| 金剛石 5 |
| 「隊長っ、全員配置につきました!」 「ああ」 緊張した面持ちで僅かにハボックから視線を逸らして隊員がそう告げる。それにおざなりの返事を返したハボックは通りの向こう、ブレダ達の隊がいる方を見やった。忙しく歩き回る隊員達の中、漆黒の髪が見える。あそこにロイがいるのだと垣間見える黒髪で確認したハボックは、例え姿が見えなくともロイの所在が判ると気づいた。 (すっげぇオーラ) ロイという個だけが持つ色鮮やかな深紅のオーラがハボックの目には見える。人間誰しもそれぞれに固有のオーラを持っているが、あそこまでくっきりと感じられる人間は稀であり、ロイが希有の才能を持っている事を示していた。 (そんな人がなんでオレに拘んの?) 命令にもろくに耳を傾けず傲慢な態度を崩さず、増してや呪われていると誰もが怖れる瞳を持つ自分を、どうして側に置きたがるのだろう。 ハボックは苛々として爪を噛む。その時腕の時計が微かに振動し、作戦開始の時間を告げた。 「……行くぞ」 自分がいいと思った通りにしか動かないとは言ったものの、確かに現状ではロイの立てた作戦が最善であり不本意ながらもその通りに動くしかない。 ハボックを先頭に隊員達が滑るようにテロリストが立てこもる建物へと近づいていく。作戦開始から五分後、全ての出入口を押さえた隊員達が次の行動に入るべく一斉に建物へと侵入した。途端に響き渡る発砲音と怒声。訓練されつくされた隊員達がロイの立てた作戦に従い、無駄のない動きでテロリスト達の力を確実に殺ぎ落とし奪っていく様を目の端に捉えながら、ハボックはロイの姿を探した。 (あそこ……よかった、無事だ) ふとそう思って、ハボックはそんな事を考えてしまった己に舌打ちする。 (あの人がどうなろうと知ったことか) ハボックがそう思った瞬間。 ドオオンッッ!! 大きな爆音が響いて建物全体が揺れる。咄嗟につい今し方ロイの姿を確認した方向へと目をやったハボックは、その姿が忽然と消えている事に気づいて目を見開いた。 2011/02/06 |
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