千年樹 〜eternal green〜 (第十章)


「ちょ、ちょっと待って…っ」
寝室へ場所を移して途端にベッドに押し倒されたハボックは、圧し掛かってくるロイをぐいと押し返す。思いがけない抵抗に少しムッとするとロイが言った。
「なんだ、誓いを破る気か?9年間眠る事になるぞ」
「じゃなくて、灯りがついたまま――」
「誓いを守るのに灯りがついてるかどうかなんて関係ないだろう。さっさと誓いを実行しろ。9年間眠りたくなければな」
 そう言ってさっさと服を脱がし始めるロイを睨みあげるとハボックは言う。
「こんな明るいとこで出来るわけないっしょ。つか、それくらいなら9年間眠った方がマシっスよっ!」
 ぐいぐいとロイを押し返すハボックにロイはニヤリと笑った。
「眠るお前の体に9年かけていろいろ覚えこませるのも楽しいかもしれんな」
 やってみるか、などと顔を寄せて囁くロイにハボックは一瞬絶句するとわなわなと唇を震わせる。
「っとに、このエロオヤジっ!!」
 そう言ってロイを押し返そうとしたハボックは、ロイが真面目な顔をして見つめているのに気がついた。思わず押し黙ったハボックにロイは苦笑して言う。
「そう言うな、嬉しくて舞い上がっているんだ、私は」
 ロイの言葉にハボックは目を瞠った。
「ずっと待っていたんだからな、お前が本当に私のものになるこの日を。だからお前の全てをよく見ておきたいんだ」
 このままでいいだろう、と囁くロイにハボックは拒む術などあろう筈もない。おずおずと頷くハボックに嬉しそうに笑うとロイはハボックの服を脱がしていく。灯りの下で全てを曝け出される羞恥に顔を真っ赤に染めるとハボックはギュッと目を閉じた。
「目は開けていろ」
 途端にロイの声が飛んでハボックはびくりと体を震わせる。それでも目を瞑ったまま開けようとしないハボックにロイがもう一度言った。
「目をあけるんだ、ハボック」
「だって…恥ずかしい…っ」
「お前の全てを見たいと言っただろう?目を開けろ、ハボック」
 3度目に言われてようやく目を開いたハボックにロイは満足げに笑うと、ハボックの顔を覗き込んだままその体に指を滑らせていく。鎖骨をなぞり肩を辿って敏感な脇腹へと指を滑らせればハボックの体がびくびくと震えた。這わせる指をもう一度上へと滑らせロイはハボックの乳首をきゅうと摘み上げる。
「あっ」
 ぴくんと体を跳ね上げるハボックを見つめながら、ロイは瞬く間に色づいていくそれをくりくりとこね回した。
「やっ…んっ…ぅふ」
 押しつぶすように捏ねられ、摘まれたかと思うと指先で紅く色づく先端を引っ掻くように弄られる。執拗に弄る指にハボックはふるふると首を振るとロイの手首を掴んだ。
「も、や、めて…」
 息を弾ませるハボックの瞳はしっとりと濡れて色味を増している。いつもと違う深い蒼にうっとりと笑うとロイはハボックに口付けた。
「ん…んんっ」
 舌を差し入れれば、必死に答えようと舌を絡めてくるハボックにロイの心に喜びが溢れてくる。ロイは口付けを交わしたまま手を滑らせてハボックの中心を握り締めた。
「んぅっ…んーーっ!」
 苦しげに首を振ってロイの口付けから逃れようとするハボックを赦さず、深く唇を重ねたままロイはハボック自身を擦り上げる。震えるハボックの手がロイのシャツを握り締めた。
「んくぅ…んっんっ」
 深い口付けに満足に呼吸をすることすらままならない。中心から駆け上がる熱を逃がす余裕すらなく、ハボックは瞬く間に登りつめるとロイの手の中に熱を吐き出した。
「ンン―――ッッ!!」
 ぶるりと体を震わせるハボックからようやく唇を離すとロイはハボックを見下ろす。うっとりと蕩けた表情で荒い息を零すハボックにロイは囁いた。
「可愛いな、ハボック」
 そう言うと手にしたハボックの熱をぺろりと舐める。そのいやらしい仕草にハボックは頬を染めると言った。
