| 第二十六話 |
| 「ろーい」 「んー?……もう朝か」 ゆさゆさと揺すられてロイは薄目を開ける。もぞもぞとブランケットに顔を半分埋めれば、ロイの上に乗っかってきたハボックが小さな指で無理矢理ロイの瞼を開けようとした。 「ろーいっ」 「判った、起きる……」 強引に開かれた目でハボックを見上げたロイは、肘をついてゆっくりと起き上がる。ふわぁと大きな欠伸をすると膝の上にちょこんと座っているハボックを見た。 「おはよう、ハボック」 そう言って金髪をわしわしと掻き混ぜる。嬉しそうに笑うハボックを膝から下ろして、ロイは巣から這い出た。 「あー、よく寝た……」 うーんと伸びをすれば同じように巣から這い出してきたハボックが真似をする。金色の頭をポンポンと叩いて洗面所に行くと顔を洗い、ロイはボトムを履き替えシャツを羽織ると階下に下りた。 「今日もいい天気だな」 窓の外は明るい陽射しに照らされている。ロイは湯を沸かすと一杯用のコーヒーとフィルターが一つになった簡易式のコーヒーフィルターをカップにセットしお湯を注いだ。ハボックには冷蔵庫からミネラルウォーターのボトルを取り出しグラスに注いでやる。そうすればハボックが嫌そうな顔をした。 「仕方ないだろう、井戸水を持ってくるわけにはいかないんだから。これだって一応人気銘柄だぞ」 そう言うロイをハボックが不満そうに見る。コーヒーのカップと水のグラスを手にロイはソファーに座ると、隣に腰掛けたハボックにグラスを渡した。 「今日はこれからどうしようか」 結局昨日はだらだらと一日別荘で過ごしてしまった。外のハンモックでゆらゆらと風に吹かれたり、露天風呂とは別にあるジャグジーにのんびり浸かったりしてそれはそれで楽しかったのだが、今日もそれでは芸がない。昨日まったりすごし過ぎたせいで腹が空かずにコーヒーだけで朝食を済ませながらロイが聞けば、眉間に皺を寄せながらミネラルウォーターを飲んでいたハボックが答えた。 「ろーいっ」 「うん、まあ、お前に聞けば絶対そう言うとは思ったがね」 ボートか、と呟いてロイは少し考える仕草をする。ロイの返事を待って見上げてくる空色を見下ろして言った。 「よし、それならボートに乗って釣りをしよう」 そう言われてハボックは尋ねるように首を傾げる。ロイはカップをテーブルに置いて竿を持つ真似をした。「魚を捕まえるんだ。長い棒の先に餌をつけた糸をつけて魚を釣る。面白いぞ」 確かボート乗り場で釣竿の貸出もしていた筈だ。ロイが竿を振る真似をすればハボックが尻尾を振った。 「じゃあ、支度をしたら出かけよう」 ロイはそう言って立ち上がるとカップを手にキッチンへ行き最後の一口を飲んでシンクに入れる。冷蔵庫からミネラルウォーターのボトルを出し、オレンジと一緒に袋に入れた。パンにバターとマヨネーズを塗りハムとレタスを挟む。紙で包んでそれも袋に入れたロイはハボックがまだパジャマのままな事に気づいて着替えさせてやった。 「ろーい」 いそいそと空色のカチューシャを持ってくるハボックにやれやれとため息をついて、ロイは犬耳をピンと立てたハボックの頭にカチューシャをつけてやる。 「ハボック、尻尾」 ロイに言われてハボックが尻尾を一振りするとフサフサの尻尾がパッと消えた。 「よし、準備はいいか?」 「ろーいっ」 ロイの言葉に答えるようにハボックがピシッと直立不動の体勢を取る。その様子にロイはクスリと笑って言った。 「じゃあ行こうか。今度は迷子になるなよ」 「ろーい〜」 言われてぺしょんと犬耳を伏せるハボックにクスクスと笑って、ロイはハボックと手を繋ぐと湖へと出発した。 2012/09/24 |
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