傍迷惑な恋  第十八章


「あ……」
 脚を大きく開かれその奥底を覗かれて、ロイは羞恥に顔を染める。それでも抵抗することなくなすがままにされるロイに、ハボックの胸はドキドキと高鳴った。白い双丘に手を添えて慎ましやかな蕾を割り開く。ごくりと唾を飲み込んでそっと舌を突き出すとツンと小さな口をノックした。
「ひゃっ」
 自分でもそうそう触れる場所でないところに濡れた感触を感じてロイの体がビクンと跳ね上がる。それに構わずハボックはつついた舌先を蕾にグイと押し入れるとぴちゃぴちゃと舐め回した。
「あっ、やっ、やあっ」
 ロイは思わずそう声を上げてベッドの上でずり上がろうとする。だが、ハボックの力強い手がそれを許さず、むしろ更に奥へと舌が侵入してきた。
「ああ……っ、い、やあっ」
 這い回る舌の感触とピチャピチャと言う水音が羞恥を煽る。ふるふると首を振って喘ぐロイの蕾に、ハボックは指を一本差し入れた。
「い……ッ?!」
 そんなところに指を挿れられてロイの体が強張る。ハボックは宥めるように脚を撫でながら差し入れた指をぐちぐちとかき回した。
「ああ…っ、ハボ……ぉッ」
「大丈夫。大丈夫っスから……力抜いて、大佐」
 ハボックはそう言ってロイの楔に舌を這わせる。ゆっくりと沈めた指をかき回しながら少しずつ指の数を増やせば、ロイの唇から零れる吐息が荒くなった。
「は……んんっ、も……やぁっ」
 恥ずかしくて恥ずかしくて堪らない。ロイは涙を滲ませて首を振る。艶やかな髪がシーツに当たってパサパサと音を立てた。
「ハボ……っ、それ、もうヤダっ」
 弾む吐息の合間にロイはハボックに訴える。引き剥がそうとするように金色の髪を引っ張ればハボックが漸く顔を上げた。
「ちゃんと濡らして解さないと痛い思いするの、大佐だから」
 そうハボックが言ったがロイはやはり首を振る。腕を伸ばしてハボックの体にしがみついて言った。
「もう、平気っ、だからハボ、早くシてっ」
 正直これ以上繰り返されたら羞恥と恐怖で逃げ出してしまいそうだ。そんな気持ちを振り払うようにギュッとしがみついてくるロイに、ハボックももう耐えきれずにロイの体を抱き返した。
「ちょっと辛いかもしれないっスけど……できるだけ優しくしますから」
「うん、判ってる、からっ、早く……ッ」
 そう振り絞るように言う唇にハボックはキスを落とす。そうしてロイの白い脚を大きく開くと胸につくまで押し上げた。
「挿れるっスよ?」
 囁く声にロイが微かに頷く。たっぷりと濡らされ解された蕾に熱く堅い固まりが押し当てられて、ロイの喉がヒュッと鳴った。その瞬間、グッと蕾を押し開いてハボックの楔が侵入してくる。指とは比べものにならないくらい熱くて大きな塊にロイは身を仰け反らせて悲鳴を上げた。
「ヒ……ヒアアアアッッ!!」
「たいさ……ッ」
「アアアッ!!おっき……ッ、無理ッ!入んな……ッ!!」
 全身を強張らせて震えるロイの背をハボックは優しく撫でる。何度も啄むように口づけて言った。
「たいさ……力抜いて、大丈夫……大丈夫だから、オレを見て、オレを信じて……ッ」
 首を振って泣き悶えるロイにハボックが何度も何度も囁く。漸くその声がロイに届いて、見上げてくる濡れた黒曜石の瞳にハボックは優しく笑った。
「愛してます、大佐……これまでもこれからも」
 ずっとずっと、と囁く声にロイの瞳に新たな涙が膨れ上がる。キュッとハボックに抱きついて言った。
「私も……私も、ハボック」
「たいさ……ッ」
 その言葉にキュンと胸を締め付けられて、ハボックは荒々しくロイに口づける。散々に口内を嬲って唇を離すとロイを見つめて言った。
「動きますよ」
「うん……きて、ハボ……」
 言えば優しい笑みが返ってハボックの胸を熱くする。ハボックはロイの脚を抱え直すとゆっくりと突き上げ始めた。グッと体の奥深くまで突き入れられたと思うと、ずるずると入口まで引き抜かれる。そのたびに熱く蕩けた秘肉をこすられて、ロイの唇から甘い声が零れた。
