痒
「ハボック、背中が痒い…。」
もぞもぞと体をくねらせながらロイがハボックに言う。その酷く痒そうな様子にハボックは鍋の火を消すと手を拭きながら
キッチンから出てきた。
「背中?ちょっと見せて下さい。」
ハボックがそう言えばロイがシャツを捲り上げる。むき出しになった白い背が地腫れのように腫れ上がっているのを見て、
ハボックは目を丸くした。
「これっ、ジンマシンじゃないっスかね。」
「ジンマシン?」
肩越しに振り向いて聞くロイにハボックは頷く。
「ええ、ガキの頃になったことがありますけど、ちょうどこんな感じでしたよ。」
「別に変なもの食べてないぞ。」
シャツを戻しながらそう言うロイにハボックが首を振った。
「食べ物より疲れてたりすると突発的に出たりするんスよ。アンタ、最近忙しかったでしょ、だからですよ、きっと。」
そう言われてロイはウーッと低く唸る。壁にゴシゴシと背中を擦り付けるロイにハボックが呆れたように言った。
「ちょっと、サイじゃあるまいし、何やってるんスか。」
「だって、痒いんだ。」
「今日、休みだから医者やってませんしね、救急病院でも行きますか?」
「それはヤダ。」
背中を壁に擦りつけながらそう言うロイにハボックはため息をつく。
「じゃ、とりあえず今日はかゆみ止めだけでも。」
そう言って救急箱からかゆみ止めの塗り薬を出すとロイに言った。
「塗りますから背中見せて下さい。」
「うん…。」
そう言われてロイはシャツを捲り上げる。するっと脇腹を擦られてロイは背筋を仰け反らせると悲鳴を上げた。
「ちょっ…大佐っ」
「くすぐったいっ」
「我慢して下さい。」
ハボックはそう言うともう一度薬をつけようとする。だが、ロイはククッと笑うと身を捩らせた。
「もうっ、少しの間なんだからじっとしてて下さいよっ!」
「わ、わかった…」
ムッとしたハボックの声に、ロイは慌ててそう答えると座りなおす。ハボックの指が背に触れるとビクッと震えて笑い出し
そうになったロイは、突然自分の指を噛んだ。
「ん…っ」
笑いをこらえる為だろう、眉を寄せて指を噛み締めるロイはなにやら違う場面を思い起こさせる。
(な、なんか理性を試されているような…)
ハボックは困ったように視線を彷徨わせるとなるべくロイの顔を見ないようにしながら必死に薬を塗る事に集中したのだった。
2007/12/9
→ 「痒 その後」(ハボロイ・R20)