| いつか帰る場所であるように 第三十一章 |
| 「たい、さ…っ」 ベッドに優しく沈められてハボックは圧し掛かる男に腕を伸ばす。そうして届いた温もりを離すまいとするようにギュッと抱き締めた。 「ハボック」 甘いテノールが心を震わせてハボックを呼ぶ。ずっと聞きたかった呼び声にハボックはくしゃりと顔を歪めてロイを見つめた。 「そんな顔をするな」 ロイはそう言ってハボックの頬を撫でる。そうすればハボックはむずかるようにロイの手に頬を擦りつけた。 「だって…っ」 ロイが両親を殺したのかもしれないと判ってからもロイへの想いを捨てられなかった。投げ出すようにロイに身を任せるたび死んだ両親への罪悪感で心が張り裂けそうに痛んで。否定して欲しいと縋る想いで尋ねた言葉にロイが否定も肯定もしなかった時は、両親を殺したのは自分だと告げているのだと思って目の前が真っ暗になり足下の地面がなくなってしまったように思えたのだ。ずっと捜し続けてきた仇を両親の為にも殺さなくてはと思いながらも振りかざしたナイフではロイを傷つけることさえも出来なかった。出来ないままにロイの前から逃げ出し、あのままならそう遠くない将来に自らの命を絶たねばならないと思い詰めたかもしれないのに。 「怖かった。アンタが父さんと母さんを殺したのかもしれないって……。怖くて、でもアンタが好きなの、やめられなくて…っ、オレ…ッ」 「すまなかった……」 縋りついてくるハボックをロイはギュッと抱き締める。 「私はお前を過去から解放してやりたかった。……方法を間違ってしまったが」 昏い瞳で両親の仇を殺すのだと言ったハボックがたまらなかった。いつも明るく輝いている空色の瞳が憎しみに翳るのが悲しかった。ハボックをその憎しみから解き放ってやりたくて、でも真実を全て告げることは出来なくて。 「うん……今ならアンタの気持ち、判るっス」 ロイから告げられたあの日の出来事は少なからぬショックをハボックに与えた。不治の病に侵された母を助けるためとは言え、父が生み出した技術をテロリストに売り渡していた事実を知った時には一人の人間としての正義感がその行為を嫌悪さえした。だが。 ロイと出会った今なら父の気持ちを理解出来る。誰よりも愛している女性を救うために、父はなりふり構ってなどいられなかったのだ。たとえ誰かを傷つける道具として使われるかもしれないと判っていても、母を助ける為に自分の良心を犠牲にしたのだ。母を助けたならその時にこそ罰を受ける覚悟で。 ハボックの脳裏に仲睦まじかった両親の姿が浮かび上がる。子供のハボックが焼き餅を妬くほど二人は仲がよかった。焼き餅を妬いて拗ねるハボックに両親は笑って手を差し出したのだ。 『ジャン』 『ジャン、おいで』 そうして差し出された両親の腕の中に抱き締められるのが大好きだった。そんな自分を二人がおいていってしまったのだと思えば、詰る気持ちが起きないわけではない。 「ウォーレン夫人は本当はお前を連れていきたかったと言っていたよ。だが、お前が出かけていった事で神様がお前には生きろと言っているんだと思った、ともね」 「アンタに会う前ならどうして一緒に連れていってくれなかったんだって母さんを責めたと思うっス。でも、今はオレを置いていってくれてよかったって思う。置いていってくれたからアンタと会うことが出来たんスもん」 そう言って笑うハボックをロイはギュッと抱き締めた。 「そうだな」 抱き締めた温もりを確かめるように柔らかい金髪に頬を寄せる。 「そうだな」 あの時、自分はなにもすることが出来なかった。ただ彼女に乞われるままに家に焔を放ち、そうして幼いハボックから帰る場所を永遠に奪ってしまった。涙に濡れた空色の瞳が責めるように自分を睨むのに気づいた時、ロイはどれほど後悔したことだろう。混乱の中ハボックの姿を見失い、全てが灰に帰してしまった後もロイの心はあの場所から動けなかった。幾度となく戦渦をくぐり抜け、軍人としての功績を上げてもそれは変わらなかった。ハボックと出会って愛し合うようになり、そうして彼がウォーレン夫妻の息子で両親の仇をいつか討ちたいと心に誓っていると知った時、ロイは自分が死ぬことでハボックを深淵から救うことこそがなにも出来なかった自分がウォーレン夫妻の為に出来る唯一の事だと思ったのだ。