| 猫 |
| 「ああこらっ、爪立てんなって。綺麗にしてやってるんだから」 ロイは庭の方から聞こえてきた声にそちらのほうへと足を向けた。 「なにをやってるんだ?」 ロイの声に振り向いたハボックの手にはなにやら黒い塊りがバケツの中から逃げ出そうとしがみ付いている。 「大佐」 「猫か、ソレ?」 ロイはバケツの上から黒い塊りを覗き込んで言った。 「近所の子なんスけどねー、さっき思いっきり泥水の中にダイブしちゃったんですよ」 そう言いながらハボックは大きな手でざばざばと水をかけて猫を綺麗にしてやった。 「そら、綺麗になった」 ハボックは猫を抱え上げるとぎゃあぎゃあと喚くソレを着ていたTシャツの裾を使って包み込む。 「乾かしたら旨いもん食わせてやるから」 そう言ってロイを置いてすたすたと家の中に戻ってしまう背中にロイはムッとした視線を向けた。少し遅れてロイが家の中に入るとガーガーとドライヤーを使う音がする。音のする方へ行けばハボックが猫の濡れた毛を乾かしてやっている所だった。 「あいててててっっ!痛いぞっ、こらっ」 猫はドライヤーを嫌ってすごい勢いで暴れるとハボックの腕を飛び出していく。ハボックは苦笑するとドライヤーを止めて近くの棚に置くと、猫を洗うために外していた首輪を手にとり、覗いているロイの横をすり抜けてキッチンへと入っていった。皿を取り出し美味いと噂の猫缶をあけてやると、さっきは逃げ出した猫が途端にハボックに擦り寄ってくる。 「こら、すぐやるから待ってろ」 ハボックは嬉しそうに猫の頭をぐりぐりと撫でてやるとその前に皿を置いた。がつがつと食べる猫の体を優しく撫でてやると、猫は撫でるハボックの腕に尻尾をぱたぱたと叩きつける。その仲のよい様子にロイは益々ムッとしてハボックに話しかけた。 「なんでうちに猫缶があるんだ」 「だってよく遊びに来るんですもん」 「よく?」 「そう、まあ飼い主がいるからあんまりやっちゃいけないとは判ってるんスけどね。食べ過ぎるとよくないし。でも一応飼い主さんにも時々ならって許可もらってるから」 ハボックはそう言うと愛おしそうに目を細めて猫を見た。 「好きなんスけどね、猫。でも飼えないでしょ、生活不規則だし」 そうしてハボックは綺麗に食べ終わって身繕いをする猫を抱き上げる。 「やっぱカワイイなぁ、お前。猫、飼いてぇ…」 抱いた猫にすりすりと頬ずりするハボックの姿にロイのなかでぶちぶちと何かが千切れる音がした。ふとロイがハボックの首筋を見ると赤く長い引っ掻き傷が目にはいった。 「ハボック、その首の傷はどうした?」 「ああこれ」 ハボックは首筋に手を当てて答えた。 「さっきドライヤーかける時にコイツに引っかかれたんスよ」 ロイはハボックの首筋に頭を摺り寄せる猫の首を掴むとハボックから引き剥がした。 「あっ!何するんスかっ!!」 「ウルサイっ!お前はとっとと飼い主の所へ帰れッ!」 そう言うとロイは窓から猫を放り出してしまう。 「あっ、ひでぇっ!」 いきなり猫を追い出してしまったロイに文句を言おうとしてロイを振り向いたハボックは、その形相を見てギクリと身を強張らせた。思わず一歩引いたハボックの腕をがしっと掴んでロイは言った。 「ハボック、前に私が言った事を覚えているか?」 「は?え…あの…」 じっと見つめてくるロイの黒い瞳に、ハボックは何か言わないと拙いと思うもののヘタなことを言えば益々その怒りに油を注ぐことが判りきっているだけに、うろうろと視線を彷徨わせた。