平行世界33
 
 
激しい揺れに引き続いてカッと眩しい光があたりを覆う。クリスは腕で目を庇いながら思い切り舌打ちした。
「もうっ、一体何回ぶつかれば気が済むのよっ」
苛々とそう叫んだクリスは光が消えた後に立っている姿に目を瞠る。懐かしい金髪に吊りあがっていた目が優しい光を湛え、クリスはジャンに向かって手を伸ばした。
「ジャンっ」
「クリス」
クリスは背の高い弟をギュッと抱き締めるとその頬を両手で包む。
「今度こそホントにジャンなのね。よかったやっと帰ってきたのね」
「ゴメン、クリス。心配かけてごめん」
ジャンは言ってクリスをギュッと引き寄せた。久しぶりの再会を喜んでいたクリスだったが、ふと視線を上げると顔を顰めた。
「どうして貴方もここにいるの、マスタング大佐」
「それはないんじゃないか、クリス」
冷たいクリスの言葉にマスタングが情けなく眉毛を下げる。そんなマスタングにクリスが容赦なく言った。
「ジャンの幸せの為にも向こうに行ってくれって言ったはずだけど」
「大佐がいなかったらオレの幸せなんてありえないよ、クリス」
マスタングが何か言い返す前にジャンが言う。クリスは弟を睨むと言った。
「いい加減目を醒ましなさい、ジャン。今度のことでよくわかったでしょう?」
「うん。オレには大佐しかいないってことがよく判ったよ」
「ジャンっ!」
ジャンはマスタングに手を伸ばすとその体をギュッと抱き締める。それに答えてジャンを抱き返しながらマスタングは言った。
「悪いな、クリス。やはりコイツを離せそうにない」
そう言って見つめてくる黒い瞳にクリスは目を瞠る。暫くそいうして二人を見つめていたクリスだったがツカツカとマスタングに近づくと手を振り上げた。パンッと音を立ててマスタングの頬を叩くとプイと顔を背ける。
「ハイマンスっ!」
「うわっ、はいっ!」
「送りなさい!」
「えー、何で俺が
文句を言いかけたブレダだったがジロリと睨まれて渋々後に従う。二人が出て行くのを見送っていたマスタングだったが、二人の背が扉の向こうに消えたのを確認するとジャンを見つめる。
「愛してるよ、ハボック」
そう囁くとジャンの首筋に口付けた。
「ちょったいさっ」
「誰も見てないだろう?」
「でも
ジャンはそう呟くときょろきょろとあたりを見回す。
「ビリーとか
「私達二人がこっちに帰ってきてるんだからアイツも向こうに帰ったろう」
「でも
「でももクソもない。今すぐ寄越せ」
マスタングはそう言うとジャンをソファーに押し倒した。そのまま圧し掛かってくるマスタングに。
「もう
そうぼやきながらもマスタングの背に腕を回すジャンだった。


2008/06/15


→ 34
32 ←