凌霄花(のうぜんかずら)の宿  第二十八章


「アッ、アアアアアッッ!!」
 ズブズブと狭い肉筒を押し開くようにして私は体を進める。ひんやりと冷たい(ジャン)の躯に反比例するように押し入った(ジャン)の中は燃えるように熱かった。
「ヒィんッ、増田(マスタング)さん……ッ!」
 強引な挿入に(ジャン)がもがく。その手が私の背に縋りつき、私のシャツをくしゃくしゃと握り締めた。
「あ……んああッッ、無理ッ、も、入らな……ッ」
 セックスの経験があるとは思えないほど、押し入った内部はきつく狭かった。苦しいと(ジャン)が弱々しく抵抗したが、とてもやめてやることなど出来なかった。
「ヒアアアアッッ!!」
 猛る凶器で強引に(ジャン)を貫く。漸く根元まで押し込んで私はしなやかな躯を強く抱き締めた。
(ジャン)……ッ」
 漸く一つになれた喜びに私は(ジャン)の顔といい肩といいキスを降らせる。最後に深く唇を合わせてそっと離せば(ジャン)が涙に濡れた瞳で私を見上げてきた。
増田(マスタング)さん……」
(ジャン)……愛している」
 そう囁く私に(ジャン)が顔を歪める。
「オレ、も……好きッ……増田(マスタング)さんが好きっス」
 言って(ジャン)は私の髪に手を差し入れる。(ジャン)が引き寄せるままに唇を合わせれば(ジャン)が消え入りそうな声で言った。
「今だけでいい……オレの全部上げるから……増田(マスタング)さんをオレにください」
(ジャン)っ」
 切ない声でそう告げる(ジャン)を私は強く抱き締める。
「今だけなんて言うなっ、私の全てはこれからずっとお前だけのものだッ」
増田(マスタング)さん」
 そう言って(ジャン)の涙に濡れた頬を何度も撫でる。(ジャン)は何か言いたげに私を見つめたが、そっと目を閉じて私の背に回した手に力を込めた。
「きて……増田(マスタング)さん、オレの中にアンタを刻みつけて……」
 忘れてしまわないように、と囁く(ジャン)の声の切なさに私は(ジャン)に噛みつくように口づける。
「忘れるなんてことはさせない」
 だってこれから私たちはずっと一緒にいて愛し合っていくのだから。忘れるなんてあり得ない。そう囁いてガツンと突き上げれば(ジャン)が大きく背を仰け反らせた。
「ヒアアッッ!!」
 逃げをうつ躯を引き戻すと同時に更に奥を抉る。熱い内壁を押し開かれ最奥を犯されて、(ジャン)が目を見開いて喘いだ。
「ンアアッ!!増田(マスタング)さん……ッ」
(ジャン)……ッ、(ジャン)ッッ!!」
引き抜けば逃すまいとするように肉襞が絡みついてくる。それに答えるように私は容赦なく(ジャン)を突き上げた。
「あんっ……アッアッ、凄い、深い……ッッ!!」
 奥を貫かれ、(ジャン)が身を仰け反らせて喘ぐ。涙に濡れたその顔が快楽に蕩けているのを見れば、堪らなく興奮した。
「ヒッ、あ……ッ?や、おっきくなった……ッ!苦し……ッ!!」
 (ジャン)が僅かに目を見開きゆるゆると首を振る。逃れようともがく躯を押さえつけ、(ジャン)の下肢を抱えあげるようにして突き入れると大きく震えて(ジャン)が熱を吐き出した。
「ひゃあああんッッ!!」
 高い嬌声を上げて(ジャン)が白濁をまき散らす。その白い顔を己の吐き出したもので汚す(ジャン)に興奮して、私は激しく腰を突き入れた。
「ヒィッ、ヒィィッッ!!待っ……待ってッ!増田(マスタング)さ……、ヒアアアアッッ!!」
 ガツガツと激しく突き上げられて、(ジャン)が身悶える。私を咥える内壁がキュウキュウと収縮して締め付けるのが更に私を煽った。
(ジャン)ッ!!」
「駄目……も……ッ!!」
 弱々しくもがいて(ジャン)が涙に濡れる瞳で私を見上げる。その途端ググッと(ジャン)を犯す楔が嵩を増し、私は次の瞬間(ジャン)の中に熱い精を叩きつけていた。
「ッッ!!ヒアアアアアッッ!!」
 大きく背を仰け反らせ、(ジャン)がガクガクと躯を震わせる。きつい締め付けに呻きながら私はたっぷりと(ジャン)の中に思いの丈を注ぎ込んだ。
「あ……増田(マスタング)、さん……」
 (ジャン)が私を呼んでしがみついてくる。こんなにも激しく求め合ったのに未だひんやりと冷たい躯を抱き返して、私は(ジャン)に口づけた。
「ん……んふ……好き、……好きっ、増田(マスタング)さん……ッッ」
 繰り返す口づけの合間に(ジャン)が切なく囁く。涙に濡れた瞳で私を見上げて、(ジャン)は呻くように言った。
「嫌だ……離れたくないッ、こんなに好きなのに……ッ!」
(ジャン)
 ポロポロと涙を零して(ジャン)が私にしがみつく。好きだと繰り返す(ジャン)の、初めて逢ったときから惹かれていたその空色の瞳を見た時、私は漸く気がついた。ずっと微かに聞こえていた水音の意味を。
(ジャン)、お前は……」
「ごめんなさい、増田(マスタング)さん、オレ……ッ、赦されないって判ってるのに……ッ」
 それでも望んでしまうと(ジャン)は呻いて腕で顔を隠す。白く透き通る(ジャン)の肌を見つめていた私は、顔を覆う腕をそっと掴んで外させた。
(ジャン)、さっき言っただろう?私の全てはお前のものだと」
増田(マスタング)さん……?」
 不安そうに見上げてくる空色に私は微笑む。
「一緒にいこう、(ジャン)。私たちは何処までも一緒だ」
増田(マスタング)さんっ、でもッ」
「行き着く先が例え地獄だろうと、私はお前と共にいる」
 そう告げる私を(ジャン)が目を見開いて見つめる。その唇にそっと口づけを落とせば、(ジャン)がくしゃくしゃと顔を歪めた。
「いいんスか?ほんとにいいの……?」
「当たり前だ。お前がいない人生など過ごしたところで何の意味もない」
 だから、と私は言って(ジャン)の震える唇に口づけを落とす。(ジャン)は何度も言いかけては言葉を飲み込んだが、やがて絞り出すように言った。
「愛してます、増田(マスタング)さん……オレと……一緒に来て……ッ」
 言ってしがみついてくる(ジャン)を私は優しく抱き返す。
「ああ、何処までも一緒に……もう二度と離さない」
 微笑む私を(ジャン)が引き寄せ口づけた。
「好き……好きっス」
「私もだ、(ジャン)
 私は(ジャン)の耳元に囁き(ジャン)の脚を抱えあげる。再びゆっくりと突き上げ始めれば(ジャン)の唇から熱い吐息が零れた。グチュグチュと激しく掻き回す私の動きに合わせて(ジャン)の喘ぎ声も大きくなる。
(ジャン)……(ジャン)……ッ」
増田(マスタング)さん……ッッ」
 互いを呼ぶ声と激しく交わる音が凌霄花を纏わせた屋敷に響き、そしてそれを打ち消すように大きくなった水音が天神川を流れるそれだと気づいた時。
 私と(ジャン)の全てを冷たい流れが飲み込んでいった。


