第十二章


「なんでもっと早く知らせないんだ」
 ロイは帰ってくるなりそう言ってヒューズを責める。ヒューズは窓に寄りかかったまま肩を竦めると言った。
「仕方ねぇだろ、アイツがお前に知らせるなっつうんだから。おい、待てよ、ロイ」
 帰ってきたその足で2階の寝室に上がっていこうとするロイをヒューズは引き止める。苛々と肩越しに振り向くとロイはヒューズを睨んだ。
「なんだ」
「さっき寝たばっかりなんだよ。すこし放っておいてやってくれ」
 ロイのキツイ視線など意にも介さずそう言うヒューズをロイは暫く黙ったまま見つめていたが、踵を返すと上りかけた階段を下り、ダイニングへと入っていく。テーブルに置いておいたサンドイッチの皿が片付けられている事に気付くと目を細めた。
「食べてくれたのか」
 ロイが嬉しそうにそう呟いた時、ガタンと音がしてハボックがダイニングの入口に姿を現した。
「ハボック!」
 眠っていると聞いたハボックが起きてきた事にロイは目を丸くすると駆け寄る。顔色の悪いハボックの頬に手を伸ばすと言った。
「起きて大丈夫なのか?」
「すんません、大佐。オレもう、帰りますから」
 そう言うハボックにロイは眉を顰める。
「馬鹿言うな。調子が悪いのに一人にできるか」
「平気っス。ご迷惑おかけしました」
 早口に言って出て行こうとするハボックにロイが声をかけようとするより一瞬早く。
「帰んじゃねぇよ、少尉」
 ヒューズがハボックに向かって言った。
「ちゅさ」
 その声に不安そうに顔を向けるハボックにヒューズはゆっくりと近づいていく。ヒューズの手が伸ばされればハボックの体が大きく震えた。
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 明らかに動揺するハボックにヒューズが楽しそうに笑いかけるのを見ながらロイは二人の間に流れるある種の緊張に気付いてしまう。
「ロイがいいって言ってんだ。治るまでここにいろ、いいな、少尉」
「は……い」
 答えて俯くハボックに満足そうに笑うとヒューズはロイを見た。
「これでいいんだろ?ロイ」
「えっ?あ、ああ」
 ロイはそう答えるとヒューズに促されてダイニングを出て行くハボックの背をじっと見つめたのだった。



2008/08/19

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