変化10〜海賊 その後


「うわー、なんか森森してるっスね」
 目指す島に上陸したハボックが辺りを見回して言う。お宝があると地図に記された島は、波打ち際のすぐ近くまで大きな森が迫っていた。
「おい、どっちに進んだらいいんだ?」
 目の前の森を見つめてロイが言う。島の地図を広げたブレダが周りの地形と地図とを確認して答えた。
「どうやらその真っ直ぐに延びる道を行けばいいみたいですね」
 そう言ってブレダは森を突っ切るように延びる細い道を指さす。その指さす先を見つめたロイはみんなを見回して言った。
「よし、行くぞ。私についてこい!」
 言ってズンズン歩き出すロイにリザが声をかける。
「船長、あまり訳も判らず突き進むと危険です」
「なに、さほど危険な場所には見えんし大丈夫だろう」
 ロイが言うとおり、色とりどりの花が咲き、あちこちに木の実が生っている森はさして危険そうには見えなかった。
「あの木の実って食えるんスかね」
 ロイに続いて歩きながらハボックが言う。同じように辺りを見回しながらブレダが答えた。
「どうだろうな、旨そうに見えるけど。お前、試しに食ってみれば?」
「はあ?ブレダが先に食えよ」
 お前が、いやお前が、と言い合う二人にファルマンがのほほんと言う。
「美味しそうに見えるものほど毒性があったりしますからね。気をつけませんと」
「う……やめとくか」
「そうだな、食うもんがないわけじゃなし」
 ファルマンの言葉にハボックとブレダが顔を見合わせて言った。
 六人は辺りの様子を伺いながら道に沿って歩いていく。その時、行く手になにやらけばけばしい色の大きな花が道を塞ぐように植わっているのが見えて、ロイは足を止めた。
「あれはまた一際凄いな」
 ロイが言う通り、肉厚の真っ赤な花弁に白い斑点が浮いているその花はいかにも毒々しい。花粉に毒でもあったら面倒だとは思うものの、それでもこの先に行くにはここを行くしかなく、ロイが再び歩き始めれば皆それに従った。
「こんな花、見たことないな」
 ロイは通りすがりにそう言いながら花を見上げる。それに続いてハボックが花の脇を通ろうとした時。いきなり花の茎がビョーンと伸びたかと思うと、真っ赤な花弁の中央にデカい口がのぞき、ガブリとハボックに噛みついてきた。
「えっ?うわわわわッッ!!」
 噛まれる寸前、ハボックの体がボワンと煙になって消える。餌を見失った花は、きょろきょろと首を振って辺りを見回すと今度はフュリーに襲いかかってきた。
「ギャーッッ!!」
 慌てて逃げるフュリーを花は根っこをうにょうにょとさせて追ってくる。その花めがけリザがガンガンッと銃を撃ち込んだ。
「キュウ」
 銃撃を受けた花はのけぞった勢いでそのまま地面に倒れ込む。しゅるしゅると縮んだかと思うと小さくなって消えてしまった。
「な、な、な……」
 ペタンと地面にヘたり込んでフュリーが目を剥く。煙から実体に戻ったハボックはロイにしがみついて喚いた。
「なんスかっ、あれ!食虫植物ッ?!」
「食虫というより食人という気もしますが」
 ハボックの言葉をファルマンがのんびりと訂正する。その時、ハボックをしがみつかせたロイの背後を指さしてブレダが悲鳴を上げた。
「うしっ、うし…ッッ!!」
「牛?」
 何を言ってるんだと首を傾げてロイは背後を振り向く。そうすればさっきの五倍もあるようなでっかい花が歯を剥いて立っていた。
「ギャーーーッッ!!」
「オレは旨くねぇっス!!」
 ガーッと襲いかかってくる花にロイとハボックが悲鳴を上げる。ボンッと煙になって逃げるハボックにロイが喚いた。
「あっ、ハボック、貴様ッッ!!」
「船長、危ないッ!!」
 フュリーの声にロイは咄嗟に指をすり合わせる。指先から迸った焔に包まれて、花は小さく縮んで消えてしまった。
「ハボック、よくも私を見捨てたなッ!」
