辿り着くはパナケイアの空  第四十四章


 ズズッと熱い塊がゆっくりと押し入ってくる。狭い器官を強引に押し開かれる痛みに、オレは悲鳴を上げて仰け反った。
「ヒィッ!ヒ……ィッ!!い、たぁ……ッッ!!」
「ハボック」
 ビキビキと裂けていく嫌な音が聞こえる気がする。あまりの痛みに目の奥がチカチカと赤く点滅して、オレは圧し掛かってくる体を闇雲に押し返した。
「痛いッ、ヤダぁ……ッッ!!」
 苦しくて痛くて堪らない。どうしてこんな目に遭わなければいけないのか、ぼろぼろと泣きながらもがけば頭上から優しい声が降ってきた。
「ハボック……好きだ」
 その声にひき瞑っていた目を開ける。涙に曇った視界の向こうでその声の主がもう一度言った。
「愛してる、ハボック……」
 何度か瞬けば涙の膜が晴れる。オレを見下ろす大佐が優しく笑ってもう一度言った。
「お前が好きだ、ハボック」
「た……さっ」
 その声がオレの中の熱と大佐とを結びつける。大佐はオレの頬を濡らす涙を唇で拭って言った。
「力を抜け、ハボック」
「…………無理っ……出来ねぇっス……」
 大佐に言われてなんとか力を抜こうとしたけど、ガチガチに力が入ってしまった体は、弛むという行為を忘れてしまったかのように全く力が抜けなかった。
「ご……ごめんなさい……っ」
 自分の体なのに自分でどうすることも出来ないなんて。情けなくて涙が出てくる。ポロポロと涙を零すオレに大佐は優しくキスを落とした。
「泣くな……無理な事をさせているのは私だ。でも……」
 大佐は言ってオレの額に張り付く髪をかき上げる。
「どうしてもお前が欲しいんだ……」
 額に唇を寄せて大佐がそう囁いた。辛そうな息遣いに中途半端な状況で大佐も苦しいのが判る。オレは必死に息を整えて大佐を迎え入れようとしたけどどうすることも出来なかった。
「た、いさ……、オレ、平気っスから……無理矢理突っ込んで……ッ」
 無理矢理にでも突っ込んでしまえば後はどうとでもなるだろう。あの時だって入ったんだから、多少痛くたってなんとかなるはずだ。そんな事を苦しい息の合間に切れ切れに伝えれば大佐の顔が曇る。慌てて決して責めてる訳じゃないと言いかけたオレの言葉を大佐が遮った。
「それじゃああの時と変わらんだろう?出来ることならお前にも感じて欲しいんだ……」
「アッ……たいさ……っ」
 大佐は言ってオレの楔に手を伸ばしてくる。ゆっくりと扱かれればオレの体から僅かに力が抜けた。
「ハボック……ハボック」
「んっ……ふ、あ……ッ」
 それに合わせるように大佐がゆっくりと押し入ってくる。相変わらず苦しくて痛かったけど、それでも前を弄られる快感に紛れてさっきよりほんの少し楽だった。
「あ……ああっ」
 一体どこまで入ってくるんだろう。腹を突き破ってしまうんじゃないかという恐怖が込み上げて体が震える。オレは大佐の腕をギュッと握って緩く首を振った。
「大佐のデカイ……ッ、どこまで入ってくんのッ?も……これ以上奥入んないっ」
 どんだけデカくて長いんだ、と半泣きになりながら言えばオレの中で大佐がムクリと大きくなる。ギョッとして見上げれば大佐が顔を歪めて言った。
「煽るな、馬鹿……ッ」
「煽ってないっス……ッ、やっ!また……ッ!もう大きくしないでッ!!」
「ハボック!」
 ボロボロと涙を零して訴える。もう、オレの中は大佐でいっぱいでこれ以上挿れる隙間なんてないと思えた。
「もう少し我慢しろ」
 大佐が苦しい息の合間からそう囁いて体を進めてくる。大佐は泣きじゃくるオレを宥めるように顔中にキスを降らせた。