でも、本当はそうではなかったのだと今なら判る。憎しみでは何一つ救うことは出来ない。幼いハボックがずっと求めていたのは愛し、愛されることだったから。 「ハボック……愛している…もう、どこにも行かせない」 「たいさ」 額にかかる金髪をかき上げ、そっとその顔を撫でながらそう告げれば空色の瞳が見開かれる。ハボックは嬉しそうに笑うとロイを引き寄せ自分から口づけていった。 「あっ……ぅんっ…っ」 肌を滑るロイの唇がハボックの白い肌に紅い花びらを散らしていく。チクリとした痛みの後にじんわりと広がる快感に、ハボックはピクピクと震えながら熱い吐息を零した。やがてその唇がほの赤く色づく乳首へとたどり着く。ロイはプクリと立ち上がった乳首の片方を口に含むと舌先でねっとりと捏ね回した。そうしてもう一方を指の腹で押し潰しては指先でキュッと摘みくりくりと弄る。そうすればハボックの唇からは絶え間なく甘い吐息が零れた。 「はあ…っ、あんっ……た、い…さぁ…っ」 びくびくと震えながらハボックはロイを呼ぶ。その甘ったれた舌足らずな声がロイの熱を煽り、ロイは執拗に真っ赤に熟れた乳首をもてあそび続けた。 「たいさ……むね、も、ヤダ…っ」 ハボックが嫌々と首を振って訴える。赤く熟れきった乳首に与えられる快感は強すぎて痛いくらいで、ハボックはロイが乳首を弄る度、その背を仰け反らせて喘いだ。 「アッ……ひっ、ぅんッ!」 ハボックが甘い声を上げながら悶えるのに答えるように、そそり立った楔からとろとろと蜜が零れる。しどけなく開いた脚の間でカチカチに堅くなった楔から零れた蜜は竿を伝い、淡い茂みを濡らして双丘の狭間へと滴り落ちた。 「ハボック……」 ロイは胸から唇を離すと甘い声を上げるハボックの顔をうっとりと見つめる。目尻を紅く染め、快楽に空色の瞳を潤ませるハボックはとても可愛らしく色っぽかった。 「や…ッ、見るな…ッ」 ハボックはロイの瞳が食い入るように自分を見つめていることに気づいて腕で顔を隠す。ロイはハボックの手首に口づけて言った。 「隠すな……お前が感じているのを全部私に見せてくれ」 「そんな……恥ずかし…ッ」 どれほど自分がイヤラシい顔をしているかと思えば、ロイの前に顔を晒すことなど出来るはずもない。嫌々と首を振り、隠す腕に力を込めるハボックの腕に舌を這わせながらロイは言った。 「見せて………なにもかも全部私のものにしたいんだ」 嫌か?と不安そうな声で聞かれてハボックは慌てて別の意味で首を振る。それからおずおずと外した腕を伸ばしてロイの首に回すとそのままロイを引き寄せた。 「たいさ……」 そう呟くように呼んで唇を合わせる。焦点が合わないほど近づいてしまえば見られていてもそんなに恥ずかしくないかも、と思ったハボックは、だがすぐに自分の間違いに気づいた。 「あ……」 視界いっぱいに広がる黒曜石の瞳。その瞳に自分の全てがさらけ出されてしまうようで、ハボックは慌ててギュッと目を閉じた。 「ハボック」 そんなハボックをロイは愛しそうに見つめる。乳首を弄っていた手を滑らせると、蜜を零す楔に指を絡めた。 「……っ!」 やわやわと数度柔らかく刺激するとその蜜の流れを辿るように根元へと指を滑らせる。そうして蜜でしとどに濡れた蕾に指をツプリと潜り込ませた。 「…く、ぅ…っ」 狭い秘肉を割って潜り込んでくる指先にハボックは低く呻いて身を強張らせる。この先にあるのが目も眩むような快感だと知ってはいても、やはり本能的に身の内に入り込んでこようとするものに対して、体が竦んでしまうのは止められなかった。 「ハボック……」 ロイがハボックの緊張を解こうとするように優しく名前を呼ぶ。啄むように口づけながら潜り込ませた指をゆっくりと掻き回した。 「んっ……は、あ……」 くちゅくちゅと水音が響いてハボックは羞恥に顔を染める。それでも必死にロイの口づけに答えていればいつしか体の強張りは消え、ハボックはゆらゆらと腰を揺らし始めた。 「たいさ……」 ハボックは荒い息の合間にロイを呼んでその体を抱き締める。