「ずるいっスよ、アンタ…オレばっかり脱がせて、好き勝手して…」
 オレだってアンタに直に触れたい…、そう囁くハボックにロイの中心にずくりと熱がこもる。ロイはハボックから体を離すと手早く服を脱ぎ捨て再びハボックに覆いかぶさった。
「これでいいか?」
 そういうロイの、実は意外に筋肉質な体にハボックは指を這わせる。気に入ったおもちゃを与えられて満足する子供のようなハボックにロイは笑うと同じようにハボックの体に指を這わせた。ハボックの胸に残る傷跡を何度も擦るとぺろりと舐めあげる。
「ひっ!」
 まだ皮膚の薄いそこを舐められて、なんだか神経に直に触られたような錯覚に陥って、ハボックは悲鳴交じりの声を上げた。それに構わず舌を這わせ続けるロイにハボックは嫌々と首を振ると言った。
「そこ…ヤダっ」
 そう言って逃れようとするハボックを押さえつけてロイは尚も舌を這わせる。
「私のものだ…この傷跡も何もかも…」
 そう呟いた次の瞬間、ロイは傷跡に歯を立てた。ズキンとした痛みと共にロイに喰われるという甘い錯覚にハボックの背筋を快感が駆け上がる。
「あっあ…たいさぁ」
 ぎゅっとしがみ付いて来るハボックの体を抱き返すと、ロイは手を滑らせてハボックの蕾へと指を押し当てた。くいっと中に指を突き入れればハボックの体が大きく揺れる。
「んあっ!」
 まだキツイそこをぐるりとかき回せば、ハボックが荒い息を零した。ハボックの中心から零れる先走りの蜜を塗りつけながらグチグチと解す。ハボックはロイの背をかき抱くようにして強請った。
「も、へいきだから…はやく…っ」
「まだキツイだろう?」
「いいからっ」
 焦れたハボックはロイの指を引き抜くとロイを押し倒す。ロイの体を跨ぐと猛々しくそそり立つロイ自身を蕾へと宛がった。
「ハボックっ」
 性急なハボックにロイが声を上げるのと同時にハボックはグッと腰を落とす。滾る熱にその身を割り開かれる衝撃に喘ぎながらもハボックは一気にロイを迎え入れた。
「あっあああっっ」
 背を仰け反らせて喘ぐハボックの体を支えながら、ロイは何とか身を起こす。繋がったままハボックの背を撫でてその呼吸が落ち着くのを待つと、そっと口付けた。
「無茶をするな」
「だって…」
 早く一つになりたかった、そう呟くハボックにロイの目の前が真っ赤になる。咥えこんだロイ自身にグッと中を押し広げられてハボックはギョッとしてロイを押しやった。
「あっ…おっきくしないでっ」
「煽ったのはお前だろう…っ」
 ロイは食いしばった歯の間から呻くようにそう言うと、ガツンとハボックを突き上げる。
「ひああっ」
 最奥をいきなり突かれて、ハボックは感じる間もなく熱を吐き出してしまった。ロイはそんなハボックの腰を抱えると容赦なく揺さぶっては突き上げる。その乱暴な動きにハボックはポロポロと涙を零しながら喘いだ。
「あひっ…あんっ…あっあっやあっ」
 二人の間で瞬く間に堅く立ち上がるハボック自身をロイは握り締める。後ろを突き入れた自身でかき回しながら手にしたハボックを扱けば、ハボックは気がふれたように啼いた。
「ひああっ…ああんっ…んああっ…あっア―――ッ…たいさああっ」
 びゅるんと熱を吐き出したハボックをロイは容赦なく攻め立てた。訳もわからぬまま何度もイかされて、目の前が真っ白になる。フッと意識をとばしかけてはガツンと突き上げられて気を失うことも出来ない。
「たいさ…っ…たいさぁっ」
 どうすることも出来ずに自分を犯す男にすがり付けば乱暴に唇を塞がれた。
「んっ…んんっ」
 息苦しさに涙がポロポロと零れる。ロイの背に回した手が爪を立てて、いくつも紅い筋を残した。苦しくて、でも全身が蕩けそうなほど気持ちよくて、そうして全身全霊でロイを求めている自分に気づいてハボックは必死にロイに縋りつく。
「あっ…んふぅ…たいさ…スキ…っ」
 無意識に零れた囁きにロイが泣きそうな顔をしている事に気がついてハボックは薄っすらと笑った。
