第二章


「ヒ……ィッ!!」
 ズブズブと一気に貫かれてハボックは目を剥いて身を強張らせる。激痛のあまり悲鳴すら上げる事が出来ず、ガクガクと体を震わせた。
(なんで?)
 強引に体の奥をこじ開けられながらハボックは痛みに霞む頭で考える。ヒューズがこんな事をする理由がハボックには全く判らなかった。
 ハボックはヒューズの事がずっと好きだった。ロイの執務室で初めて紹介されたあの日、眼鏡の奥で悪戯っぽく輝く常盤色の瞳に魅せられてしまった。握手した手をグイと引き寄せられ、その瞳に間近から見つめられて心臓が跳ね上がったのを今でも覚えている。ロイと楽しそうに話す横顔を見つめながら、ハボックは引き寄せられ手をそっと握り締めていたのだ。
 それでもハボックはヒューズに自分の気持ちを打ち明ける気は全くなかった。ヒューズには妻子があったし彼が妻や子をとても大切にしている事を知っていたからだ。それに、妻を愛し、親バカ丸出しで娘を愛おしむヒューズが何より好きだったのだ。時折イーストシティを訪れるヒューズと言葉を交わし極稀に酒を酌み交わす、それだけでハボックは十分に幸せだった。
 それなのに。
(なんで?なんでこんな事になってんの?オレ、アンタを怒らせるような事、なんかした?)
 ぐるぐると頭の中で問い掛けながらハボックは圧し掛かる男を見上げる。己を見つめる常盤色からはその答えを見つけられずハボックが口を開こうとした時、ガツンと奥を突き上げられ尋ねる言葉が悲鳴に変わった。
「ヒィッ!痛ぁッ!」
 狭い肉筒を乱暴に押し広げられ、信じられない程の奥を犯されハボックは激痛に喘ぐ。ガクガクと身を震わせハボックは涙に霞む瞳でヒューズを見つめた。
「中、佐っ」
 下肢から真っ二つに裂かれていくように錯覚するほどの痛みがハボックの心も引き裂く。ガツガツと乱暴に突き上げられ掻き回されて、ハボックはボロボロと涙を零した。
「やめ、て……っ、中佐、やめて……ッ」
 気に入らない事があるならはっきり言ってくれればいい。こんなのはあんまりだ。
「なん、で?なん――――ヒアアッ!!」
 問い掛けようとすれば抽挿が激しさを増す。ベルトで拘束された手首が擦れ、強引に開かれ初めて男を迎え入れた蕾が今にも裂けてしまいそうでハボックは髪を振り乱して悲鳴を上げた。
「痛いッ、アアアッ!」
 激痛のあまり考えることもままならない。ただただ悲鳴を上げ続け、ヒューズの突き上げのまま体を揺さぶられていたハボックは己の奥底を犯す楔がググッと膨れ上がるのを感じた。
「や……っ」
 それが意味する事を察してハボックは怯えた目でヒューズを見上げる。見返してくる常盤色が苦しげに歪められたと思うと、噛みつくように口づけられた。
「ッッ!!」
 それと同時に最奥を抉った楔が弾けて内壁に熱を叩きつける。
「――――ッ!ッッ!!」
 最奥を熱く焼かれてハボックは目を剥いた。悲鳴すら封じられてハボックは見開いた瞳からボロボロと涙を零した。
(嫌だ)
(こんなの、イヤだ)
(こんな風にオレん中にアンタの痕を残すなんて)
(ひどい)
(酷いよ、中佐)
(中佐)
(ちゅうさ)
 ブルリと体を震わせたヒューズが唇を離す。ハアハアと息を弾ませながら二人は何も言わずに見つめ合った。
「…………」
 ヒューズが黙ったまま汗で額に貼りついたハボックの金髪を指先で払う。そうして唇で涙を拭うとさっきまでの荒々しさが嘘のように優しく口づけてきた。
「ッ!」
 ビクッと震えてハボックは涙に濡れた瞳で間近に迫るヒューズを見つめる。今なら答えを得られるかと、僅かに唇が離れればヒューズに問い掛けた。
「なんで……?そんなにオレの事」
 キライ?と問われてヒューズが目を見開く。
「中佐……答えて」
 囁いて見つめるハボックをヒューズが食い入るように見つめたと思うと、不意に手を伸ばして拘束していたハボックの腕を解いた。長く拘束されて痛む腕をハボックはヒューズに向かって伸ばした。
「中佐」
 縋るように伸ばされた手を、だがヒューズは振り払う。
「アッ?!」
 そうしてまだ繋がったままだったハボックの躯を強引に俯せに返した。
「ヒィィッ!」
 みっちりと埋め尽くす楔に内壁を抉られてハボックが悲鳴を上げる。俯せにされた腰をグイと引き上げられ、ハボックは肩越しにヒューズを振り返った。
「中佐っ?!ヒャアッ!!」
 その途端ガンッと突き上げられ、ハボックは悲鳴を上げる。奥を突いた楔が入口ぎりぎりまで引き抜かれ再び最奥まで突き入れるを繰り返される度、注がれた白濁がグチュグチュと音を立て、泡立って零れた。
「アアッ!やだっ、やだァッ!」
 熱い内壁の肉襞を引きずり出すような激しい抽挿にハボックは息を弾ませて泣きじゃくる。好きな相手と一番近くにありながらその心が全く見えない事が、ハボックを深く傷つけた。
「中佐っ、ちゅうさァッ!!ヒィッ、ヒ――――ッッ!!」
 突き破られるのではと思うほど奥を突かれて、ハボックが悲鳴を上げて背を仰け反らせる。その背にヒューズの唇が触れるのを感じたのと同時に再び体の奥を灼かれて、ハボックは目を見開いた。
「あ……ああ……」
 ビクビクと震えながらハボックはキュンとくわえた楔を締め付けてしまう。そうすれば背筋を突き抜けた激痛にハボックの躯が一際大きく震えた。
「中――――」
(なんで?)
 最後まで答えを得られないまま、ハボックの意識は闇に飲まれていった。


2012/04/03


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