唇を触れ合うばかりに近づけて囁いた。 「も…挿れて……はやく、大佐とひとつになりたい…っ」 「ハボック…っ」 甘く告げられる言葉に逆らえる筈もなく、ロイは掻き混ぜていた指を引き抜くとハボックの脚を抱え上げる。戦慄く蕾に滾る自身を押し当てればハボックの体がピクリと震えた。 「たいさ、はやく…ッ」 待ちきれないと言うようにハボックが腰を突き出すようにしてヒクつく蕾をロイの楔に擦りつける。まるで自ら飲み込もうとするかのような淫猥な動きに、ロイはたまらずグイと腰を進めた。 「アッ……アア────ッッ!!」 自分から貫かれることを望んではいても、ずぶずぶと押し入ってくる熱い塊に無意識に悲鳴が零れてしまう。だが、その悲鳴は甘く濡れて、苦痛よりも快楽を感じている事をロイに知らせていた。 「ヒアアッ!アアッ!!たいさっ、……たいさァッ!!」 ガツガツと突き挿れるたびハボックが甘い悲鳴を上げて悶える。ロイを迎え入れた内壁は熱く蠢いてロイの楔に絡み突き、奥へ奥へと誘い込もうとしているようだった。 「ハボック……ハボック…ッ」 「アアッ……た…さ…ッ!!」 激しく突き上げられ揺さぶられて、ハボックは耐えきれずに白濁を迸らせる。達してビクビクと震える体をロイは容赦なく更にきつく攻めたてた。 「ヒィィィッッ!!」 過ぎる快楽にハボックは目の前が真っ白になって意識を飛ばしかける。だが、次の瞬間ガツンと奥を抉られて、高い悲鳴と共に意識を引き戻された。 「た…っ、………待っ…」 あまりの激しさについていけず、何とか押し留めようとはしたものの言葉が声にならない。抗議するようにロイの背に縋った手がその背を傷つけても、ロイを煽りこそすれ止める役には全くたたなかった。 「ひゃあああっっ!!」 ビクビクと全身を震わせてハボックは再び熱を吐き出す。快楽に震える体の最奥を穿つと、ロイは熱を叩きつけた。 「……っっ!!」 ロイの与える熱の熱さと激しさにハボックは声にならない悲鳴を上げて背を仰け反らせる。小刻みに痙攣した体からフッと力が抜けると、今度こそハボックは意識を失った。ロイはガクリと沈み込むハボックの体をかき抱き唇を合わせる。何度も深く口づければ、ハボックがゆっくりと目を開いた。 「た……さ……」 涙に濡れた空色の瞳がロイを見上げる。その瞳こそが自分にとって帰るべき空の色だと思いながらロイはハボックを抱き締めた。 「愛している、ハボック……どこにいても何をしていても私にとって帰る場所はお前のところだけだ」 だから私を呼んでくれ、ロイはそう言ってハボックの頬に口づける。ハボックは優しいキスに擽ったそうに目を細めて答えた。 「オレも……オレの帰る場所もアンタだけ…。アンタだけだから……ずっとアンタを呼ぶよ。だからアンタも」 オレを呼んで。 そう言って笑う空色をロイは二度と離さないときつくきつく抱き締めた。 2009/08/08 |
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naoさまからの23万打リクで「ロイハボで両思いになってから、ハボにとってロイが自分の家族の敵だったというのを。設定は戦争中ハボの親もしくは兄弟が軍人に殺されてしまって、平和を願うのと同時に、かたきを捜しながら軍人になり、ロイの下に配属になって、色々あってお互い両思いに。その後ロイが家族を殺した軍人だと気づいて、2人がすれ違いながら、最後はハッピーエンド。という感じで。両思いまでの色々や、すれ違いなどはお任せします」でございました。 うわーっ、終わったーッ!って叫んじゃってすみません(汗)いやもう、実は途中でぐるぐるしちゃって書けないかも…ッ、って思ったことが少なからず(苦笑)こんなに悩みながら書いたのは初めてかも。読み手だったら絶対楽しみな話だと思うのですが、自分で書くとなると力量が足りず…orz 自分なりに頑張って書いたつもりです。少しでも気に入ってくださる部分があると嬉しいです。 naoさま、素敵なお話をリクエスト、ありがとうございますvこんなものでよろしければお持ち帰りくださいませ。 |