「なんて顔…してるんスか、アンタ…」
「…お前のせいだろう…っ」
 ロイは低い声でそう言うとハボックを抱きしめる。
「愛してるよ、ハボック…」
「オレも…オレも、たいさ…」
 ロイの言葉に囁き返せば途端にきつく突き上げられて、ハボックは熱を吐き出してしまう。体の奥に熱く叩きつけられる飛沫を感じながら、ハボックは意識を手放した。


息苦しさにふと意識を取り戻せば焦点が合わないほど近いところにロイの顔があった。口中を思うままに弄る舌にハボックはぐいとロイを押し戻す。息を乱して軽く睨めばロイがニヤリと笑った。
「なんだ、起きたのか。眠っている間にいろいろ教え込もうと思ってたのに」
 9年は長いがな、と言うロイの耳をハボックは思い切り引っ張る。
「いたたたたっ…乱暴だな、お前」
「アンタがアホなこと言うからでしょうっ」
 目元を染めてそう言うハボックにロイは嬉しそうに口付けた。
「今日は大目にみろ。やっとお前と本当に気持ちが通じたんだからな」
 浮かれてるんだ、と恥ずかしげもなく言うロイにハボックは胸がチクリと痛む。
「…ごめんなさい、オレ、今まで――」
 ハボックが言いかけた時、ロイがハボックの鼻を摘んだ。
「ベッドの中で謝るもんじゃない。」
 相手に失礼だろう、と言われてハボックはシュンと押し黙る。そんなハボックにくすりと笑うとロイは言った。
「謝るくらいなら他に言うことがいっぱいあるだろう?」
 愛しそうに見つめてくる黒い瞳にハボックは僅かに目を見開くと、次の瞬間、幸せそうに笑う。
「ダイスキ…たいさ」
「もっと」
「一番スキ…」
「まだ足りない」
 そう言われてハボックは困ったように押し黙る。それからロイの耳元に唇を寄せて囁いた。
 その言葉にロイの瞳が大きく見開かれて。
「私もだよ、ハボック…」
 ロイはそう囁くと唇を重ねていったのだった。


2007/6/26
2007/7/15改訂


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ああ、やっと終わりました。いろんな意味でなんだかなな「千年樹」でしたが…。そもそも時々沸き上がるヒュハボ熱、今回はそれがいつになく強烈でこの話を書き始めました。熱に浮かされるまま書き終えた当初、この話は全6話完結だったのですが、落ち着いて読み返してみるととにかく「ロイハボが足りん!!」いくら熱に浮かされて書いたとはいえ、私の一押しカプ、ハボには絶対ロイなのに肝心のロイハボがこれっぽっちではイカンと新たに加筆修正したところ、こんな長さになってしまいました。しかも後半なにやら色々出てきてますし…。一応ご説明申し上げますと、ステュクスと言うのはギリシャ神話に出てくる河でいわゆる三途の川ってヤツです。一応鋼世界で三途の川はないだろうと適当な語句を探したところ見つけたのがこれでした。で、ついでにちょっとこの河のことを調べて読んでいましたら「神々が特に重要な誓いを立てる時には使者の神イリスが黄泉の国まで降りてきてステュクスの水を小瓶に入れて持ち帰り、この水を飲んで立てた誓いは決して破ることを赦されず、万一破られた場合9年間の深い失神に陥る」という話を見つけまして…早速飛びついたわけですー。ギリシャ神話の黄泉の国がどういうとこかとか、イリスの見た目がどうとかは全く調べておらず私の勝手な捏造です。もし、ギリシャ神話がダイスキな方がおられて「なんじゃこりゃ!!」と思われましたらどうか大目に見ていただけると…(汗)それから、大事なことを叫んでおかなくては。当サイトでの基本的なヒューズの取扱いは「愛妻家、親バカ、親友馬鹿の食えないオヤジでハボのことは弟のように可愛がっていて、生存中(←ここが肝心)」です。
ともあれ、本編も言い訳も長々と書いてきた「千年樹」ですが、お楽しみ頂けたら嬉しいです。