第三章


 気を失ったハボックの躯からヒューズはずるりと楔を引き抜く。まだ十分に硬さの残るそれに己の欲の深さを感じて、ヒューズは苦く笑った。白い頬を濡らす涙をヒューズは指先でそっと拭う。僅かに眉間を寄せた顔は苦しげでヒューズは胸が痛むのを感じた。
 ずっと抑え込んでいた気持ちをハボックにぶつけてしまった。嫌がる躯を押さえつけ強引に己をねじ込めばその熱さに眩暈がした。愛しくていとしくて全てを己の物にしたくて貪り尽くさずにはいられなかった。
『なんで?』
 何度も理由を尋ねてきたハボック。彼にしてみれば今夜の事は青天の霹靂とも言え、全く予想だにしていなかったに違いない。
『そんなにオレの事、キライ?』
 想う気持ちのあまりの激しさに答えられずにいればハボックがそう言った事を思い出して、ヒューズは顔を歪めた。
「嫌いだったらこんな事するかよ……ッ」
 ヒューズは低く呻いてハボックの躯を抱き締める。吐き気がするほど愛しくてハボックの全てを喰らい尽くさずにはいられなくて、ヒューズはグレイシアにもエリシアにも、今まで好きになったどんな相手にも抱いた事のない昏く激しい想いをどうしたらいいのか判らなかった。
 そのまま暫くハボックを抱き締めていたヒューズはやがてゆっくりと体を起こす。改めてハボックの躯を見下ろせば強引に抱いた躯はかなり酷い有り様だった。
「はは、ひでぇな……」
 ベルトで拘束していたせいで手首が擦れて薄く血が滲んでいる。抵抗され力任せに叩いた頬は赤く指の痕が残り、強引に絶頂に導いた下肢は白濁に汚れていた。なにより無理矢理犯した蕾は裂けこそしなかったものの、赤く腫れ上がり注ぎ込んだ白濁が溢れ出て酷く痛々しかった。それでもそんな姿を目の前に晒すハボックを見れば再びヒューズの身の内に激しい嵐が吹き荒れてくる。
「クソッ」
 ヒューズはギュッと目を瞑って首を振るとベッドから降り浴室に向かった。湯船のカランを捻り湯を出す。ドボドボと湯が溜まっていくのを確認してヒューズは部屋に戻った。受話器を取りフロントの番号を回す。夜中にもかかわらず仕事に忠実なホテルマンが出るとヒューズはベッドメイクをしてくれるよう頼んだ。ベッドサイドのテーブルにチップを置き部屋の扉にストッパーを挟みすかしておいてからハボックの躯を抱き上げる。湯の音が響き湯気の立ち込める浴室にハボックを抱いて入り、その躯をそっと下ろした。服を脱ぎ捨てシャワーを捻り湯温を調節する。椅子に腰掛けハボックの体を抱きかかえて緩く出したシャワーをかけた。
「ん……」
 肌に当たる湯の感触にハボックの睫が震える。閉じられていた瞼がゆっくりと開いてヒューズが何より惹かれた空色が覗いた。
「中佐……」
 ヒューズの姿を認めてハボックがふわりと笑む。昨日と変わらぬヒューズを信じ切った笑顔は、だが次の瞬間苦痛と怯えに歪んだ。
「やだッ」
 自分を抱くヒューズの胸を押しやってその腕から逃れようとハボックがもがく。その途端ハボックの躯が大きく震えて唇から呻き声が零れた。
「い……ッ」
 振り解こうとしたヒューズの腕にしがみついたハボックの指が痛みに震える。辛そうなその表情に胸が痛むのを感じながら、それを押し隠してヒューズは言った。
「暴れんじゃねぇよ。大人しくしてろ」
「中佐」
 チラリとヒューズを見上げたもののハボックは怯えきったように顔を伏せる。微かに震える躯に湯をかけて汗と汚れを流していたヒューズが、汚れの酷い下肢に手を伸ばせば大人しく腕に抱かれていたハボックがビクリと震えた。
「嫌ッ!触んなッ!」
 双丘の狭間に潜り込もうとする指を嫌がってハボックが暴れる。ヒューズは片腕でハボックの長身を押さえ込み、脚を絡めて抵抗を封じ込めるとハアハアと荒い息を零すハボックを見下ろした。
「大人しくしてろって言ったろうが」
「やだ、もう触んないでッ!」
 ヒューズに押さえ込まれてなお、ハボックは首を激しく振って暴れようとする。そんな風に全身で拒絶されれば抑え込んでいた嵐が再びヒューズの中で暴れ出した。
「この……ッ」
 ヒューズは横抱きに抱えていたハボックの躯をグイと引き起こし己の脚を跨がせるように向かい合わせに座らせる。双丘を引き寄せ猛る楔の上に引き下ろした。
「ヒィィッ!」
 腫れ上がった蕾にズブズブと押し入られてハボックが悲鳴を上げる。仰け反るように背後に倒れそうになった躯を引き寄せ、ヒューズはガツガツと乱暴に突き上げた。
「痛いッ、アアッ!」
 激しい抽挿にハボックが涙を流してもがく。その躯を抱え込み容赦なくガツンと突き上げた時、ハボックの躯が大きく震えた。
「ヒャアッ?!」
 明らかに今までと違う甘さの滲む悲鳴にヒューズの目が僅かに見開く。たった今反応を見せた箇所を狙って突き上げればハボックの躯がビクビクと震えた。
「や……ッ、そこ嫌ッ、アアアッ!!」
 戸惑ったように目を見開き首を振るハボックの唇から零れるのは明らかに嬌声だ。ヒューズは薄く笑って小刻みに前立腺を突き上げた。
「イイのか?ハボック……ここを突かれると堪んないだな?」
「違……ひぅんッ!」
「違わねぇだろ?イヤラシイ声出しやがって」
 ヒューズは低く笑いながら執拗に突き上げる。そのたびにハボックの躯が跳ね、唇から甘い悲鳴が零れた。
「やあっ、やめてッ!」
「もっとの間違いだろう?この淫乱め」
 低く囁けばハボックが目を見開く。空色の瞳に涙が盛り上がり、ハボックの瞬きに合わせて頬を一筋零れて落ちた。
「嫌だッ、やめてよ、もう――――アアンッッ!!」
 逃れようともがく躯をヒューズは激しく攻め立てる。
「ヒャア、ンッ!アアッ!!」
 ハボックが一際高い嬌声を上げた時、遠慮がちに浴室の扉を叩く音が聞こえた。
「ヒ……ッ?!」
 揺さぶられるままに声を上げていたハボックの躯がギクリと強張る。ニヤリと笑ったヒューズがハボックを引き寄せその耳元に囁いた。
「ベッドメイクを頼んだんだ。あんなグチャグチャじゃ休めないからな。どうやら終わったらしい」
「ず、ずっと人がっ?!」
「お前のイヤラシイ声、筒抜けだったろうさ」
 そう囁かれてハボックの体が今までとは違う震えを見せる。ヒューズはハボックの顎を掴んでその瞳を正面から覗き込んだ。
「今更だろう?あんなグチャグチャのベッドのシーツを取り替えさせたんだ。多少声を聞かれたところでなにも変わらねぇよ」
 そう囁くヒューズを空色の瞳が見つめる。震える唇が何か言おうとする寸前、ヒューズはハボックの躯を思い切り突き上げた。
「ヒャアアッ!」
 ガツガツと突き上げる度ハボックの躯が跳ね唇から嬌声が上がる。なす術もなくヒューズに躯を揺さぶられながら身悶えるハボックをヒューズはうっとりと見つめていた。


2012/04/05


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