「大佐ぁ」
「……全部入った」
 大佐がオレの肩に顔を埋めて言う。気がつけばオレの双丘と大佐の下腹がぴったりとくっついて、大佐の楔が根元までオレの中に潜り込んでいた。
「……大佐の……オレん中、入ってる……」
「ああ」
 熱くてでっかい塊がオレの中で息づいてる。これが大佐なんだと思ったら、俄に愛しさが込み上げて新たな涙が溢れてきた。
「ハボック?痛むのか?」
 また泣き出したオレを見て大佐が慌てたように尋ねる。オレは心配そうに見下ろしてくる大佐に首を振って言った。
「違うっス……大佐が中にいるんだなぁって思ったら、嬉しくて……」
 この間の気持ちがすれ違ったままだった時とは違い、心を通わせて体を繋げるのはなんて幸せなんだろう。痛くて苦しくてもすっごく幸せだと笑えば、大佐がなんともいえない表情をした。それと同時にオレの中で大佐がビクビクと震えたのが判る。
「大佐……?」
「……可愛すぎるぞ、お前。イくかと思った……」
 大佐はため息混じりに言って、がっくりとオレの上に突っ伏した。重いと文句を言うオレの唇をキスで塞いだ大佐は、オレの頬を撫でて言った。
「もう我慢できん。お前が好きだ、全部寄越せ」
「たいさっ」
 大佐は言うなりオレの脚を抱え直す。ハッとして見上げれば、大佐が熱っぽい瞳で見つめてきた。
「愛してる……愛している、ハボック」
 そう言った大佐の楔がズルリと入口まで引き抜かれたと思うと次の瞬間ガツンと突き入れられる。そのあまりの衝撃に、オレは悲鳴を上げてに身を仰け反らせた。
「ヒアアッッ!!アアアッッ!!」
「ハボック……ハボックっ」
 みっちりと埋まった楔が引き抜かれる度内壁が引きずり出されるような錯覚に陥る。ガツガツと容赦なく突き上げられてオレは無意識に逃げようと身を捩った。
「アヒィッ!!アッ、アアッッ!!」
 このまま突き破られるかもしれない。そんな考えが頭の中をよぎった時、大佐の楔が掠めた箇所から電気みたいな痺れが走った。
「ヒッ……ヒィッッ!!」
 その弾みでキュッと大佐を締め付けてしまえば、大佐が一瞬目を瞠る。大佐はオレの脚を胸につくほど押し上げると、さっき掠めた場所をピンポイントで突いてきた。
「ヒャッ?!アアッ!!ヤッ、嫌ッッ!!」
 そこを突かれる度背筋から脳天に電気が走り抜ける。数度目に突かれた時、オレはそれが快感だと気づいた。
「ここがイイんだな……?」
「違……ッ、やっ、ヤアアッッ!!」
 こんな風にされて感じるなんて、とても信じられなくてオレは必死に首を振る。だが、大佐が突き上げる度突き抜けるのは確かに快感で、その証拠にオレの楔はすっかりとそそり立っていた。
「ヤダ……なんで……ッッ?!」
 混乱と羞恥でオレは激しく首を振る。そうする間にもオレはどんどん追いつめられて、もう今にも弾けそうになっていた。
「ダメっ、大佐っ、やめてッッ!!」
「どうして?イイんだろう?」
 そう囁く大佐がじっと見つめてくるのを感じる。恥ずかしくて死にそうになりながら、オレは大佐を押し返した。
「で、出ちゃう……ッ、なんで……ッ」
 恥ずかしい。こんなことでイっちゃうなんて信じらんない。オレは必死にこらえようとシーツを握り締め喉を反らせる。でも、そんなの一時(いっとき)の抵抗にしかならなくて。
「アッ……アアア───ッッ!!」
 次の瞬間、オレは高い嬌声と共にびゅくびゅくと熱を吐き出していた。


→ 第四十五章
第四十三章 ←