平行世界24
 
 
(一体どうしちゃったんだぁ、ワンコのヤツ
ヒューズは内心そう独りごちてそっと腕の中の相手を見る。空色の瞳から涙を流す彼はやけに幼く見えて、自分が知っている男とはまるで違っているように思えた。
(いや、だって、でもコイツは少尉だろう?)
涙を流す空色の瞳も、蜂蜜色の髪も、自分の親友が惚れ込んだ男の物だ。正直ロイがハボックを好きだと言った時、何を好き好んで男なんてと思ったものだが、今腕の中にいる相手ならまんざらでもないとついうっかり思ってしまって、ヒューズは慌てて首を振った。
(でも、なーんか守ってあげたくなっちゃうっていうか、なんと言うか
ヒューズがそう思った時、彼が身じろぎする。スンと鼻を啜って無理矢理に笑うと「すんません」と呟いた。
「うわわわわっっ」
その顔を見た途端、ヒューズが素っ頓狂な声を上げる。驚いて見つめてくる空色を見返しながらヒューズは心の中で喚いた。
(俺にはグレイシアもエリシアもいるっ!なのにどうしてこんな大男にときめいちゃったりしてるんだーーーっっ!)
「あの
自分を抱き締めながらパクパクと口を動かすヒューズにジャンが何か言おうとした時。
ボッとヒューズの軍服の裾に火が着いた。
「うわっちぃぃっっ!!」
「ヒューズっ、貴様っ、ジャンから離れろっ!!」
通りの向こうからロイとハボックがバタバタと駆けてくる。ハボックがジャンをヒューズから奪い返し、ロイが発火布を嵌めた手を突きつけた。
「ジャンっ、何もされなかったかっ?!って、泣いてるじゃないかっ!中佐っ、アンタ、ジャンに何したんスかっ!!」
「ヒューズっ、貴様よくもっ!!」
「待てっ!俺は何もしてないっ!!つか、なんで少尉が二人っ?!」
パンパンと軍服を叩いて火を消したヒューズは両手を高く上げながら言う。突然のことにパニックを起こしかけながらも言った。
「少尉って双子だったんかっ?初めて聞いたぞ、おいっ」
「オレは双子じゃないっスよ」
「え?だってソイツ、そっくりだろうがっ」
「話を逸らして誤魔化そうったって、そうはいかんぞ、ヒューズ!」
ぎゃあぎゃあと喚きあう3人をきょとんとして見ていたジャンだったがやがてクスクスと笑い出す。
「ジャン?」
突然笑い出したジャンにハボックが眉を顰める。ジャンはロイを見つめると言った。
「中佐はオレを慰めてくれてただけっスよ」
本当か?」
ジロリと見つめてくる黒い瞳にヒューズがコクコクと頷く。ハボックとジャンを交互に見ると言った。
「で、どういうことなんだよ。判るように説明してくれ」
そう言われてロイたちは顔を見合わせたのだった。


2008/06/06


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