筋肉4 その後
「大佐っ、こんなとこにいたんスか。」
競技場の片隅、まだ興奮冷めやらぬフィールドからは遠く離れた、椅子やら机やらが乱雑に詰め込まれた部屋の扉
が開いて、ハボックが顔を出した。窓から見るともなく外を見ていたロイは、はあはあと息を切らして部屋の中に入って
来るハボックを少し驚いて見つめる。
「お前、よくここが判ったな。」
「犬っスから。」
ハボックはそう言って笑うとロイの側にやってきた。
「大佐、見ててくれなかったでしょ。俺達、3位だったんスよ。」
「そうか、頑張ったな。」
ロイがそう褒めてもハボックはむぅと頬を膨らませる。
「大佐に見て欲しくて頑張ったのに。」
「無茶言うな。」
ロイはそう言うと膨らませたハボックの頬を撫でた。ハボックが部下達に混じって競技に参加することを認めるのすら
自分にはいっぱいいっぱいだったのだ。他の男たちと笑いながら楽しむ姿など見ていられるはずがない。そう思い
ながらハボックの姿を見れば、まだ残暑も厳しいと言うのに長いジャージのズボンを履き、首まできっちりファスナーを
あげている。汗で額に張り付いた金髪をかき上げてやりながらロイは言った。
「お前、そんなに着こんで暑くないのか?」
「暑いっスよ。」
「じゃあ、なんで。」
「だって、大佐が着てろって言ったんじゃないっスか。」
さらりとそう言うハボックにロイは目を見開く。
「ちゃんと、競技が始まるギリギリまで着てて、走り終わったらすぐ着ましたよ。そうして欲しかったんでしょ?」
「ハボ…。」
確かにハボックが行く前にジャージを着ていろと言いはした。だが、そんなの身勝手な独占欲から出たただの我が儘
なのに。
「バカか、お前。熱射病になるぞ。」
「平気。オレ、頑丈ですもん。」
そう言って笑うハボックにロイは胸が痛くなった。
「私の我が儘に付き合う必要はないんだぞ。」
ハボックの顔を見ていられず、目を逸らしてそう言えばハボックが答える。
「オレ、大佐に我が儘言われるの、キライじゃないっスよ。そりゃ腹立つときもあるけど。でも、我が儘言われると、まだ
大佐はオレのこと好きでいてくれるんだなぁって判るから。」
安心できるから我が儘言われるの、スキ、ハボックはそう言ってふわりと笑った。その笑顔にロイはもっと胸が痛く
なってハボックの手を取る。その手を額に当てながらロイは言った。
「バカだな、お前は…。」
「うん、オレ、バカだから大佐がオレのこと、好きでいてくれるのかわかんなくて…。大佐の我が儘でまだオレのこと
好きでいてくれてるんだなって判るんスよ。」
ハボックはそう言ってロイの頭を抱きしめる。
「大佐は凄くカッコよくて、頭もいいし、その年で大佐で国家錬金術師だし…。いつだって綺麗な女の人からアタックされ
てて。オレはどこから見てもムサ苦しい男だし、今はこうしてオレのこと好きでいてくれてももいつか変わっちゃう
だろうし…。」
「ハボック。」
「我が儘言ってくれるうちはまだ大佐のこと好きでいていいんだって…。」
「本当にバカだな、お前は…。」
ハボックを想う気持ちが変わるはずなどありはしないのに。ロイはハボックの胸に顔を埋めたままそっと目を閉じた。
ハボックは大事そうに胸に抱きしめていたロイの頭を離す。ロイの膝に乗るようにして体重を預けると、ロイに口付けて
いった。
「ん…」
ぴちゃりと音を立ててハボックがロイの舌を舐める。積極的に舌を絡めてくるハボックを、ロイはぐいと引き寄せた。
そうしてひとしきりお互いの口中を味わうとロイはハボックの体を離す。ジャージのファスナーを下ろし、シャツをまくり
あげようとするその手を、ハボックは押さえた。
「オレ、汗くさいから…。」
「お前の匂いだろう、構わない。」
ロイはそう言うとシャツを捲くり上げハボックの肌に舌を這わせる。堅く尖った乳首にねっとりと舌を這わせては指で
ぐりぐりと押しつぶした。
「ん…は…たいさ…。」
甘ったるい声が頭上で聞こえて、ロイはますますきつく舌を這わせる。ハボックはびくびくと体を震わせながら、ロイの
頭をきつく抱きしめた。
「たいさ…。」
ため息のようにハボックがロイを呼ぶ。呼ばれるままに上向けばハボックの唇が降ってきた。
「あ…んふ…」
ハボックの舌がロイの歯列を舐める。頬の内側を舐め、上あごをこすり縦横無尽に這い回る舌にロイがくすくすと笑った。
「なんスか?」
「いや、なんでも。」
ハボックの問いにロイが笑いを噛み締めて答えればハボックがムッと眉を寄せる。
「なんかムカツク。」
そう言うとハボックはロイの頭を離し、ロイの前に膝をついた。そうしてロイのズボンの前をくつろげ頭をもたげ始めた
ロイ自身を取り出す。
「おい。」
「黙っててください。」
ハボックはそう言うとかぷとロイ自身を咥えこんだ。喉奥まで咥えこんで舌を絡めてみたり、喉で締め上げたかと思うと
唇でじゅぶじゅぶと擦りあげたりと、鼻から甘い声を洩らしながらロイ自身をしゃぶるハボックの、とろんと蕩けた顔に
ロイはゾクゾクとしてハボックの髪を掴む。
「ん…ふん…ぅう…」
「ハボ…も、いいから。」
