金剛石 4


「作戦は以上だ。各自配置についてくれ」
「「イエッサー!」」
 ロイの言葉に応えて皆が一斉に敬礼を返す。己のやるべき事をこなす為、次々と執務室を出ていく部下達の中から一際高い後ろ姿にロイは声をかけた。
「ハボック」
 そう呼べばハボックが足を止めて振り向く。ロイは立ち上がるとハボックを真っ直ぐに見つめて言った。
「判っているな?」
「何をです?」
 ロイの言いたい事などよく判っているくせにそう返してくるハボックをロイは睨みつける。誰もが怯む眼光を軽く受け止めてハボックは言った。
「ちゃんと言って貰わないと、間違って怒られんのは嫌っスから」
 まるで士官学校を出たてのペーペーのような事をハボックは口にする。それでいて表情には失敗を恐れるような不安など欠片もなく、その言葉が単にロイに対する当てつけに過ぎないと察せられた。
「作戦通りに動け。判ったな、ハボック」
「オレはオレがいいと思った通りに動くって言わなかったっスか?」
「だったら今ここでこの作戦以上にいいと思うお前の考えとやらを聞かせてみろ」
 言い返した言葉にそう返されてハボックは目を見開く。悔しそうに歪む蒼い瞳を見つめてロイは言った。
「作戦はさっき言った通りだ」
 ロイは言ってハボックの横を通り過ぎ執務室を出ていく。その背を視線で追ってハボックは言った。
「アンタも行くんスか?」
「待ってるのは好きでないんでな」
「後悔する事になるかもしれないっスよ?」
 ハボックの言いたい事を察してロイは足を止める。振り向いたロイは見つめてくる蒼い瞳を見返してニヤリと笑った。
「私の作戦通りにすれば、後悔するような事にはなりはしないさ」
「ッ?!」
 そう言うとロイはハボックの返事を待たずに行ってしまう。ハボックは目を見開いたまま凍り付いたように立ち尽くしていたが、クシャリと顔を歪めた。
「一度痛い目に会えばいいんだ」
 そうすれば自分がどれほどの危険を抱え込んでいるのか嫌でも判るだろう。
 ハボックは吐き捨てるように言って足音も荒く執務室を出ていった。


2011/02/03



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