セレスタの涙、オニキスの誓い  第百四十三章


「大佐」
 車を裏の駐車場に停めたハボックは、家の中に入ると先に戻ったロイを呼びながら奥へと入る。灯りもつけずにリビングの中に佇むロイを見て、ハボックは足を止めた。
「大佐」
 もう一度呼んだがロイは答えない。一日中火の気がなくてひんやりと冷えきった部屋に、微かに体を震わせてハボックは言った。
「寒いっしょ?今暖炉熾しますから」
 ロイの返事がないのに構わず、ハボックは暖炉の前に跪くと側に置いてあった薪を暖炉の中に積む。古新聞を捻った先にライターで火をつけて薪の間に突っ込んだ。焼べた火が少しずつ育って薪に火が移りパチパチと音を立てるのを聞いて、ハボックはゆっくりと立ち上がる。振り向けばロイが真っ直ぐに見つめてくるのを見て、ハボックは笑みを浮かべた。
「大佐」
 ロイの黒曜石に暖炉の焔が映って、瞳の中で焔が燃えているように見える。その美しい様に惹き寄せられるようにハボックが伸ばした手をロイのそれが掴んでグイと引いた。
「大────」
 呼びかけたハボックの唇をロイが噛みつくように塞ぐ。それと同時に折れんばかりに抱き締められて、ハボックは一瞬見開いた瞳をゆっくりと閉じた。
「ん……」
 唇を割って忍び入ってくる舌をハボックは迎えように己の舌を差し出す。そうすれば舌の根が痛いほどに絡め取られて、ハボックは僅かに眉を寄せた。
「ふ……ぅ、ん……」
 ピチャピチャと舌を絡めあい口内をさぐり合う。飲みきれずにハボックの唇の端から零れた唾液を、ロイの舌が追うように顎を辿り首筋を舐めた。
「あ……たいさっ」
 強く背を抱き締めていたロイの手が弛み、前を留めていなかったハボックの上着を肩から落とす。黒いTシャツをまくり上げ、ロイは現れた胸の頂に唇を寄せた。
「アッ」
 ちろりと舌先で舐めた乳首を唇に含む。チュウと吸いつき唇の中で転がすように愛撫すれば、ハボックがロイの頭を抱き締めて喘いだ。
「あ……ふ……アァ……」
 喉を仰け反らせ、ハボックは甘い声を零す。その声を聞いて堪らずロイはハボックをラグの上に押し倒した。
「あっ!」
 頭を打ちつけるかとギュッと目を瞑ったハボックは、ロイの手が庇うように頭とラグの間に置かれていることに気づく。慌ててロイの腕を掴み頭を庇ってくれたロイの手を引き寄せて、ハボックは手の甲に口づけた。
「大佐……」
 チュッチュッと口づけて視線を上げればじっと見つめてくるロイと目が合う。ハボックは腕を伸ばしてロイの黒髪に手を差し入れた。
「好き……アンタだけ……」
 ずっとずっと初めて会った時からロイの事が好きだった。ブラッドレイにその身の奥深くを明け渡しても、戦場で何人もの男達に体の奥底を穢されても、正気を失い心の奥の奥にあるガラスの湖に独り佇んでいる時でも、ハボックの心に変わらずあり続けたのはロイその人だけだった。好きで好きで、それ故傷つけあいもしたがそれ故今ここにこうしている。ハボックは黒髪に差し入れた手でロイを引き寄せると自分から口づけた。
「好き……好きっス……」
 口づけの合間にそっと囁く唇をロイのそれが深く塞ぐ。捲り上げたシャツから覗く乳首をロイの手が探り当てキュッと摘んだ。
「んッ」
 ビクッと震える躯に構わずロイの指が乳首をグリグリと押し潰し摘み上げる。痛いほどの刺激の中にも快感を見つけだしてハボックの躯がビクビクと震えた。
「アッ、……くぅッ」
 ゆるゆると首を振ってハボックが熱い息を吐き出す。執拗に乳首を弄られ、すっかりと勃ち上がった楔が軍服の厚い布地に押さえ込まれて痛いほどだった。
「たいさ……」
 ハボックはもどかしげに腰を揺らす。そうすればすぐさまハボックのボトムに伸びたロイの手がベルトを弛めて下着ごとボトムを引きずりおろした。
「あっ」
 ぶるんと勢いよく飛び出した楔に、ハボックは顔を赤らめる。羞恥にギュッと目を閉じたハボックは、ロイの手で引きずりおろされたボトムを毟り取るように脚から引き抜かれ、剥き出しにされた長い脚を大きく開かれてハッと目を開いた。
「や……ッ」
 目を開いた拍子に見下ろしてくるロイの焔をたたえた黒曜石と視線があって、ハボックは目を瞠る。真っ直ぐに見つめられれば目を逸らすことも閉じることも出来なくて、浅い呼吸を繰り返すハボックにロイが言った。
「愛している、ハボック……お前を信じてる、でも行かせたくない。ブラッドレイを今すぐこの手で燃やしてやりたい」
「大……ッ、アッ!」
 ロイの長い指に楔を絡め取られてハボックは言葉を吐き出そうとした喉を仰け反らせる。きつく扱かれれば忽ち若い牡は追い上げられて、ハボックは大きく開かされた白い内股をピクピクと震わせて喘いだ。
「あ……ッ、アッ、たいさァ……っ」
 高まる射精感を必死に堪えてハボックの足の指先がキュウと丸まる。ハッハッと浅い呼吸を繰り返して、ハボックは小さく首を振った。
「でる、でちゃうッ」
 短い金髪をパサパサとラグに打ちつけてハボックが訴える。だが、追い上げる手の動きは弱まるどころか一層激しくなって、ハボックは涙の膜に覆われた空色の瞳を大きく見開いた。
「も……、ダメ……ッ」
 そう呟く言葉に応えるように快感が背筋を一気に駆け上がる。ゾクゾクッと悪寒にも似た快感に躯を震わせたハボックは、仰け反らせた喉から高い嬌声を迸らせた。
「あ────。アアアアアッッ!!」
 ふるりと震えた楔を熱い粘膜が包み込む。次の瞬間、ハボックはロイの口内に熱を吐き出していた。


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