| 第四話 |
| 頭を撫でられてハボックは擽ったそうに首を竦める。少なくともロイが喜んでいるらしいと言うことが判ったのだろう、ハボックは嬉しそうに笑うとロイの膝からピョンと飛び降りくるりと背を向けリビングから走り出ようとした。 「ちょっと待て」 ロイは剥き出しの小さいお尻か赤くなっていることに気づく。さっきの毛糸玉の時には判らなかったが、どうやらそこが洗剤液でかぶれて痒かったらしいと、立ち上がったロイは不思議そうな顔で見上げてくるハボックに近づきその頭をポンポンと叩いた。 「今薬を塗ってやる。ちょっと待っていろ」 ロイは言って棚の引き出しを開ける。中から痒み止めの軟膏を取り出しハボックを手招いた。キョトンとしているハボックを後ろに向かせ赤くなった肌に薬を塗ってやる。ほんの少し身を強ばらせていたハボックは塗り終わったと見ると金色の尻尾をふさふさと振った。 「……その姿だと裸と言うわけにいかんか」 揺れる尻尾を見てロイは呟く。耳と尻尾が生えているとはいえその姿は大まかには人間の男の子だ。幾らこの家には自分しかいないとはいえ、裸のままうろうろさせるのはどうかとロイが悩む間にハボックはロイの手をすり抜け、テーブルに置いた薬のチューブに手を伸ばした。 「ああ、こらこら」 蓋をしていなかったチューブからにゅるんと薬を押し出したハボックからチューブを取り上げ、ロイはメッと軽く叱る。するとしょんぼりとうなだれたハボックの姿が小さく縮み、元の毛糸玉に戻ったと思うとサササと棚の陰に隠れてしまった。 「おい」 そんなに強く叱ったつもりはないが怯えさせてしまったろうか。ロイは暫く待ってみたが、出てくる気配のないハボックに一つため息をつき、キッチンに歩いて行きながら言った。 「腹が減ったな、一緒に飯を食わんか?」 ロイは言いながら冷蔵庫の扉を開ける。ハボックは出てこなかったがロイは構わず材料を取り出しピラフを作る準備を始めた。野菜とベーコンを刻み手早く炒める。皿に盛るとインスタントのスープと一緒にテーブルに運んだ。 「ハボック?」 椅子に座り棚の陰のハボックに向かって呼びかける。 「ピラフを作ったんだ。食べるか?」 そう尋ねてもハボックが出てくる気配はなく、せっかく懐き始めたのに惜しいことをしたと、ロイはほんの少しがっかりした。 「別に本気で怒った訳じゃないんだぞ」 ロイは言い訳のように言いながらピラフを口に運ぶ。すぐそこにさっきまで近くにいた誰かがいると思うと一人で食べているのが酷く味気なく感じて、ロイはため息をついた。すると、棚の陰が伸びたように黒い毛糸玉が顔を覗かせる。それに気づいたロイが嬉しそうに笑えば、毛糸玉は出てきて再び耳と尻尾を生やした男の子の姿になった。 「ハボック」 ロイが呼べばハボックは駆け寄ってきてロイの膝に登る。興味津々ピラフの皿を覗き込むハボックにロイは尋ねた。 「食うか?」 そう言ってスプーンで掬ってやるがハボックはいやいやと首を振ってロイの胸元に潜り込むばかりだ。仕方なしに己の口にピラフを運ぶと今度は興味ありげにハボックはロイの動きを見つめる。試しにスプーンを持たせてみれば、ハボックはスプーンでピラフを掬ってロイに食べさせてくれた。 「食べさせたかったのか」 ハボックはせっせ、せっせとピラフをロイに食べさせる。スープは流石にロイが自分で飲んで食事を済ませると、ハボックは満足した様子でロイの膝の上に丸くなり、そのままぴすぴすと眠ってしまった。 「とりあえずは服だな」 ロイは楽しそうな笑みを浮かべて呟くと、膝の上で眠るハボックの金色の頭を撫でた。 2011/06/13 |
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