この作品は「菫青石の恋 第四十三章」から派生する別バージョンのエンディングで、死にネタになります。ハッピーエンドのエンディングを期待する方にはあまりおすすめできませんし、四十三章の二人のまま幸せに暮らして行く未来を望まれる方には絶対にお薦めできません。その点、ご理解の上お読み下さい。また、読後の苦情に関しましては一切お受けできませんのでご了承下さい。 |
菫青石の恋 〜 Another ending 〜 |
| 「マ、スタングさん…っ、アッ…アアッ!!」 深く穿てばハボックが背を反らして喘ぐ。びくんと大きく震えるとその中心から熱を吐き出した。 「アアアッッ!!」 悲鳴を上げて逃げをうつ体を引き戻してロイは激しく抽送を繰り返す。ロイの背に回したハボックの手が苦し紛れに何度も爪を立てたがその痛みすらロイを止める役には立たず、むしろロイの熱を煽った。 「ヤッ…も、やめ…っっ」 涙を零して喘ぐハボックの表情にぞくりと身を震わせるとロイはハボックの中に熱を吐き出す。ギュッと抱きしめてくるロイに、ハボックはホッと息をつくとロイの体を抱き返した。 「マスタングさん…」 熱い吐息と共に名を吐き出して濡れた瞳で見上げてくるハボックにいまだ埋めたままのロイが勢いを取り戻す。ぎくりと身を強張らせるハボックの体を引き戻してその耳元に囁いた。 「すまん、ハボック、もう少しだけ…っ」 「ちょ…も、ムリっ!」 ムクムクと頭をもたげるロイにハボックは逃れようともがく。だが、頬を染めてもがくハボックの姿はロイを煽るばかりだ。 「やめっ…アアッ!!」 「ハボック…ハボ…っ」 ロイは啼きながら逃げようとする体を引き戻すと欲望のままに揺さぶり続けたのだった。 「ハボック…悪かった」 ロイはベッドに腰掛けてそう言うとブランケットから覗く金髪を撫でる。だが、答えるどころか顔も見せてくれようとしないハボックにため息をついた。 「ハボック」 「…しりません」 くぐもった声がようやく答えてくれてロイはパッと顔を明るくする。だが、声に出しては神妙な声音のままハボックに言った。 「私が悪かった。だから出てきてくれ」 「もう、ムリっつったのに」 ハボックはそう言うとブランケットの影から目だけを覗かせる。恨みがましく見上げてくる空色にロイはすまなそうに笑ってみせると言った。 「悪かった。お前があんまり可愛いから、つい…」 「なんスか、可愛いって」 ハボックはそう言ってロイを睨む。だが自分に向けて差し伸べられたロイの手を掴むとベッドに身を起こした。 「辛いのはオレなんスからね」 ハボックはそう言うと気だるげに髪をかき上げる。その仕草にロイは再びハボックをベッドに押し倒したくなったが、流石にそれはヤバイだろうとグッとこらえた。ハボックはそんなロイの想いには気付きもせずホッと息を吐き出すと長い脚をベッドから下ろす。ようやくじっと見つめてくるロイの視線に気付いて顔を赤らめると言った。 「もうっ、見てないでくれません?恥ずかしいじゃないっスか」 「別に今更だろう?お前の体なら隅々まで知って――」 「マスタングさんっ!」 怒声と共にバフンと枕を投げつけられてロイは慌てて口を噤む。 「朝飯の用意が出来てるからっ」 ロイはそう言うと赤い顔で睨んでくるハボックを残して寝室を飛び出したのだった。 温めたパンを丁度テーブルに置いた時、ハボックがダイニングに入ってくる。Tシャツにジーパンをつけたスラリと背の高いハボックの姿に目を細めるとロイは手を伸ばした。 「おはよう、ハボック」 「…おはようございます」 まだほんの少し機嫌は悪そうながらもとりあえず返事を返してくれた事にホッとすると、ロイはハボックの頬に口付ける。目尻を染めて睨んでくるハボックにロイは微笑むとテーブルについた。向かいの席に腰を下ろしたハボックは「いただきます」と言うと食事を始める。ハボックはパンを齧りながら聞いた。 「マスタングさん、今日は会食が入ってるって言ってましたよね?」 「ああ、あれな。キャンセルした」 「えっ、そうなんスか?」 さらりと言ってのけるロイにハボックが驚いて声を上げる。 