| 変化10〜海賊 |
| 「そろそろの筈っスよねぇ、この地図によると」 とハボックが手元の地図を見つめながら言う。船の舳先に腰掛けたロイは船が進むずっと先の海を睨みながら言った。 「間違えたって事はないだろうな」 そう言うロイにムッとした声が答える。 「俺が間違える訳がないでしょう、船長。アメストリス一の航海士ってことでこの海賊団にスカウトしたのは船長でしょうが」 「そうだったな」 背後から睨んでくるブレダに肩越しに振り向いて苦笑したロイの耳にファルマンの声が聞こえた。 「目的の島はまだ見えませんが煩いのがやってきますよ」 「海軍か」 うんざりとロイが言うのと同時に拡声器を通した停船命令が聞こえる。 「そこの海賊船!こちらはアメストリス海軍だっ!停船を命じる!今すぐ碇を下ろして停船せよ!命令に従わない場合攻撃する!!」 「って言ってるっスよ。どうします?船長」 プカリと煙草の煙を吐き出して尋ねるハボックにロイが答えた。 「決まってるだろう」 「宝探し前の景気づけっスね」 ニヤリと笑いあう二人に船大工のフュリーが言う。 「もう、どうしてそう二人とも喧嘩っぱやいんですか!船、傷つけたら困りますっ」 だが、やる気満々の二人はフュリーの言う事など耳を貸さずに海軍の船に向かって怒鳴った。 「攻撃出来るものなら攻撃してみろっ!」 「こっちが誰だか知らねぇなっ!」 二人はそう怒鳴るとほぼ平行して走る海軍の船めがけマストから垂れ下がるロープを使って飛び移った。 「海賊が乗り込んできたぞッ!」 「相手は二人だっ、やってしまえッ!」 そう言って銃を構える海軍の兵士達に、だが二人は全く怯むことなく一直線に突っ込んでいった。 「撃て、撃てぇッ!!」 「ふん、くだらん」 ロイはうっすらと笑みを浮かべて言うと手袋をはめた手を突き出す。パチンと指を鳴らすと同時にゴオッと吹き荒れた焔が兵士達が撃った銃の弾を飲み込んでしまった。 「相変わらず派手っスねぇ」 それを見ていたハボックがのんびりと呟く。そのハボックめがけて兵士が銃を撃てば、弾が当たる寸前ハボックの体が煙となって消えてしまった。 「な……消えたっ?!」 「こっちでーす」 その声と共に驚愕する兵士のただ中に煙と共にハボックの姿が現れる。兵士達が構える間もなくハボックの蹴りが炸裂し兵士達をのしてしまった。 「能力者だ……こいつら能力者だぞッ!!」 このときになって初めて気づいた兵士達が叫ぶのを聞いて、船の上からのんびりと成り行きを見守っていたブレダが言う。 「今更だよなぁ」 「ちゃんと海賊旗を確かめてから停船を命じないからですな」 それに答えてファルマンが言えばフュリーが言った。 「なに言ってるんですか。海賊旗ならこの間船長が焦がしちゃったからって下ろしたままですよ」 そう言われてマストを見ればいつも翻っている海賊旗がない。 「そいつは悪いことをしたな」 「そうですね」 「そんなのんびりしてないで、二人を止めてくださいよぅ!」 飛び火や流れ弾で船が傷ついたらと思うとフュリーは気が気でない。その時、涼やかな声がしてフュリーがホッとして振り向いた。 「この騒ぎはいったい何事?」 「リザさんっ」 綺麗な眉間に皺を寄せてリザが言う。横付けした海軍の船の上で暴れるロイとハボックを見て、リザは眉間の皺を深めた。 「またあの二人なのね」 「リザさん、二人を止めてください!船に傷が付きますッ」 眼鏡の奥の目を吊り上げて訴えるフュリーに、リザは船の欄干に脚をかけて怒鳴った。 「二人とも!いい加減にしてくださいッ!!」 そう怒鳴ると同時に腰のホルスターから二丁拳銃を引き抜いて構える。ガウンガウンと狙い違わず撃ち込まれる弾丸からロイとハボックが悲鳴を上げて逃げ回れば、それを見ていた海軍の兵士が言った。 「あれは……世界一の銃の使い手、鷹の目のリザ?!」 「そ、それじゃあこっちの二人はメラメラの実の能力者、火拳のロイとモクモクの実の能力者、紫煙のハボック?!」 「じゃあこいつら、サラマンダー海賊団?!」 悪名名高い海賊団の名を聞いて、海軍の兵士達が一気に浮き足立つ。 「能力者なんて相手にしていられるかッ!とっとと船に帰ってくれ!!」 帰れ帰れと怒鳴られてハボックとロイは顔を見合わせた。 「どうします?」 「正直帰りたくないな」 「ですよねぇ」 自船の上ではリザが目を吊り上げて待っている。だが、ここで帰らなければ確実に体に穴があくのは確かで、二人は仕方なしにロープを伝って船に帰った。 「ちゃんと海賊旗掲げてろッ、馬鹿ッッ!」 「おお、逃げていく逃げていく」 二人が帰った途端這々の体で逃げていく海軍の船に、笑う男どもの後ろで咳払いが聞こえて、ロイとハボックは恐る恐る振り返る。そうすれば睨んでくる鳶色の瞳と目があって、ロイはにっこりと笑った。 「やあ、ご機嫌はいかがかな、リザ」 「最悪です」 リザはそう言うとうんざりとため息をつく。 「無駄な騒ぎは起こさないでくださいとあれほどきつく言っているのに───」 と、リザが小言を言いかけたのを遮るようにファルマンの声が響いた。 「島です!島が見えました!」 その声に前方を見れば目指す宝島の島影が見える。 「お小言は後だ、リザ。行くぞ、みんな、お宝を手に入れるぞ!」 「「おおッ!!」」 ロイの声に皆の気持ちが一気に宝探しへと傾いた。 「もう、仕方ないわね」 そうなってしまえば小言など言っても無駄なのは判りきっていて。 サラマンダー海賊団を乗せた船は、一路宝島へと向かっていったのだった。 2010/09/19 |
| お題10「海賊」です。二次で更に他のマンガをパロってどうするんだ、って言われそうですが(苦笑)だって、海賊と言ったらやっぱりアレですよね!ロイがメラメラの実、ハボがモクモクの実は絶対と思いましたが、やっぱり中尉は鷹の目のミホークならぬ鷹の目のリザだろうと(笑) 続きを書いてみました…………「変化10〜海賊 その後」 |