菫青石の恋 〜 second season 〜  第五十二章


「……ッ、ぅア……ッ」
 廊下に座り込んだハボックは零れそうになる声を必死に押し殺す。埋め込まれたローターに熱い肉襞を抉るように狭い後孔を押し開かれて、少年は沸き上がる快感にガクガクと震えた。
「ロバ……ッ、────ッ、クゥ……ッ」
 男を呼ぼうと口を開きかければイヤラシい声が口をついて出そうになる。ギュッと唇を噛み締め小刻みに震えるハボックの腕を、ロバートは乱暴に掴んでその細い体を引き上げた。
「ヒッ!」
「どうした、ジャン。よろけたのか?」
 乱暴な仕草でハボックの体を引き寄せるロバートを他の患者が不思議そうに横目で見ながら通り過ぎる。自分を見下ろす冷たい視線に震えたハボックは、大きな声ではっきりと答えた。
「ちょっと立ち眩みみたいっス。ごめんなさい、ロバート」
「仕方ないな、私に掴まって歩きなさい」
  そう言って歩き出すロバートの腕をハボックは慌てて掴む。男の歩調に合わせて足を踏み出す度ローターが柔肉を抉って、背筋を這い上る快感に目の前がチカチカした。それでも何とか駐車場まで戻ってくると、倒れ込むように助手席に腰を落とす。その衝撃で脳天を快感が突き抜けて、短い悲鳴を上げたハボックはぐったりと座席に沈み込んだ。
「行くぞ」
 車を回って運転席に腰を下ろしたロバートが言う。だが、それに答える気力ももう残っておらず、ハボックは浅く息を弾ませてシートに身を預けていた。
「────」
 そんなハボックをロバートは冷たい目で見下ろす。何も言わずにアクセルを踏み込み車を発進させた。エンジンの音が低く鳴り響く車の中、少年の熱く湿った息遣いが聞こえる。一刻も早く家についてこのローターを何とかして欲しいとハボックが思いながらシートに凭れていると、不意に車が停まった。
「…………ロバート?」
 家に着くにはまだもう少しかかる筈だ。不思議に思ってハボックは男を呼ぶ。閉じていた目をうっすらと開ければ、そこはどこかの路地裏だった。
「…………?」
 どうしてこんなところに停まっているのか判らず、ハボックは眉を顰める。すると、ロバートが運転席から降りて助手席側に回ってきた。
「ロバート……?」
ぐったりとシートに体を預けたまま、ハボックは尋ねるように男を呼ぶ。だが、ロバートはそれには答えずハボックの体を抱き上げると、後部座席の扉を開けハボックと二人中に腰を下ろした。
「ロバート……?なにを」
 するつもりとハボックが聞くより早く、ロバートはハボックのボトムを下着ごと引きずり下ろす。ギクリと身を強張らせる少年を抱き上げると、男は背後から抱え込むようにして己の腰の上に細い体を跨らせた。
「な……ッ?」
 大きく開かされた双丘の狭間、熱く堅い塊が押し当てられる。そうなって漸く男がやろうとしていることに気づいて、ハボックは必死に身を捩った。
「いっ、いやッ!やめてッッ!!」
「本当は病院にいる時からこうして欲しかったんだろう?」
「そんな事ッッ!!」
 耳元に低く囁く声にハボックは必死に首を振る。身を捩り、押し当てられる凶器から逃れようともがけばロバートが低く笑った。
「そんなに尻を振り立てて……急かさなくてもちゃんと挿れてやる」
「違うッ!!やめてッ、嫌ッ!」
「家に着くまで我慢出来ないんだろう?ずっとイヤラシい声を上げっ放しだ」
「違うったらッ!────ヒ」
 細い脚を大きく広げる男の手がハボックの躯をそそり立つ己の欲望の上に固定する。切っ先が小さな蕾を割り開いてゆっくりと押し入ってくるのを感じて、ハボックは恐怖に目を見開いた。
「嫌……待って……ッ、中にローターが……ッッ!!」
 後孔の中でローターが動いている。そこに強引に押し入ってくる塊に、ハボックは空色の瞳を見開いた。
「嫌ッ!!やめてッ!!ロバート、嫌ッッ!!」
「私の好きにしていいと言ったのはお前だろう?ジャン」
 ゆっくりと少年の中に押し入りながら男は囁く。
「まったく、マリアの前ではしゃんとしろと言ったのに、もしマリアが家に戻ってきたらどうするつもりだったんだ?」
「ごめ……ッ、ごめんなさい、ロバートッ!!ごめんなさ……ヒィィィッッ!!」
 押し入ってきた楔が埋め込まれていたローターを奥へと押し込む。ロバートは半分程入ったこところでそれ以上中に進めない事に、苛立たしげに眉を顰めた。
「くそッ、入らんぞ」
「無理ッ!無理ィッ!!壊れるッ、壊れ……ッ、ヒアアアアアッッ!!」
 苦痛の悲鳴を上げる細い躯をロバートは容赦なく攻め立てる。背を仰け反らせ、ガクガクと震えるハボックの幼い性器がリングにその根本を戒められて真っ赤に膨れ上がっているのを見下ろして、ロバートはクッと喉奥で笑った。
「無理?こんなにしておいて、よく言うな、ジャン。本当は善くて堪らないんだろう?」
「違……違う……ッ、ヒィィッッ!お願い、赦して……ッ!」
 苦痛と同じくらいの快感に苛まれて、少年の細い躯が身悶える。一際高い悲鳴とも嬌声ともつかぬ声を上げて、ハボックの躯が硬直した。
「────ッッ」
 涙に濡れた空色の瞳が大きく見開きハボックの喉がヒクリと鳴る。それと同時にドクドクと注ぎ込まれる熱にピクピクと少年の躯が痙攣した。
「…………」
 細い躯にたっぷりと熱を注ぎ込んで、ロバートは息を吐き出す。ぐったりと胸に凭れかかってきた躯を押し退けるように楔を引き抜くと、ハボックの躯をシートに投げ出した。
「マリアの前でまた今日と同じようなことをしてみろ、次はマリアを殺すぞ。判ったか、この淫乱め」
 口汚く言い捨ててロバートは己の服を整える。ハボックをそのままに運転席に戻ると、ハンドルを握りアクセルを踏み込んだ。
「……母さ……」
 下肢に重い痛みを抱えてぐったりとシートに横たわったハボックの頬を、涙が止めどなく零れて落ちた。


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