大体ロイが一体何に腹を立てているのかが、ハボックにはまったくわからない。自分はただ近所の猫を洗ってやってメシを食わせてやっただけだ。そう考えてハボックはロイに言った。 「もしかして、たいさ、腹すいてます?」 「はあっ?」 今度はロイが目を丸くする番だった。何を突然訳のわからないことを言い出したのかと思えば。 「いや、腹すいてるアンタをほっといて猫にメシやってたから怒ってるのかなぁって…」 違いました?とのほほんと聞いてくるハボックにロイは眩暈がする。他人に関しては意外に気の回るこの男が自分絡みのこととなるとどうしてこう、疎いのだろう。まぁ、ほっとかれたから腹が立ったという部分に関して言えば、当たらずとも遠からずではあるが、別に腹がすいていたわけではない。別の意味で食べたいものなら今目の前に立っているが。 ロイはそう考えるとすっと目を細めた。 「そうだな、腹がすいているといえばすいている」 「ああ、じゃ、なんか作りますね」 ホッとした顔をしてハボックは笑ったが、ぐっと掴まれたままの腕を見下ろしてロイに言った。 「あの、手、離して欲しいんですけど…」 「どうして?」 「だって、メシ、作れませんよ?」 「別にわざわざ作ってくれなくてもいい」 「へ?」 ぽかんとまるで無防備な顔をするハボックにロイは苦笑した。ほんとにどうしてこう鈍いのか。こちらの気持ちなどまるで気にも留めないようなそんな態度に、ロイがどれほどハボックを啼かせて苛めたくなるかなんて事はまるで思いもしないのだ、この男は。 (学習能力がないとも言えるがな) ロイはにやりと笑うとハボックを床に押し倒した。 「ここに美味いメシがあるからな」 目を丸くしたハボックが次の瞬間盛大に赤くなるのをロイは楽しそうに見下ろす。 (こういうところがたまらないんだ) ロイは不機嫌だったことなど忘れてハボックの服を脱がせ始めた。あまりにも急激に機嫌の良くなったロイにハボックはむしろ慌てた。これは絶対自分にとっては良くないパターンだ。自分だって学習する。このまま為すがままになれば絶対後悔するのは明らかだ。ハボックはそう考えると必死にロイを押し返した。 「た、いさっ、ちょ…なに、まっぴるまから、サカッて…やめてください、ってばっ」 ハボックはロイを力任せに押し返すと膝を蹴り上げた。それが。 ドカッ!! 「―――ッッ!!」 「あ」 ものの見事にロイの腹にヒットしてしまった。ハボックの上で腹を押さえて蹲るロイにハボックの顔がサアッと青ざめる。 (やばい…やばいっ!) 逃げなきゃ、と思ったハボックが下から抜け出そうとした瞬間、ぐいっと体を引き戻されて、痛みと怒りに顔を歪ませるロイに組み敷かれてしまった。 「おまえ〜〜…っ」 「わざとじゃないっスっ!!」 「赦さんからなっ!」 「だからわざとじゃ…ああっ」 ズボンの中に滑り込んできた手にぎゅっと自身を鷲掴みにされて、ハボックの唇から悲鳴が上がった。ロイはハボックのズボンに手をかけると下着ごと剥ぎ取ってしまう。その時、まだハボックの手に握られたままの猫の首輪に気がつくとにんまりと笑った。手を伸ばして奪い取ると金色の鈴のついた赤い皮製の首輪をハボック自身へと巻きつけてしまう。 「なっ…なにを…っ」 「たっぷり御仕置してやる」 そう囁くとロイはハボックにねっとりと口付けた。シャツの中に手を滑り込ませてぷくりと立ち上がった乳首を探り当てると、きゅっと摘み上げる。 