…クゥッ…ッ」
 まともに息が吸えなくてハボックが弱々しくもがく。それでも構わず深く口づけていればハボックの喉がヒクリと鳴った。そうなって漸くロイは唇を離す。急激になだれ込んでくるくる空気にハボックがむせてゲホゲホと喘いだ。
「ハボック……」
 囁く声にハボックは涙の滲む目をロイに向ける。熱をたたえる瞳にゾクリと身を震わせて、ハボックはロイに腕を伸ばした。
「たいさぁ…ッ」
 ギュッと抱きつき今度は自分から口づける。ロイの口内に舌を差し入れ積極的に絡めればロイが喉奥で笑った。
「たいさ、も、来て…ッ」
 低いロイの笑い声にゾクゾクとしてハボックは下肢をロイに押しつける。一度熱を放ったにもかかわらず、もう腹につくほどそそり立っているそれをロイはキュッと握った。
「さっき出したばかりなのにもうこんなにして」
 イヤラシいな、と揶揄する声にハボックが顔を赤らめる。
「だって…ッ」
「だってなんだ?お前がイった後はキスしかしてないぞ?」
 そう言って面白そうに覗き込んでくる黒い瞳を睨み返しながら、ハボックはロイの手ごとそそり立つ楔を握った。ゆっくりと扱き出しながらもう一方の手を後ろへ回す。まだキメラに陵辱された痕も生々しい蕾へ強引に指を沈めようとするハボックの手を、ロイは慌てて掴んだ。
「馬鹿っ、なにをしてる?!」
「だって…ッ!」
 イヤイヤとむずかるように首を振るハボックにロイは深く口づける。何度も繰り返し口づけてハボックの体から力が抜けるとハボックの脚を大きく開いた。
「痛いだろうが我慢してくれ」
 ロイはそう言って白い双丘を両手で抱え込むようにして割り開く。現れた真っ赤に腫れ上がった蕾に眉を顰めたものの、躊躇わずに顔を寄せねっとりと舌を這わせ始めた。
「ィッ!!……ヒィッ!!」
 ロイの舌が触れた途端突き抜けるような痛みが走ってハボックは躯を硬直させる。熱を持った蕾に濡れた舌が触れる度、ハボックの躯がビクビクと跳ねた。
「アアッ!!アヒィッ!!」
 無意識に逃げようともがく躯を押さえ込んでロイは舌を這わせ続ける。唾液でたっぷりと濡らした蕾に指をあてがうとゆっくりと押し込んでいった。
「ヒィィッッ!!」
 さほど太さのない指ですら腫れ上がった蕾にはきついのであろう、ハボックは大きく目を見開いて悲鳴を上げる。それに構わずロイは長い指を根元まで埋め込むとグチグチとかき回した。
「痛いッ!ヒィィッッ!!」
 痛みに悲鳴を上げビクビクと震えながらも張りつめたハボックの中心は萎える気配がない。ロイはかき回していた指を引き抜くとヒクヒクと震える紅い蕾に己を押し当てた。
「挿れるぞ」
 そう低く囁いてロイは押し当てた楔をグッと押し込む。僅かな抵抗のを見せた蕾にぬぷりと先端が潜り込めば、後はまるで自ら飲み込むかのようにグプグプとめり込んでいった。
「ヒアアアアアッッ!!」
 腫れ上がった蕾を強引に割り開かれてハボックが悲鳴を上げる。だがその悲鳴もロイがゆっくりと抽送を始めれば、瞬く間に甘いものに取って代わった。
「アアッ!!ヒャアンッッ!!」
「ハボック…ハボック…ッ」
 ガツガツと突き上げ乱暴にこね回す。ハボックの両脚が胸につくほど押し上げ真上から突き入れるようにすれば、より深くを犯されたハボックが嬌声と共に熱を吐き出した。
「アア────ッッ!!」
 びゅくびゅくと吐き出した熱で己の顔を汚しながらハボックが喘ぐ。快楽の余韻に震える躯を、ロイは容赦なく揺さぶり突き上げた。
「ヒィッ!!アッアッ、ンアアッ!!たいさぁ…ッ!!」
 突き上げる度ハボックの唇から甘い悲鳴が上がり、きゅうきゅうと咥えたロイを締め付ける。腫れ上がった蕾を犯される痛みすら快感でしかなく、ハボックは甘い嬌声を上げ続けた。
「たいさっ、おねが……中に欲し…ッ!」
 甘く爛れた内壁をかき回されながらハボックが強請る。ロイの黒髪に手を差し入れ、甘えるようにロイを呼び続けるハボックの声に、ハボックを犯す楔がググッと嵩を増した。
「…ッ、く…ハボックっ!!」
 低く呻くと同時にロイはハボックの内壁に熱を叩きつける。深く抉るようにして熱を吐き出す楔をねじ込めば、ハボックが一際高い嬌声を上げた。
「ヒアアアアアッッ!!……ぃさ…ッ!!」
 ロイは甘く己を呼ぶ唇を塞いでハボックの体を揺すりあげる。強すぎる快感から逃れようと無意識にずり上がる体を引き戻して、ロイは愛しいハボックの内に何度も熱をそそぎ込んだ。

 くったりとベッドに沈み込む体をロイはそっと抱き締める。ハボックが望むままにその体を貪れば漸く引いた熱にハボックは深い眠りに落ちていた。
 明日になれば今度は酷使されすぎた体が辛くてたまらないだろう。それでも満たされて眠る顔は穏やかで、ロイはハボックに口づけるとその眠りに引き込まれるようにそっと目を閉じた。


2010/05/25
 

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突発触手ネタ、漸く終了です。普段の連載はどうしてもエロが少ないので、時々もの凄ーくエロが書きたくなったりするんですが、うーん、一話限りの筈だったんだけど、気がつけば七話もー。それもこれもMさんが「後遺症あったら楽しいよね」なんて私の耳元で囁くから!(爆)そうでなくても長くなってた話が更に伸びてしまいました。いや、書いている本人はとっても楽しかったんですが(笑)エロばっかりな話でしたがお楽しみ頂けましたら嬉しいです。