サイゴまで 5


 湯気が立ちこめる浴室の中にロイの激しい息づかいが響く。ハッハッと肩で息をしながらロイは、澄んだ湯の中に花のように広がる白濁を見て、泣きそうに顔を歪めた。
「ひど……ヒドいッ!」
「どうして?気持ちよかったっしょ?」
 こんな湯の中で吐精してしまうなんて、ロイは恥ずかしくて消えてしまいたくなる。だが、その原因を作った男がのほほんとして言うのを聞いて、肩越しにキッとハボックを睨みつけた。
「こんなとこでする事ないだろうっ!」
「……どうして?」
 カッとして投げつけた言葉にハボックが静かに問い返す。スッと細められた空色に混じる情欲の色に気づいて、ロイは慌てて目を逸らした。
「こんな風に肌を合わせて、オレが興奮しないと思ったんスか?今日が『次回』になるかもって言った時、構わないって答えたの、大佐っスよ?」
「ッ!!」
 そう言われてロイの身体がピクリと震える。気がつけば腰の辺りにハボックの昂りを感じて、ロイはどうしていいのか判らず唇を噛んだ。
「大佐……オレの事が怖い?」
「そっ、そんなこと…ッ」
「じゃあ恥ずかしい?」
「……それは、少し……」
 正直に答えればハボックが笑う気配がする。ハボックはロイの身体をやんわりと抱き締めて言った。
「オレだって恥ずかしいっスよ?……こんなガキみたいに興奮して大佐に馬鹿にされたらどうしようって思うし…。でも」
と、ハボックは言って抱き締めたロイの耳元に唇を寄せる。
「それ以上に大佐の事が欲しいっス……」
「…ッ、ハ、ボ…ッ!」
 直接耳の中に吹き込まれる声にぞくんと何かが背筋を駆け上がる。ハボックはロイの耳朶に舌を這わせながら言った。
「欲しい……駄目っスか?大佐……」
「お、お前になら……いい」
 そう答えれば背後から伸びてきた手に顎を掴まれ強引に振り向かされる。荒々しく重なってきた唇に己のそれを奪われて、ロイは甘い吐息を零した。
「好きっス……大佐」
 言って優しく笑うハボックに、ロイは答える代わりに自分から口づけた。


 浴室からバスタオルにくるまれて、ロイは寝室に運ばれてしまう。まるで女の子のような扱いにロイが文句を言えばハボックが答えた。
「だって大佐がタオルで拭いて服着るのなんて待ってらんないっスもん」
「がっつきすぎだろう、お前っ」
「若いっスから」
 顔を赤らめて言うロイにハボックがしれっとして言う。ベッドにそっとおろしたロイの身体に覆い被さるようにして、ハボックはロイを見下ろした。
「大佐……」
「……なんだ」
 優しく囁けば赤い顔で睨み上げてくるロイにハボックががっくりと項垂れる。
「大佐、そこは優しく呼び返してくださいよ」
「煩いな、気に入らないならやめるぞ」
「それは困るっス」
 ハボックは慌てて答えると改めてロイをじっと見つめた。熱っぽい視線にロイは困ったように視線をさまよわせたが、腕を伸ばしてハボックを引き寄せる。
「まどろっこしいんだ、恥ずかしくなるだろうっ!スルならさっさとシろッ」
「……アイ・サー」
 赤い顔で言うロイにハボックは笑って答えると、ゆっくりとその唇を塞いだ。


