Happy anniversary!


「やっほー、マースくんが来ましたよ〜!ハボックちゃーん!!」
 ドンドンドンと扉を叩く音に続いて相変わらずテンションマックスな親友の声がする。ハボックと顔を見合わせたロイは、このまま無視しようと頷きあったものの、しつこく扉を叩き続け喚き続けるヒューズにうんざりと立ち上がり玄関に向かった。
「喧しいッッ!!いい加減にしないと燃やすぞッッ!!」
 玄関の扉越しロイは声を張り上げる。そうすれば一瞬静かになったと思いきや、次の瞬間には一層激しく扉を叩いて喚く声が聞こえた。
「やっぱりいるんじゃないかッ!ハボックちゃんっ、マースくんですよぅ、どうして開けてくれないのッ!」
「くそッ!」
 もしかして我慢して居留守を使えばそのうちいなくなったのかもと、ロイは思い切り舌打ちする。だが、答えてしまった今となってはどうすることも出来ず、ロイは渋々扉を開けた。
「ヒューズ、貴様ッ!」
「やっと開いたッ!酷いよ、ハボックちゃん、開けてくれないなんてッ」
 目を吊り上げるロイを綺麗にスルーして、ヒューズはロイの脚にしがみつくハボックの前に座り込む。「ハボックちゃあん」としなだれかかる髭面を、ロイは容赦なく蹴飛ばした。
「呼んでもないのに来るなッ」
「いてッ!そりゃないだろう、ロイ!ハボックちゃんを独り占めしやがって!」
「お前にそんな事を言われる筋合いはない」
 ロイは冷たく言うとハボックを抱き上げて中へと入っていく。それについてリビングへ入ったヒューズは、テーブルの上にケーキやちょっとしたご馳走、それに綺麗な花が置いてあるのを見て、眼鏡の奥の瞳を見開いた。
「あれ?今日誕生日だったか?え?違うよな?」
 言ってヒューズは首を傾げる。よく見れば、部屋の壁にも輪飾りや薄い紙で作った花が飾り付けてあって、ヒューズは益々不思議そうに目を瞠った。
「どゆこと?」
「────今日は私とハボックが初めて出会った記念日なんだ」
「えっ?そうなのっ?」
「ろい」
 驚いたように見つめてくるヒューズにハボックが頷く。見つめてくる二(ふた)色の瞳に、ヒューズは申し訳なさそうに頭を掻いた。
「あー、二人でお祝いするとこだったのか。そりゃおじゃま虫だわな……」
 わりぃ、と苦笑したヒューズは項垂れてリビングを出ていこうとする。そうすれば、ロイの腕からピョンと飛び降りたハボックがヒューズの袖を引いた。
「え?ハボックちゃん……?」
「ろーい」
 クイクイとハボックがヒューズの袖を引っ張る。そんなハボックを見下ろし、次にロイを見るヒューズにロイが言った。
「特別ゲストをお呼びするか、ハボック」
「ろいっ」
 ロイの言葉にハボックがニコッと笑う。ニコニコと笑って見上げてくるハボックとやれやれといった体で笑うロイの顔を見比べたヒューズが、パッと顔を輝かせた。
「俺も混ぜてくれるの?ホント?ハボックちゃんっ?」
「ろーいっ」
「ケーキも一人じゃ食いきれんからな」
「ありがとうッ、ハボックちゃん、ロイッ!」
 ヒューズは嬉しそうに笑ってハボックを抱き締める。きつい抱擁にジタバタと暴れるハボックにスリスリと髭面を擦り寄せるヒューズの頭を、ロイがポカリと叩いた。
「その辺にしないと追い出すぞ」
「あはは、あんまり嬉しくて」
 ヒューズは頭を撫でて立ち上がる。ロイはヒューズのためにもう一揃い食器を用意した。
「それじゃあ改めて。────ハボック、私のところへ来てくれてありがとう」
「ろいっ、ろーいッ!」
「二人とも、おめでとうッ!」
 三人はそう言って「かんぱーいっ」と手にしたグラスを高く掲げたのだった。


2016/05/27


→ マースの日?