そう言って離させようとするが、ハボックは小さく首を振って離そうとしなかった。唾液がハボックの唇の端から零れ落ち、
空色の瞳に涙が滲む。
「ハボ…離せ、もう。」
金色の髪を掴んで離そうとすればする程、ハボックはむしろ深く咥えこんでしまう。先端をハボックの舌が舐め、きつく
吸い上げられて、ロイは堪らずハボックの口中へと熱を吐き出していた。
「くっ…」
「んんっ…ぅんっ」
こくんと、喉を上下させてはボックは口中に吐き出されたものを飲み干してしまう。ゆっくりとロイ自身から唇を離せば、
唾液とも精とも判らぬものがハボックの唇から滴り落ちた。
「ハボ…お前…。」
「気持ちよかったっスか?」
そう聞いてくるハボックにロイは思わず顔を紅くする。くすくすと笑うハボックの体を力任せに引き上げると、ロイは乱暴
に口付けた。
「…不味い。」
「アンタの味でしょうが。」
「お前、よくこんなもの飲むな。」
「アンタだっていつもオレにするくせに。」
そう言い合って二人はくすくすと笑う。ロイはハボックを自分の膝に座らせると言った。
「いいか?」
そう言って背を撫でるロイにハボックが答える。
「いつもは勝手にするじゃないっスか。いいんスよ、大佐のすきにして。」
オレはアンタのものだから。
そう囁くハボックの声にロイは眩暈がした。噛み付くように口付けるとジャージもハーフパンツも下着も纏めて引き摺り
下ろしてしまう。自分の脚を跨がせるようにすると、その奥で息づく蕾に指を差し入れた。
「んっ…んは…」
くちくちとかき回せばハボックが喘ぎながらロイに口付ける。その口付けを受けながら、ロイはハボックに沈める指を
増やしていった。
「も、いいっ…はやく…」
そう強請られればロイとて我慢する術もない。指を引き抜いてハボックの腰を浮かせると一気に貫いた。
「っんあああああっっ」
無意識に仰け反って逃れようとする体をロイは引き戻して深く抉る。悲鳴を上げる唇と塞いで乱暴に揺すりあげた。
「んんっ…ン―――ッッ!!」
縋りついてくる体を抱きしめて深く穿つ。ハボックの中心が震えてどくりと熱を吐き出した。
「う…は…た、いさぁ…っ」
自分を見つめる色を増した蒼い瞳をロイはぺろりと舐める。ぷくりと膨れる乳首を甘く噛み、舌を絡めた。
「あっ…はあっ…んぅん…」
ハボックはロイの頭を引き寄せながら腰を揺らめかせる。ロイが乳首をちゅうと吸い上げると、それに答えるように
ロイを含むそこがきゅうと締まった。尚も執拗に攻め立てれば頭上で聞こえる声が熱を増す。ロイがゆっくりと胸から
顔を上げると真っ赤な顔をしたハボックと目が合った。ロイはその瞳をじっと見つめながら、ハボックの中心に手を
這わせる。ぴくんと震えて、だがハボックも目を逸らさずにロイを見返した。熱に汚れたそれをぐちぐちと扱けば、ハボッ
クの眉根が辛そうに寄る。それでも構わずに、ロイはハボックを突き上げながら中心を擦った。
「あ、あっ…やっ…ヤダっ…」
ふるふると首を振るハボックに顔を寄せるとロイはその耳にぬちゃりと舌を差し入れる。
「好きにしていいって言ったのはお前だろう…?」
吐息と共にそう吹き込めばハボックがぎゅっとしがみ付いてきた。
「あ…ふ…あんっ」
「悦いのか?」
そう聞くとハボックがコクコクと頷く。前と後ろを同時に攻め立てられて、ハボックはきつい快感から逃れようと身を
捩った。
「ひ…ああっ…たいさっ…」
あんまり悦くて、下半身から蕩けていってしまいそうだ。ハボックはロイの唇を己のそれで塞ぐとほんの少し唇を離して
囁いた。
「ね…も…たいさの…だして…」
「もう?」
「オレん中…たいさでぬらして…。」
そんな風に強請られて、ハボックを犯すロイの熱がグウと膨れ上がる。
「あっあっ」
「煽るな、ばかもの…」
「た…さぁ」
ロイはハボックの中心を擦る手の動きを休めずにガンガンと突き上げた。激しく揺さぶられてハボックは嬌声を上げ
ながら熱を吐き出す。口付けて来るその唇を受け止めながら、ロイはハボックの最奥に熱を吐き出していった。
「大丈夫か?」
くたりともたれかかってくる体を支えてそう聞けば、ハボックが頷く。髪を撫でる手を優しく感じながらハボックはくすりと
笑った。
「あー、表彰式、サボっちゃった。」
「え?お前、表彰式の前にここに来たのか?」
ハボックの言葉に驚いてロイが聞けばハボックが答える。
「だって大佐の顔、見たかったし…。」
そう言って頭を摺り寄せてくるハボックにロイはため息混じりに言った。
「またアイツらに文句言われるな。」
「アイツらだって判ってますよ。」
たとえどこにいたって一目散にロイのところに帰っていく。そんなハボックの一途さに、部下達も文句を言いながらも
納得しているのだ。
「大佐、大好きっス。」
そう言ってチュッと口付けて来る甘い唇を、ロイはうっとりと笑って受け止めたのだった。
2007/9/3
9月になってもつづく「その後シリーズ」(苦笑)
いつもロイのほうから押せ押せパターンが多いので、今回はハボの方から積極的にいかせました。甘々ラブラブを目指したつもり。