「ひあっ」 シャツを捲り上げて舌と指を使って愛撫していけば、硬さを増して赤く色づいていくソコにロイは楽しそうに笑った。 「ひ…あ…」 しつこいほどにくりくりとこね回されて、快感よりも痛みが増していく。千切れてしまうのではないかという錯覚に襲われて、ハボックはぽろりと涙を零した。 「い、や…も、やめ…っ」 ハボックがそう言ってからも、散々に弄り回した挙句、ロイはようやくハボックの乳首を愛撫するのをやめる。荒い息を吐いて、それでもホッとして体から力を抜くハボックの後ろに手を回すと、ロイはゆっくりと指を沈めていった。そうして、とろりと蜜を零しながらそそり立つハボック自身を指で弾く。ちりん、と音を鳴らして揺れるソレにハボックがひゅっと息を飲んだ。 「ん…あ…ぅああ…」 2本、3本と指を増やされてぐちぐちとかき回される事に、ハボックはびくびくと体を震わせる。袋を揉みしだかれ後ろをかき回されて、ハボックの中心はそそり立ち、根元を縛る首輪がぐぅっと食い込んでいった。 「い…ああ…っ」 こみ上げる射精感に、だが、戒められたソコは僅かに蜜を垂れ流すだけで、イくことを赦されない。ハボックは苦しそうに唇を震わせると、ロイの腕に縋りついた。 「た、いさっ」 「なんだ?」 「と、って…っ、ソレ、とって…っっ!」 根元に食い込む赤い首輪を外そうと伸ばしたハボックの手を、ロイはぐっと掴むとにやりと笑った。 「まだダメだ」 「…っっ!」 そう言って、戒めたハボック自身に手をやると、ぐちゅぐちゅと擦り上げる。 「ひっ」 ますます食い込むソレに、ハボックはぼろぼろと涙を零した。泣きじゃくるハボックの姿にロイはうっとりと微笑むとハボックの頬を撫でた。 「私を満足させたら取ってやってもいい。」 そう言ってロイは立ち上がるとダイニングの椅子に腰かけた。ハボックは床の上に身を起こすとにやにやと笑うロイを涙に濡れた瞳で見つめる。ハボックは這うようにしてロイに近寄るとその膝に手をかけた。震える指でロイのズボンをくつろげると熱く滾ったロイ自身を取り出し、そっと舌を寄せた。 「ん…ん、ふぅ…んく…」 涙を滲ませながら必死にロイを頬張る姿に、ロイの体をぞくぞくしたものが走り抜ける。ロイはハボックの髪を掴んで唇を外させると、立ち上がるように言った。よろよろと立ち上がるハボックの腕を引いてロイはハボックに言った。 「おいで」 ハボックは言われるままにロイの脚の上に跨るとそそり立つロイ自身を蕾に宛がった。ロイの肩に手を置いたままゆっくりと体を下ろしていく。 「あ、あ、あ」 みしみしと割り開かれる感触にハボックは唇を震わせた。それでもようやくロイ自身をくわえ込むとロイの肩口に顔を寄せて息を整える。 「ハボック」 促すロイの声にハボックは顔を上げると腰を揺らし始めた。 「んっ…く…」 ずっずっと音を立ててハボックが腰を揺らすたびハボック自身を戒める首輪の鈴がちりちりと鳴る。自分の行為を耳からも教えられているようで、あまりの恥ずかしさにハボックは目を開けることが出来なかった。眉間に皺を寄せて自分の上で腰を揺らすハボックを見つめて、ロイは楽しそうに笑うと、目の前のハボックの乳首に舌を這わせる。 「あっ!」 びくっと体を震わせるハボックの蕾がきゅっと締まってロイを悦ばせた。 「可愛いよ、ハボック…」 ロイは手を伸ばしてハボックの頬を撫でる。ハボックはうっすらと目を開いて自分を犯す男を見つめた。 「た、いさ…も、う…っ」 「なんだ?」 「イかせて…っ…イきたいっっ」 「そんないイきたいのか?」 