第二十四章


「お前の分はと聞いてるんだ」
 そう繰り返すヒューズの顔をハボックは無表情に見返す。フッと笑みを作ったハボックが答えた。
「オレは先に───」
「嘘をつくなッ!!」
 ハボックの言葉を遮ってヒューズがバンッと壁を叩く。その勢いに押されて口を噤むハボックに言った。
「お前が買い物をするのを見た。店の奴がいつも一人分だけ買っていくから独り者が自炊してんのかって言ってたぞ」
「なんだ、知ってるのに聞くなんて、意地悪っスね、中佐」
 早口でまくし立てるヒューズの言うことを聞いていたハボックは、そう答えて苦笑する。まるで何でもない事のように答えるハボックに、ヒューズはムッとして歩み寄った。
「どういうつもりだ?俺への当てつけか?」
「別にそんなんじゃないっス」
「だったら何故っ?大体お前、なんでここにいるんだ?俺は昼間はここにいないし、いつだって出て行けるだろう?何故ロイのところへ帰らない?」
「勝手に消えるのは赦さないって言ったのは中佐じゃないっスか。それにオレ、もうどこにも行くところなんて……っ」
 僅かに眉を寄せて言うハボックの胸倉をヒューズはグイと締め上げる。苦しそうに顔を歪めるハボックを見つめて言った。
「確かに言ったさ。お前が行くところがないって言ったのも聞いた。だが俺はほとぼりがさめりゃ帰るもんだと思ってた。どう言ったところでお前らが両想いなのは確かなんだからな。お前が戻ればロイは喜んで迎えるだろう?」
 もう、行くところなんてない───そう言ったハボックが切なくて連れてきてしまった。だが、互いの気持ちを知った二人が結ばれるのは時間の問題だと思っていた。気持ちの整理がつけばハボックはロイの元へ戻っていくのだと思っていたのだ。
「………大佐のとこには戻れねぇっス」
「どうして?ロイのことが好きなんだろうっ?それなら───」
「好きっスよ!でも戻れるわけないッ!」
 ヒューズの言葉を遮ってハボックは叫ぶと胸倉を掴む手を振り払う。振り払った反動でよろよろと数歩後ずさって言った。
「もう……戻れねぇもん」
 まるで寄る辺のない幼い子供のようにハボックは呟く。ヒューズはハボックの襟首を掴んで床に引き倒すとその長身に圧し掛かった。
「そうかよ……戻らないって言うなら好きにさせてもらう」
「ちゅう、さ……?」
「まさかここに来たら俺がもう何もしないと思ってた訳じゃないだろう?」
 囁くように言えば空色の瞳が見開く。おそらく無意識にそう信じていたのだろう、ハボックは信じられないと言うようにヒューズを見上げていたが、次の瞬間猛然と暴れ出した。
「やだッ!離せッ!!」
「うるせぇよ、レイプした男と一緒に住んでんだぞ。何されても文句は言えねぇだろうが」
「中佐ッ!」
 もがくハボックの抵抗などものともせず、ヒューズはハボックのシャツに手をかけると力任せに引き裂く。ヒュッと息を飲むハボックの乳首に爪を立てて思い切り捻り上げた。
「ヒィィッ!!」
 敏感な部分に走った激痛にハボックが悲鳴を上げる。それにも構わず爪を食い込ませればプツリと切れる感触がして血が滲んだ。
「い、た…ァッ……」
 容赦なく爪を立てられてハボックの抵抗が弱まる。その隙にヒューズはハボックのボトムを下着ごと剥ぎ取った。長い脚をM字に開くように胸に押し上げ、奥まった蕾に指を捻じ込む。潤いのない場所に無理に押し入ってくる異物に、ハボックの体が強張った。
「イッ……アッ…ッ!」
 痛みに耐えかねてハボックがヒューズの肩を弱々しく押し返す。ヒューズは捻じ込んだ指で乱暴に蕾を掻き回しながら言った。
「初めてじゃねぇだろう?散々俺のものを咥えて善がってただろうが。力抜けよ、少尉」
「……ぅ……ど、して…?ちゅ……さ」
 涙の滲む瞳がそう問いかけてくる。だが、ヒューズは顔を歪めただけでそれには答えなかった。沈める指の数を増やしながら戦慄く蕾を乱暴に掻き回す。頑なだった蕾が徐々に解れ、ハボックの唇から零れる呼吸が温度をあげていくのを感じながらヒューズは言った。
「悦くなってきたようだな。この淫乱が…っ」
 吐き捨てるように言ってヒューズは指を引き抜く。滾る自身を取り出すと蕾に押し当て一気に貫いた。
「ア……アア───ッッ!!」
 ズブズブと狭い器官を強引に割り開いて押し入ってくる熱にハボックが身を仰け反らせて高い悲鳴を上げる。逃げを打つ体を強引に引き戻して、ヒューズは乱暴に突き上げた。
「ヒィッ!!ヒィィィッッ!!」
 ハボックの唇から続けざまに悲鳴が迸り、涙が宙を舞う。
「……た…さァ……」
 パサパサと力なく金髪を打ち振りながら無意識に愛しい相手を呼ぶハボックの顔を、ヒューズは乱暴に犯しながらじっと見つめていたのだった。



2010/04/22

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