「ああ……っ、ハボ……ッ」
「たいさ……たいさ……」
 ハボックは紅く染まったロイの顔を見下ろしながらリズミカルにロイを突き上げる。一際甘い声が零れた箇所を集中的に突き上げればロイが高い嬌声を上げた。
「ひゃああんッ」
「ここ……ここがイイの?たいさ……」
「アアッ?!やあ…ッ、な、んでッ」
 ハボックの動きに合わせて快感が背筋を突き抜ける。ふるふると首を振って身悶えていたロイは、何度目かに突き上げられた拍子に熱を吐き出していた。
「アッ…アッ、アア───ッッ」
 びゅくびゅくと粘性のある液体が二人の腹を濡らす。それと同時にきゅうきゅうと締め付けてくる蕾に、ハボックは身を震わせるとロイの中へと熱を叩きつけた。
「あ……あ…」
 身の内を熱く濡らす液体にロイの目が見開かれる。じんわりと内側から焼かれるような感触に、ロイはビクビクと震えてハボックの体に縋りついた。
「たいさ…ッ」
 縋りついてくる細い体を抱き締めてハボックはロイの唇を荒々しく塞ぐ。きつく舌を絡めてゆっくりと唇を離せば、蕩けた黒い瞳がうっとりとハボックを見上げた。
「ハボ……」
「たいさ……」
 見上げてくる瞳に微笑み返してハボックは桜色に染まったロイの頬を両手で優しく包み込む。零れた涙を拭うように愛しげに何度も撫でればロイが嬉しそうに笑う。同じようにハボックの頬に手を伸ばして言った。
「嬉しい、ハボ……こんなに幸せでどうしよう……」
「たいさ」
 そんな事を言うロイに堪らない愛おしさが湧いてくる。ハボックはロイの体をギュッと抱き締めてその耳元に囁いた。
「どうしようもなにも……その幸せに身を任せればいいんスよ。いくらでも、大佐が望むだけあげますから」
「……うん」
 そう言われてロイは幸せそうに笑う。そうすればハボックの心も温かく満たされて、二人は何度も何度も口づけあった。

「あ、おはようございます、大佐、ハボック少尉」
 ガチャリと司令室の扉が開いて姿を現した二人にフュリーが書類から顔を上げて言う。その二人の手がしっかりと握られているのを見て、眼鏡の奥の瞳をパッと輝かせた。
「あれっ?もしかしてお二人」
 そう言って二人の顔を見ればハボックとロイが照れたように顔を見合わせる。普段は鈍いフュリーも流石に事情を察して声を弾ませて言った。
「うわあ、ついに両想いになったんですねっ、おめでとうございますっ!」
「へへ、ありがと、フュリー」
「何かお祝いしないとっ」
「そんな……気持ちだけで十分だよ、フュリー曹長」
 自分の事のように喜ぶフュリーに恥ずかしそうにロイが言う。以前心ならずも引っかき回してしまった感があるだけに、フュリーは収まるところに収まった二人に心底安心して言った。
「そうだ、お揃いのマグカップなんてどうですか?司令部で使えるように」
 そう言えばロイが嬉しそうに笑う。その時、司令室の扉が開いてヒューズとブレダが入ってきた。
「おお、お二人さん!夕べは熱い一夜を過ごせたかいっ?」
 そんな風に言われてロイが真っ赤になる。ハボックは庇うようにロイを抱き締めるとヒューズを睨んで言った。
「そんな下品な言い方しないでくれないっスか、中佐」
「ふっふっ、その調子だと随分と楽しんだようだなっ」
 にんまりと笑って言うヒューズにハボックが蹴りを繰り出す。傍目にはじゃれあっているようにしか見えない二人の様子にげっそりとため息をついて自席に腰を下ろすブレダにファルマンが言った。
「随分疲れてますな?大丈夫ですか?」
 そう尋ねればブレダが力なく笑う。
「夕べは大変でよ。ハボックと大佐がくっついたのは俺のおかげだってすんげぇテンション上がっちゃって、一晩中つきあわされて」