 纏っていたバスローブを脱ぎ捨て、ロイの身体を包むタオルをはぎ取ってハボックはロイの身体に圧し掛かる。さらさらとした黒髪をかき上げて額にキスを落とすと、瞼に鼻筋に頬にと、次々と口づけていった。
「大佐……」
 そう囁いてハボックは耳の付け根をきつく吸い上げる。ピクンと震えるロイから唇を離せば、白い肌にくっきりと朱色が浮かんだ。初めてロイの肌に刻みつけた己の痕を見れば、ゾクゾクと興奮が背筋を這い上がる。ハボックは次々とロイの白い肌に唇を押し当てては幾つ幾つも花びらを散らしていった。
「あっ……ハボっ」
 唇が押し当てられる度、そこにじんわりと火が灯る気がする。気がついたときには体中が熱くてあつくて、ロイは力なくハボックを押し返した。
「キ…キスは、もう、いい…ッ」
 これ以上身体が熱くなったら燃えてしまいそうだ。そう思ってロイが言えばハボックが顔を上げて言った。
「そうっスか…?じゃあこうしますね……」
 ハボックは言うと同時にロイの胸に顔を寄せる。いきなり桜色の飾りをチュウと吸われて、ロイはビクンと身体を震わせた。
「な…ッ?やあッ!」
 ハボックは片方を赤ん坊のようにチュウチュウと吸い、もう一方を指先で押し潰す。グリグリと指の腹で潰せば、桜色だった突起は赤く色づいてプクリと立ち上がった。
「アッ、や、あんッ」
 執拗に弄られれば妙な感覚が沸き起こってくる。擽ったいようなゾクゾクするような、何とも表現のしがたい感覚に翻弄されて、ロイはふるふると首を振った。
「ハボックっ、そこ、ヤダっ」
 ロイは訴えてハボックの髪を引っ張る。ハボックは渋々と顔を上げて言った。
「サクランボみたいですっげぇ旨いのに」
「なっ、なにがサクランボだッ」
 ふざけた物言いにロイがハボックを睨めば、ハボックはロイの乳首をキュッと摘んだ。
「だって、ほら見て?真っ赤に熟れてサクランボみたいっしょ?」
「や、やあッ、なに言って…ッ」
 キュウと摘まれてロイは胸を仰け反らせて喘ぐ。ハボックの言葉につられるように胸に視線をやったロイは、白い肌に赤く色づく突起を見て、顔を赤らめた。
「な…なん……ッ」
「ね?旨そうっしょ?」
「馬鹿ッ!」
 にっこりと笑うハボックにロイは赤く染まった顔を腕で覆う。そうやって顔を隠したままでいるロイにハボックはクスクスと笑いながら覆い被さるとその耳元に囁いた。
「好きっス、大佐……どこもかしこも食っちまいたい……」
「……ハボ」
 低い情欲の滲んだ声にロイは腕の隙間からハボックを見る。真剣な顔で見下ろしてくるハボックに、ロイはゴクリと唾を飲み込んだ。
「いいっしょ?大佐……」
「……特別に赦してやる」
「…ありがとうございます、サー」
 ロイの言葉にハボックが嬉しそうに笑う。チュッと軽く口づけて白い脚に手をかければ、ロイがビクリと大きく震えるのを見てハボックは言った。
「……今度は蹴らないでくださいね?」
「煩いな、あの時は心の準備が出来ていなかったんだッ」
「じゃあ今回は出来てるっスか?」
 そう真剣な表情で聞かれてロイは一瞬押し黙る。じっと見つめてくる空色に、ロイはキュッと唇を噛んだ。
「も、ちろん。お前にならいいって言っただろうっ」
 顔を赤らめながらも真っ直ぐに見つめてくる黒い瞳にハボックが笑う。脚を押し開き双丘に手が触れてくるのを感じて、ロイは思わずギュッと目を閉じた。
「アッ?!」
 その途端、狭間をぬるりと舐める濡れた感触にロイは大きく体を震わせる。ぴちゃぴちゃと這い回り押し入ってくる舌に、ロイはビクビクと身体を震わせた。
「んっ、くふぅ…ッ」
 それでも何とか暴れそうになる身体を意志の力で押さえ込む。そんなロイの努力を知ってか知らずか、ハボックは唾液でしっとりと濡らした蕾に指をねじ込んできた。
「イッ?アアッッ!」
 初めてそんなところに指を入れられて、ロイの身体が強張る。ハボックは優しく脚を撫でさすりながら言った。
「大丈夫、解すだけっスから……」
「ハボ…っ」
 ビクビクと震えるロイを宥めながらハボックは指の数を増やしていく。ぐちゅぐちゅとかき回して十分に解れたと見ると、埋めていた指を引き抜いた。
「ンアッ!」
 一気に指を引き抜かれて、ロイが喉を仰け反らせて喘ぐ。ハボックは抱え直したロイの脚をM字に押し開くと、高々とそそり立った自身を押し当てた。
「挿れるっスよ、大佐……」
「……ハボ…っ」
