甘
「あ」
ソファーでそれぞれに寛いでいたロイは向かいに座ったハボックが突然上げた声に思わず読んでいた本から顔を
上げる。雑誌を広げてスナック菓子のパッケージを開けていたらしいハボックはその蓋の部分を熱心に見つめていた。
「どうしたんだ?」
何かよっぽど変なことでもあったのかと思ってロイが聞けば、ハッとして視線を上げたハボックが一瞬無表情のまま
ロイを見つめる。それからへらっと笑うと「ナイショv」と尖らせた口に指を当てて見せた。
「なにが“ナイショv”だっ、でかい図体した男が気色の悪いっ!」
「えー、ひでー。」
思わずそう怒鳴ればハボックがむぅと頬を膨らませる。だがすぐにロイを放って開封したスナックをボリボリと食べながら
雑誌を読み始める姿に、今度はロイがむぅと頬を膨らませた。
「おい、どうしたんだ、と聞いたんだぞ。」
「ナイショっつったじゃないっスか。」
ロイを見もせずにそう答えるハボックにロイはムッとして立ち上がるとハボックの手からスナック菓子を奪い取った。
「あっ、何するんスかっ!」
伸びてくる手をかわして覗いたパッケージの蓋の裏には。
『スィートおみくじ ≪甘≫――恋の魔法は解けないでしょう。』
「…なんだコレは。」
「いいでしょっ、人のささやかな喜びを取んないでくださいよ。」
ハボックはそう言ってロイの手からスナックを取り返すと大事そうに抱え込む。
「…お前、バカだろう。」
「どうせバカっスよ。」
不貞腐れた表情で菓子を口に放り込む年下の恋人に、ロイは優しく笑ってその髪を指に絡めたのだった。
2007/11/7
→ 「甘 その後」(ロイハボ・R20)