 太陽が黄色い、と呟くブレダにファルマンが「お気の毒に」と苦笑する。ちらりとヒューズを見て言った。
「もしかしてこれからこっちにくる度あの調子ですかね?」
「勘弁してくれ……」
 ブレダがうんざりと言った丁度その時、ホークアイがファイルを手に司令室に入ってくる。ギャアギャアと喚きあうヒューズとハボック、顔を赤らめて話すロイとフュリー、ぐったりと疲れた様子のブレダとファルマンを見て眉を顰めた。
「朝から随分と賑やかですのね」
「おお、リザちゃん!」
 その声にヒューズがパッと振り向く。ニッカニッカと満面の笑みを浮かべて言った。
「聞いてくれっ、ついにワンコとロイが両想いにだなっ」
「それはおめでとうございます。ではもう心残りもありませんわね。バウアー少佐が首を長くして中佐のお帰りを待ってますから今すぐセントラルに向かわれた方がいいと思います。…ブレダ少尉!」
「えっ、ちょ…っ、リザちゃんっ、俺の話はこれから───」
「ああ、はいはい中佐。今から行けば丁度セントラル行きの列車に間に合いますから」
 話終わってないと喚くヒューズをブレダが引きずるようにして司令室を出ていく。パタンと扉が閉まって静けさが戻るとホークアイはホッとため息をついた。
「では、マスタング大───」
「ハボック、フュリーが私とお前にお揃いのマグカップを買ってくれるんだそうだ」
「えっ、本当かっ、フュリー」
「ええ、僕からのささやかなお祝いです」
「やったーっ、実はオレ、この間ジョージーでこれいいなぁ、っていうマグカップ見たんだよー」
「あ、だったらそれにしますか?どうですか?大佐」
「私はハボックがいいというなら……」
 自分の存在を無視して会話に花を咲かせる三人にホークアイは眉を顰める。
「マスタング大佐」
「なに言ってるんスか、オレだけじゃなくて大佐もいいと思わなかったらダメっスよ」
「じゃあ三人で見に行きましょうよ。今夜はどうですか?大佐」
「うん、今夜なら特に予定もないからみんなで───」
「マスタング大佐ッ!!」
 ビリッと空気が帯電したように震えて、流石に三人が口を噤む。恐る恐る振り向けばホークアイが目を吊り上げてこちらを見ていた。
「お話中申し訳ありませんが会議の時間です」
 かなりの嫌みを込めてそう言えばハボックが眉を下げる。
「えっ、大佐、会議なんスか?何時まで?」
「あ、ええと、たしか午前中いっぱい……」
「そんなぁ、オレ、午後は演習なんスよ?」
「じゃあすれ違い?夕方まで会えないのか?」
 淋しいっ、と手を取り合う恋人同士にホークアイは震える拳を握り締めた。
「馬鹿なことを言ってないでください。既に5分遅刻です!」
「あっ、ハボっ」
「たいさっ」
 頬をヒクつかせてホークアイは言うとロイの襟首をむんずと掴んで司令室を出ていく。引き裂かれる切なさに涙を滲ませるハボックとロイを見て、ファルマンがポツリと言った。
「もしかしてこれからずっとあの調子なのかね」
「可哀想ですよねっ、せっかくラブラブなのにっ」
 それに答えて拳を握り締めるフュリーをファルマンは信じられないものを見るように見る。
(この先この司令室はどうなってしまうんだろう……)
 大きな不安を抱えつつ、ファルマンはそっとため息をついたのだった。


2009/10/23


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翠雨さまからリク頂きました「実は両思いなのに気づいていない二人に振り回される東方司令部マスタング組(H有)」でございました。なんだか途中からは傍迷惑なのは一体誰なんだ状態になってしまいました。ブラックハヤテ号も出そうと思ってたのに出しそびれちゃったし(汗)それもこれも傍迷惑な髭オヤジのせい(苦笑)ともあれ可愛いバカップル目指して書いたつもりです。少しでもお楽しみ頂けていたら嬉しいですv