酷暑


演習を終えて、ハボックは汗でぐっしょりと濡れそぼった髪をかき上げる。軍曹が赤い顔をしてやってくるとハボックに言った。
「今日の演習は事の外しんどかったですな」
「幾ら体力自慢の連中でもぶっ倒れるヤツがいるんじゃないかと思ったけどな」
 そう言ってハボックは背後に広がる演習場を見渡す。炎天下の演習場はゆらりと陽炎がたっていっそ違う次元のように見えた。
「まあ、戦時下じゃ暑いの寒いの言ってられませんが」
 そう言って歩き出す軍曹の背を見つめながら、ハボックはもう歩くのすら億劫になっていることに気がついて苦笑する。
「まだまだだな、オレも」
 ぼそりと呟けば不思議そうに軍曹が振り向いた。
「隊長?」
「今行く」
 ハボックはそう言って焼け付く大地を歩いていく。もう少し行けば長く伸ばしたホースを構えた部下達から冷たい水を
浴びせかけられることなど思いもせずに、ハボックはロイの為にももっともっと自分を鍛えていかなくてはと思うのだった。


2007/08/16


→ 「酷暑その後」(R20)