第九章 |
気を失ってぐったりと沈み込む体からずるりと自身を引き抜く。涙に濡れた頬に手を伸ばすとヒューズは白いそれをそっと撫でた。汚れた下肢に目をやるとその惨状に僅かに眉をひそめ、タオルで丁寧に拭ってやる。打ち棄てられたズボンを拾い上げると着せ付けてやり、ベッドからシーツをはぎ取って改めてその体を横たえブランケットを引き上げてやった。 ヒューズは椅子を引き寄せるとハボックが眠るベッドの傍に腰を下ろす。煙草を取り寄せ火をつけて、ハボックの顔をじっと見つめた。 ロイが遅かれ早かれハボックに惹かれるのは判りきっていた。ハボックはロイや自分にはないものを持っている。自分達があの焼けつく大地で失くしてしまったものを。いくら自分がこうしてハボックを傷つけ汚したつもりでいても、結局ハボックが持っているものを奪う事もハボックに僅かな痕を残す事も出来はしないのだ。それが悔しくてヒューズはハボックを抱く。それこそがロイだけでなく自分もハボックに惹かれていることを表しているに他ならなかったが、ヒューズはその事実から目を逸らし続けていた。 ヒューズは咥えていた煙草を手に取るとハボックを見つめる。この燃える火をハボックの白い肌に押し付けたらどうだろう。表面だけでもハボックに痕を残せたなら何かが変わるのだろうか。そんな考えが頭をよぎり、ヒューズは煙草をハボックに近づける。紅く燃える煙草の先がハボックの肌に触れようとしたその時。ドアをノックする音と共にロイの声が聞こえた。 08/07/17 |
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