「ハボック
大佐はそう名を呼ぶと上目遣いにオレを見る。ソファーに座ったオレの前の床にぺたりと座り込んで薄っすらと笑う大佐は、オレの目に自分がどう映っているかよく判った上でわざとそう振舞っていた。
大佐は時々こんな風にしてオレを弄んでは楽しむ。わざと誘うような仕草をしておきながら猫のようにスルリと身をかわしてはうろたえるオレの反応を見て喜ぶのだ。
白い上質なシャツはボタンをいつもより1つ多く外しただけで男の欲を煽る小道具へと成り果てる。大佐は濡れた舌で唇を舐めるとニンマリと笑った。焔を生み出す、女のそれなんかよりずっと綺麗な指を、差し出した紅い舌でチロチロと舐めると唾液で濡れたその指でオレの脚を撫でる。ツーッとなぞるように何度も脚を撫でる様は猫が鼠を嬲るそれだ。オレの反応を楽しむようにオレを見つめて笑う黒い瞳に、オレは内心昏く笑った。
いいんスか?オレにそんな顔見せて。
オレがいつまでも従順な犬のままだと思ってんスか?
追い詰めた鼠を嬲るようにオレを弄んで、その白い喉に食いつかれてから慌てても遅いんスよ?
大佐はそんなオレの気持ちなどこれっぽちも気付かずにオレを嬲り続ける。
ああもう、大人しい犬のフリなどうんざりだ。
オレは一度瞳を閉じると再び開いてたちの悪い猫を見つめる。しつけは早くに始めるに限るっスよね?
「たいさ。」
そう名を呼べば驚いたように見開かれる黒い瞳に。
オレは大佐の腕を掴むと、そのしなやかな体を身動くことも出来ないよう、腕の中に閉じ込めたのだった。


2008/04/13


→ 「艶 その後」(ハボロイ・R20)