平行世界34
 
 
眩しい光が収まった後、ハボックは目の前に立っていたロイの姿に頬を弛める。手を伸ばして抱き締めようとしたハボックを、だがロイはスルリとすり抜けるときょろきょろと辺りを見回した。
「ロイ?」
まさかと思って尋ねるように名を呼べば。
「ジャンは?」
と当然のように返る返事。ハボックはため息をひとつつくと答えた。
「帰ったっスよ、マスタング大佐と一緒に」
「なんでっ?!帰すなって言ったじゃないかっ!」
「ロイ」
激昂するロイを嗜めるようにハボックが呼ぶ。プイと顔を背けるロイにハボックが言った。
「ホントは判ってたんでしょ、一緒に帰ったってこと。ロイが一番よく判ってたっスもんね、ジャンがどれ程マスタング大佐のこと好きかってこと」
ハボックがそう言えばロイが唇を噛み締めて俯く。
「バカだ、アイツはっ」
そう吐き捨てるように言うロイをハボックがそっと抱き締めた。慰めようとその髪にキスを落とそうとした時。
「いい加減離れろよっ、ジャンっ!!」
声と同時にビリーがハボックとロイを無理矢理引き離す。ロイを背後に庇うように間に立つとハボックを睨んだ。
「全く油断も隙もないなっ。気安くロイさんに触ってんじゃねぇよッ」
おまえなぁっ!」
ハボックは弟にズイと近づくと下から覗き込むようにして睨む。
「やっと帰ってきたと思えば相変わらず可愛げねぇな、お前はっ」
「ハッ、煩いなっ、俺はロイさんの凄さに惚れ直したんだ。お前なんかに渡してたまるか。そうだ、いっその事むこうのジャンと入れ替わっちまえよ」
「な、んだとぉぉぉっっ!!」
ガシッと互いに襟首を掴んで一発即発の体の二人を置いてロイは2階へと上がっていった。ムスッとして開け放たれた窓に寄りかかっているロイの背にヒューズの声がかかる。振り向きもしないロイの隣から外を見ながらヒューズが言った。
「殴れなかったんだってな」
「煩い」
「まあ、でもその分ジャンとワンコが殴ってたから」
そう言うヒューズをロイはチラリと見たが何も言いはしなかった。
「自分の幸せは自分で決めるんだとよ」
「煩いって言っただろ」
そう言って背を向けるロイにヒューズは苦笑する。ロイの髪をくしゃりとかき混ぜると部屋を出ていった。一人きりになった部屋で外を見ていたロイはグッと唇を噛み締める。
「幸せにならなかったら赦さないんだからな」
そう呟いたロイの耳に、ぎゃあぎゃあと言い合いながら階段を上ってくるハボック達の足音が聞こえてきたのだった。

the end


2008/06/16


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