「だってそれ、南部だかどっかだの司令部から来てる人って言ってなかったっスか?キャンセルなんてしたらヤバイんじゃ…」 「構うもんか。食事をするならお前と食いたい」 「オレとなら毎日食ってるじゃないっスか。会食だって仕事のひとつなんでしょ?大体キャンセルってそんなことよく中尉が承諾したっスね」 そう聞けばロイがスッと目を逸らした。そんなロイの顔をじっと見つめてハボックが言う。 「キャンセルしたわけじゃないんスね?」 「トンズラもキャンセルもさして変わらんだろう?」 「トンズラなんてしないでちゃんと仕事してきて下さい。それに今夜は帰ってきてもらってもメシ、ありませんから」 そう言うハボックにロイが目を瞠った。 「メシがないってどういうことだ?」 「マスタングさん、帰りが遅いと思ったからブレダとメシ食う約束してるんスよ」 それを聞いた途端、ムスッと黙り込んでしまったロイにハボックが首を傾げる。 「どうかしたっスか?」 「お前、私と食事をするよりブレダ少尉と食事をする方がいいんだな」 「はあ?何言ってるんスか」 「私は付き合いたくもない会食で顔も見たくない相手と食事をしてくると言うのに」 「だってそれは仕事…」 「お前が家で待っていてくれると思えば少しは励みになるというのに、お前はその間少尉と楽しく食事をするというわけだ」 「あのねぇ…」 拗ねてムゥと唇を尖らせるロイにハボックは呆れたため息をついた。やれやれと肩を落とすと苦笑する。 「わかりましたよ。家で待ってますから会食行って来てください」 「少尉との食事は?」 「断わります」 そう言えばパッと顔を輝かせるロイにハボックは顔を引き締めた。 「その代わり!ちゃんと会食出て下さいね」 「判ってるとも」 そう答えるとモリモリと食事を再開するロイをハボックは優しく見つめていたのだった。 「え?都合つかなくなったのか?でも大佐、いないんだろう?」 ブレダは上司のスケジュールを思い起こしながら聞く。受話器の向こうでハボックが困ったように答えた。 『自分が出たくもない会食に出てる間にオレがブレダと楽しくメシ食うのが嫌みたいでさ』 「はあっ?なんじゃそりゃ。」 『オレが家で大人しく待ってりゃちゃんとサボらずに行くっていうし、だから今回はごめん、ブレダ』 じゃあまた、と言う声を最後に電話が切れる。ブレダは呆れたように受話器を見つめるとフックに戻した。丁度その時ロイがホークアイと一緒に司令室に入ってくる。ブレダは執務室の扉へと歩くロイに向かって言った。 「大佐って意外と大人気なかったんですね」 そう言えば眉をひそめてロイが立ち止まる。一体何なんだ、と言う顔をするロイにブレダは続けた。 「ハボックに俺とのメシをキャンセルさせるなんて」 「私がいない間にハボックにちょっかい出そうとするほうが悪い」 「ちょっかい、って…俺とアイツは単なる友人ですよ?」 「ハボックと二人きりで食事だなんて」 ムスッとしてそう言うと執務室に消える背中をブレダはあっけに取られて見つめる。 「なんつーガキくせぇ…」 呆れたように呟くブレダに二人のやり取りを見ていたホークアイがくすくすと笑った。ブレダは情けない顔でホークアイを見ると訴える。 「信じられないと思いませんか、中尉。しょうもないヤキモチ妬いて友人同士の食事をキャンセルさせるなんて。大佐があんな事言うなんて思いもしませんでしたよ」 「あれがホントの姿なのかもしれなくてよ?」 「えーっ、それじゃ俺、これから先ハボと飲みに行けないじゃないですか」 「大佐も誘ったらいいのよ、飲み代持ってもらえるじゃない」 ホークアイが面白そうに言えばブレダが顔を顰めた。 「目の前でイチャイチャされた日にゃたまりませんよ」 そう言いながらもブレダは笑う。 「まあ、昔の澄ました大佐より人間くさくていいですけどね。それにハボのことも大事にしてくれてるみたいだし」 ブレダはそう言うと辛い思いばかりしてきた友人が今、幸せであることを嬉しく思うのだった。 |
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