 ギィと探偵事務所の扉を押し開けて男が出てくる。秋の気配を漂わせる空を見上げた男は、探偵事務所に預けられていた短剣(ダガー)を懐にしまい、その常盤色の視線を地面に落としてゆっくりと歩きだした。賑やかな通りを抜けて更に歩いていけば、鬱蒼とした竹林が見えてくる。男はさやさやと音を立てる林をじっと見つめていたが、やがてその中へ足を進めた。竹林の中を抜ける細い道を男はゆっくりとゆっくりと歩いていく。どれくらい歩いただろう、現れた朽ちかけた屋敷の前で足を止めると古い木戸を開いて中へと入った。男は所々残っている飛び石を辿って屋敷に近づく。玄関の引き戸をガタガタと鳴らして中へ入れば、男の体をひんやりとした空気が包んだ。足を一歩踏み入れると水分を含んだ畳がずくりと沈む。濡れた畳の上に落ちている白いものを広い上げた男は、それがかつて親友だった男の持ち物だと気づいた。
「……結局お前は最期まで自分の欲しいものを手にすることが出来たってことか、絽音(ロイ)
 彪守(ヒューズ)はそう言って手にした発火布を握り締める。
「ずるい奴だよ、ホントに」
 呟いた彪守(ヒューズ)の視線の先に手を取り合う絽音(ロイ)(ジャン)の姿が浮かび、吹き抜けた風に揺らいで消えた。
絽音(ロイ)……(ジャン)……俺もそこに……」
 言いかけて彪守(ヒューズ)は緩く首を振って屋敷を出ていく。そうして彪守(ヒューズ)が去った後には、地面に散った凌霄花が秋の風に震えているだけだった。


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「凌霄花の宿」完結でございます。お忘れかと思いますが、これ、幽霊ネタですんで!最後がこうなるのは最初から決まっておりました。ここまで長くなったのは予定外でしたが(苦笑)私的にはこれはハッピーエンドだと思ってるんですがどうでしょう。ともあれ少しでもお楽しみ頂けていたら嬉しいです。