筋肉4


「お願いします、マスタング大佐!」
「俺達、どうしてもマイルリレー出たいんです!」
「3分ちょいでいいんです!」
「「「隊長貸してくださいーーーっっ!!!」」」
そう言って低頭平身するゴツイ男どもをロイは苦虫を噛み潰したような顔で見下ろしていた。
「たいさぁ。」
男どもの側にしゃがみ込んで彼らの肩を叩くハボックが強請るようにロイを見上げる。イーストシティの秋の
恒例行事、陸上競技大会のフィナーレを飾る男子のマイルリレー。出場する予定だった選手が直前の競技で
足を痛めてしまい、選手登録をしてあるハボックに代打を頼みたいと言うのだ。
「俺達だって隊長を他の男どものイヤラシイ視線に曝すのはイヤです、でもっ」
「頑張ってきたんですよ、4人で優勝しようって!」
「怪我したソイツも隊長に出てもらえたら少しは申し訳ない気持ちも救われるって言ってるんすよ!!」
お願いしますぅぅ〜〜っっと泣きついてくるムサ苦しい連中を蹴飛ばしたい気持ちを必死に抑えてロイはむぅと
唇を突き出す。
(ハボックをイヤラシイ視線で見るのはお前らだって一緒だろうが。)
自分達のことを棚にあげてなにを言うやらと不愉快そうに顔を歪めるロイに男たちの声が聞こえた。
「俺達、今日の為に必死に練習してきたんですっ」
その言葉に昨日、ハボックが言った言葉が思い浮かぶ。
『一生懸命練習したのに出るなって、なんスか、それっ!』
1つ思い出せば次々とハボックの言葉で浮んできた。
『オレはアンタが好きなのに』
『アンタが好きで何もかもアンタに差し出してるのに』
ロイは自分の魅力がよく判っていたし、ハボックが自分を好きでいてくれることも知っていた。ハボックが他の
ヤツに心を移したりする筈がないことも。それでもハボックが他の男の目に曝されるのが嫌で堪らない。ハボック
の瞳に他のヤツが映ることが赦せない。自分でもどうすることも出来ない子供じみた独占欲。
「たいさ。」
ハボックに呼ばれてロイはハボックの瞳を見る。自分に向かってふわりと融ける空色にロイは小さくため息を
ついた。
「わかった、行ってこい。」
そう言えば歓声を上げて抱き合う4人に途端に嫉妬心を煽られる。楽しそうに話しながら部屋を出て行くハボック
にロイは言った。
「おい、直前までジャージ脱ぐなよ。」
「…はい。」
僅かに目を瞠って、それでも素直に頷くハボックの背を見送って、ロイは自分の心の狭さを実感するのだった。


2007/9/3


→ 「筋肉4 その後」(ロイハボ・R20)