「だってオレ、食われたくねぇっスもん!」
「そうか、生じゃ花も食いづらいだろうからな、ウェルダンにして食わせてやる!」
 ぎゃあぎゃあと言い合うロイとハボックにリザがピシャリと言う。
「二人とも、言い合ってる場合じゃありません。あれを見て下さい!」
 言われて二人が視線を向ければ、道のあちこちからさっきの赤い花が首を伸ばしてこちらを見ている。ロイは顔をひきつらせて言った。
「ここの他に道はないのか?」
「お宝がある場所にはここを行くしかないみたいです」
 地図を確かめてブレダが答える。ロイは行く手を阻む花を睨んでいたが、グッと拳を握り締めて言った。
「ここで怯んだらサラマンダー海賊団の名折れだ!食人植物がなんだッ!行くぞッ!!」
「さすが船長、カッコいいっス!」
「そうですねっ、行きましょう!」
 ロイの言葉にハボック達が声を上げる。スススとロイの背後にへばりつくとグイグイとロイを押し出した。
「な……っ、おい!」
「ここは船長が行くしかないっしょ!」
「そうですよ、今こそ火拳のロイの出番です!」
「植物の弱点はやっぱり火だと思いますよ」
「ガツンと一発、燃やして下さい!」
 ハボックに続いてブレダやファルマン、フュリーも口を揃えてロイを押す。互いに先を押しつけあう男どもにリザがため息をついて言った。
「まったく、意気地のない」
 そう言うなりリザはダダッと走り出す。襲いかかってくる花に次々と銃を撃ち込みながら道を切り開いていくリザに、男達は歓声をあげた。
「さすが私の副官だッ!」
「リザさん、カッコいいッ!」
「船長よりよっぽど男前っス!」
「もうホレそうです!」
「鷹の目のリザ、最高ッ!」
 ロイ達は口々に叫びながらリザの後を追って走る。化け物花の大群を抜けて、やっと一息ついた時、今度は木の上からなにやらボトボトと落ちてくるものがあった。
「ウワッ!なんだこれッ!!」
 茶色い握り拳大の栗に足と目玉がついた生き物が大量に降ってきて体に這い上ってくる。ギャーッギャーッと喚けば、ロイがパチンと指を鳴らした。
「あちっ!あちちッッ!!」
 栗の化け物と一緒に燃やされかけてハボックが叫ぶ。パンパンと火を叩いて消し止めると、ロイに向かって怒鳴った。
「オレまで燃やす気っスか、船長ッ!」
「さっき失礼なことを言ったろう、反省しろ」
 どうやらさっきリザに向かって叫んだ言葉をしっかり聞いていたらしい。ブーブーと文句を言うハボックを無視して道の向こうを見たロイは、ウネウネとやってくる大きなボールの群れに目を見開いた。
「今度はなんだ……?」
 身構えて待てば近づいてきたのが大きな毛虫と判る。黄色い大玉をいくつも連ねたような毛虫に、ロイは仰け反りながらも手を突きだして叫んだ。
「なんの、これしき!私の焔で一発だッ!」
 そう叫んで指をすり合わせれば焔が巨大毛虫を襲う。やっつけたように見えた次の瞬間、毛虫は全身を怒りで真っ赤に染めて襲いかかってきた。
「ギャーッ!怒ったッッ!!」
「燃やしたら怒るに決まってるっしょ!!」
 悲鳴を上げて逃げながらハボックが叫ぶ。ボンッと煙になったハボックは、毛虫の上で実体化した。
「お」
 足をついた瞬間ぼよ〜んと体が跳ねてハボックは目を丸くする。ぼよんぼよんと毛虫の上で跳ねながら言った。
「みんな、上なら大丈夫だ!上がって!」
「上がれって、そんな簡単に行くかッ!!」
 キャーキャーと逃げ回りながらそれでも何とか全員毛虫の上に上がるとぼよんぼよんと跳ねながら長い体の上を移動する。漸く尻尾までたどり着いて、ロイ達はハアハアと息を弾ませた。
「一体なんなんだ、この島はっ」
「お宝ゲットする前に食われそうな気がするっス」
 正直帰りたい気満々だったが、帰るためにはまたこの道を戻らなければならない。同じ戻るならお宝くらいゲットしなければ割に合わないと、気を取り直して歩き出せば向こうから何かがやってくるのが見えた。
