筋肉
「ハボック、準備はでき―――」
選手控え室にハボックの様子を見に入ってきたロイは、振り向いたハボックの姿に固まってしまった。
今日はイーストシティの秋の行事の中でも人気行事の一つ、陸上競技大会だ。その競技会に軍代表として出ること
になっているハボックは、競技に出場するためユニフォームに着替えたところだった。
「あ、たいさぁ」
そう言ってストレッチの為に両腕を突き上げたハボックは半袖のTシャツにハーフパンツをはいている。問題はその
素材だ。
「お前、その格好で出る気か?」
「そっスけど何か?」
ストレッチ素材のそれはハボックの体にぴったりと張り付き、鍛えられた体の線を浮かび上がらせている。厚い胸板
から割れた腹筋そして。
(ナニの形までわかりそうじゃないかっっ!!)
舐めるように見つめるロイの視線に曝されても、ハボックはきょとんとしてロイを見返すばかりだ。ロイが口を開こうと
したその時、控え室の扉が開いてフュリーが顔を出した。
「ハボック少尉、そろそろ競技場の方へ―――」
「ハボックは出場辞退だと言え。」
「えーっっ!!なんでっっ?!」
そう叫んだハボックはロイにギロリと睨まれてギクリと体を強張らせる。思わず壁に張り付くと助けを求めるように
フュリーを見た。
「あ…と…辞退ですね。」
今ここで何か言ったらきっと自分は消し炭だ、フュリーはそう考えて縋りつくような視線を感じながらもハボックを
見捨てる事にする。
「本部にそう言っておきます。」
「フュリーっ、待って!!」
じゃあ僕はこれで、と自分を呼ぶハボックの声は聞こえぬフリでフュリーは扉を閉めた。扉の中でこれから何が
起ころうとも、自分には関係ないことだと言い聞かせて、フュリーはとっととその場を後にするのだった。
2007/8/26
→ 「筋肉その後」(R20)