第十四話 |
| 「食事だ、ジャン」 食器を載せたトレイを手にジャクは寝室の扉を開ける。そうすればつけられた首輪から伸びる鎖でベッドに繋がれたハボックがジャクを睨みつけた。 「ここから出して、ジャク」 ベッドサイドのテーブルにトレイを置く兄の横顔を睨んでハボックが言う。ジャクは椅子を引いてくると両手両足をそれぞれ手錠で拘束されている弟の側に腰を下ろした。 「ほら、口を開けろ」 食事の時ですら手錠を外してはやらず、ジャクは皿を手に切り分けた肉をフォークに刺してハボックの口元に差し出す。ハボックは差し出された肉に見向きもせず怒鳴った。 「これ外せよッ!!」 「外せばここから逃げようとするだろう?」 「ジャクがオレを自由にさせてくれるなら逃げない。ジャクが大佐を守るのに手を貸さないっていうならオレ一人でやるから。だから────」 「駄目だ」 精一杯の譲歩を見せるハボックの提案をジャクは言下に退ける。ピシリと拒絶されてハボックは目を大きく見開いてワナワナと震えた。 「なんでッ?なんでオレの邪魔すんだよッ!!ジャクになんの権利があるのさッ!!」 大声で喚く弟をジャクは昏い瞳で見つめる。ハボックは己を拘束する手錠や鎖を引きちぎろうと、闇雲に暴れた。 「チキショウッ!!大佐ッ、大佐ッ、たいさァッッ!!」 どうやっても外れない拘束に、ハボックがベッドの上で泣き叫ぶ。傷ついた獣の遠吠えに似た切ない声に耐えきれず、ジャクは皿を放り出すようにテーブルに置くと寝室を飛び出した。 夜になってそっと寝室の扉を開けたジャクの目に、ベッドの上に横たわるハボックの姿が映る。泣き叫び続けて疲れて眠ってしまったのだろう、辛そうに眉を寄せて眠るハボックの頬に残る涙の跡をジャクは指先でそっと拭った。ハボックの首に視線をやれば無理矢理外そうともがいたせいで皮膚がすれて血が滲んでいる。同じように手首にも足首にも血が滲んでいるのを見て、ジャクは眉を顰めた。 「馬鹿が」 ジャクは低く呟いて拘束を解くと血の滲む肌に顔を寄せる。舌を差しだしペロペロと擦れた皮膚を舐めた。何度も何度も舌を這わせれば、ハボックがむずかるような声を漏らしてゆっくりと目を開けた。 「ジャク」 傷を癒そうとするように肌に舌を這わせる兄をハボックはじっと見つめる。視線を感じて顔を上げたジャクは、横たわるハボックにゆっくりと圧し掛かった。見つめてくる空色を見返しながらハボックのボトムに手をかける。下着ごと引きずり下ろすと奥まった蕾に取り出した己を押し当てた。そのままグイと押し込めばハボックの顔が歪んだ。 「ジャ、ク……っ」 ゆるゆると金髪を打ち振る弟の顔をじっと見つめてジャクは躯を進める。苦痛に涙を滲ませるハボックの瞳をペロリと舐めた舌を、ジャクは傷ついた首筋へと移した。そうしてペロペロと舌を這わせながらゆっくりと律動を始める。 窓から射し込む月明かりの下、同じ姿形を持った二頭の獣が心の隙間を埋めようとするかのように、まぐわい続けていたのだった。 2012/02/23 |
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