意地悪くロイが尋ねれば、ハボックはぽろぽろと涙を零しながら必死に頷いた。 「イきたいよ…あ…も、くるし…っ」 ぶるぶると体を震わせてロイに縋るハボックの中心はもう、すっかり膨れ上がっていて、酷く辛そうだった。「イきたいか?」と聞いたきり、何もしようとしないロイにハボックは我を忘れて泣き叫んだ。 「もうっ…ゆるし、て…っ…イきたいっ…イかせてぇ…っっ」 空色の瞳からぼろぼろと涙を零し、背を仰け反らせて喘ぐ姿に、ハボックの中のロイ自身がぐっと嵩を増した。ロイは手を伸ばすと、ハボック自身を戒める赤い首輪をようやっと外した。その途端。 「あああああっっっ」 ハボックの唇から悲鳴が上がったと同時にその中心からどくんと白濁が迸る。 「イくぅ…っっ!!…あああっっ!…とまんないっ…も、やだあっっ」 せき止められていた熱は止まることを忘れてしまったようにどくどくと溢れ出た。長い絶頂感にハボックは意識を飛ばしかけるが、ロイに乱暴に突き上げられて気を失うことも赦されなかった。 「ハボック…ハボ…っ」 「ひ…あ…」 全身を快楽に犯されて、ハボックはどうすることも出来ずにロイにされるがままに体を揺らし続けた。 「あ…」 ずるりと引き抜かれて、ハボックは小さく息を吐いた。ちりんとなる音に目を開ければ、すぐ目の先にずっと自分を苦しめていた赤い首輪が落ちている。それはハボックの放ったもので見るも無残な様相を呈していた。ハボックは暫くぼうっとソレを見つめていたが、次の瞬間、体を起こすと手元にあったクッションで思い切りロイを殴りつけた。 「うわっ」 ぼすんと顔を殴られて、ロイは床に沈む。 「ハ、ハボック?」 「バカっ!死んじまえッ!!」 ハボックは目に涙を浮かべてそう叫んだ。あまりの剣幕にロイはびっくりしてハボックを見つめる。ハボックは落ちていた首輪を手に取ると、ロイに投げつけた。 「せっかくオレがあの子に買ってやったのにっ!!」 「え…ちょ…ハボ…」 「だいっきらいだっ!!」 ハボックはもう一度思い切りロイの顔をクッションで殴りつけた。ぐぅっと呻き声をあげたロイを放って、ハボックは痛む体をなんとか起こすと、よろよろと浴室へと入っていってしまった。ロイはダイニングの床の上に起き上がると、投げつけられた首輪を見つめる。ざあざあと湯の流れる音が止まったと思うとバタンと扉が開閉する音がして、ハボックが2階へと上がっていく気配がした。がたがたとなにやらしている音にふと不安になって、ロイは慌てて服を身につけると、廊下へと出る。ロイが急いで2階へ上がろうとする間もなくハボックが手すりに掴まりながら階段を下りてきた。カバンを手にしたハボックはロイを睨みつけると何も言わずに玄関へと歩いていってしまう。慌てて後を追ったロイは扉を開けようとするハボックの肩に手をかけた。 「ハボックっ!どこへ行くんだっ?」 だが、ハボックは無言でロイの手を払いのける。そうして、振り向きざまロイの腹へ体重を乗せた一発をお見舞いした。 「…ぐ…」 重い一発にロイの膝が崩れ、ロイは床へと沈み込む。蹲るロイの近くにガチっと音がして、何かが投げつけられた。痛みに霞む目をあけてロイが見たそれは。 銀色に鈍く光るこの家の鍵だった。 2006/11/20 |
| あ、あれ?ハボック、出て行っちゃいましたよー。ど、どうしましょう…。実はこの話、エッチの前まで書いてずっとほったらかしになってたんですが、続きを書いたらこんな事にー。えーと。「夏梅」に続きます〜。 → 夏梅 |