 きちんと準備をしてくれてあるとはいえ、そもそも受け入れるべきでない場所に受け入れるのだ、怖くない筈がない。それでもロイはハボックを真っ直ぐに見上げて目を逸らさなかった。
「大佐……」
 熱っぽく囁いてハボックが押し当てた楔をグイと進める。しっとりと濡れた蕾はハボックの楔の形に合わせてゆっくりと解けて、猛々しい牡を飲み込んでいった。
「あ、あ、あ」
 みちみちと狭い器官を押し開いて潜り込んでくる楔に、ロイが大きく目を見開く。ハアハアと浅い呼吸を繰り返すロイにハボックが言った。
「力抜いて、大佐……大きく、ゆっくり息して」
 狭すぎる器官にハボックが苦しそうに顔を歪めてそう言う。だが、初めての行為に体は強張るばかりで、ロイは微かに首を振った。
「ごめ……む、り…ッ」
 こんなに締め付けてはハボックも辛いのは判っている。それでもどうしても体から力が抜けなくて、ロイは苦痛と申し訳なさに涙を滲ませた。
「たいさ……たいさ…」
 ハボックはそんなロイの気持ちを察して優しくロイを呼ぶ。ロイが涙の膜を通してハボックを見上げれば、ハボックはロイに笑いかけた。
「好きっスよ、大佐……」
 そう囁いてハボックはロイの楔に指を絡める。すっかり萎えてしまったそれを優しく手のひらで包み込むとゆっくりと扱き出した。
「あ……んふ……」
 直接的な刺激にロイの唇から甘い吐息が零れる。ほんの少しロイの体から力が抜けて、ハボックはそろそろと体を進めていった。
「ああっ……くふぅッ!」
 巨大な牡に狭い器官を押し開かれてロイが息を荒げる。ビクビクと震える体を押さえ込んで、ハボックは一気に根元まで押し込んだ。
「アアアッッ!!」
 下肢が密着して胸がピタリと合わさる。互いの心音が自分の中で響くようで、二人は息を弾ませて見つめあった。
「全部入った……判るっスか?」
「……ああ。…お前の心臓の音が私の中で聞こえる……」
 凄い、とロイがため息のように呟くのを聞けば、俄に熱が煽られる。自分の中でハボックの楔がグググと嵩を増すのを感じて、ロイが悲鳴を上げた。
「ば、か…ッ、おっきくするな…ッ!!」
「だって大佐が煽るんスもんっ」
「いつ私が……アアッ!!」
「駄目、我慢できねぇ……ッ!!」
 いきなりガツガツと突き上げ始めるハボックにロイの体が逃げを打つ。ハボックはロイの体を引き戻すと、ガンッと思い切り突き入れた。
「ヒャアアアッッ!!」
 乱暴に揺さぶられてロイが悲鳴を上げる。もう、感じているのが苦痛なのか快感なのか、ロイには判らなくなっていった。
「大佐……たいさ……ッ!」
「ぅんっ、アッ!ひゃあんッ!!」
 乱暴に突き上げてくるハボックに、ロイは必死に縋りつく。そうすれば二人の間で揺れていたロイの楔が擦られて、ロイは甘い声を上げた。
「あ、んっ、ハボ…ォッ!」
「アッ、すげぇ…ッ、イイっ、大佐ッ!」
 きゅうきゅうと締め付けてくる蕾に、ハボックは興奮して激しく突き入れる。熱い肉襞を堅い楔がこすって、抜き差しに合わせて結合部から紅く熟れた内壁がめくれ上がっては覗いた。
「ひゃんっ、くぅ……ッ、ハボック…ッ!」
 ハボックのストロークの間隔が狭まり抽送のスピードが増す。ガクガクと震えるロイの最奥を穿つと、ハボックはドクンと熱を吐き出した。
「……ぁ、くぅ…ッ、たいさ…ッ!」
「ひゃあああんッッ!!」
 内壁を熱く濡らす白濁にロイは背を仰け反らせる。気がつけばびゅるびゅると熱を迸らせて、ロイはビクビクと震えた。
「あ……ふ……」
「……た、いさ…ッ」
 二人は互いの体をきつく抱き締め合うと唇を合わせる。深く合わせた口内で舌を絡め、荒い呼吸を解け合わせた。
「はあっ……ハッ…大佐…ッ」
「ハボック……っ、…ッッ」
 余韻に体がピクピクと震える。二人は息を弾ませながら互いの顔を見つめた。
「好きっス……大佐…好き……」
「わ……私も…好きだ、ハボック……」
 そう囁きあってうっとりと互いを見つめる。もう一度唇を重ねると、再び熱を高め合っていったのだった。


2010/11/16

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お題13「サイゴまで」です。一応「キス」の続きになります。せいぜい前後編で終わるつもりが気がつけば五話も書いてるし……。そのわりにあんまりエロくないですね、あうあう。どうもハボロイのエロはネチこくならない気がします。もっとこうねっとりイヤラシイのが書きたいんだけどなぁ(苦笑)精進あるのみですねー。