「またなんか来ましたよっ」
 フュリーがリザにしがみつきながらビクビクと言う。それが何なのか立ち止まって待っていた一行は、やってきたのが二本足で歩く亀だと気づいて目を丸くした。
「二本足で歩く亀なんて初めて見ました」
 と、ファルマンが感心したように言う。その時、立ち止まった亀が腰を振って踊り出した。
「踊ってるよ、なんかかわいくね?」
「亀は友好的なんですね」
 ホッとため息をついてフュリーが言った時、突然亀が手足を甲羅に引っ込めたかと思うと、高速回転させた甲羅ごとぶつかってきた。
「ウワアッ!!」
「ギャーッ!!」
「どっ、どこが友好的なんだっっ!!」
 走り回る甲羅をぴょんぴょんと飛び跳ねてかわしながら皆が叫ぶ。
「くっ」
 狙いを定めて撃ち込んだリザの弾も、高速で回転する甲羅に弾かれてしまった。
「うわっ、もうダメだッ!!」
 飛び跳ねた拍子にバランスを崩したブレダが、尻からドスンッッと地面に落ちる。その振動で辺りの地面が大きく揺れて、回転する甲羅も遠くへ弾き飛ばされてしまった。
「うわー、ブレダのヒップドロップってすげぇ」
「うるさいっ!」
 思いがけず技を決めてしまったブレダが顔を赤らめて怒鳴る。それでも何とか亀をやっつけ、ロイ達は森の奥へと進んでいった。


 その後も歩き回る爆弾やらガイコツ魚やら、見たことも聞いたこともない敵を蹴散らして、ロイ達は漸く森の最奥へとたどり着く。古びた宝箱を前にして、達成感に笑みを浮かべるハボック達にロイが言った。
「みんなご苦労だった。遂にお宝とご対面だ」
「あれだけ大変だったんですから、きっとすごいお宝っスよ」
「金貨かなぁ、宝石かなぁ、わくわくしますね」
「早くあけてください、船長」
 期待に満ちた声に頷いてロイは跪くと宝箱に手をかける。グッと力を入れれば僅かな抵抗の後、宝箱の蓋がゆっくりと開いた。
「一体なにが」
 ワクワクしながらロイ達が覗き込んだ時、宝箱の中から何かがピョーンと飛び出した。ギョッとして後ずさるロイ達の前で飛び出してきたものはクルッと回転してお辞儀する。それは頭に大きなキノコを被った小さな人だった。
「助けてくれてありがとう!かくれんぼしてたらうっかり閉じ込められて困ってたんだ!お礼にこれをあげるねッ!」
 キノコはそう叫ぶと持っていた鞄の中から小さなパックを出してロイに手渡す。「じゃあね」と手を振って走り去るキノコを呆然として見送っていたハボック達は、ハッとしてロイの手の上のパックを見つめた。
「なんスかっ、それ!」
「宝石とか?」
「待て、今開ける!」
 騒ぐ部下達に言ってロイはパックの蓋を開ける。おし合いへし合いして覗き込んだパックの中には。
「……キノコ炒め?」
 色とりどりのキノコからはいい匂いが漂ってくる。目を丸くしてキノコ炒めを見つめていたロイ達は、次の瞬間大声で叫んだ。
「あれだけ苦労してお宝がキノコ炒めっ?」
「なんだよ、あのキノコ人っ!!」
「なんであんなのが宝箱の中に入ってんだよっ!!」
 がっくりとヘたり込んで、ロイは腹立ち紛れに手にしたパックを投げ捨てようとする。それを慌てて取り上げてハボックが言った。
「ちょ…っ、捨てないでくださいよ!あんな苦労したんスからせめて食べないと」
 ハボックはそう言ってキノコ炒めを指で摘むとあーんと大きく口を開ける。
「待ちなさい!訳の判らないものを口にしては…っ」
 ハッとしたリザが止める間もなく、ハボックはキノコ炒めを口に放り込むとムシャムシャと食べてしまった。
「ちょっと塩味きついけど、美味しいっスよ」
「おい、一人で食うな!俺にも寄越せよ、ハボ!」
 そう言ってブレダがハボックの手からパックを取り上げる。摘んで食べようとした瞬間、ハボックの頭がボンッと音を立てて白地に黄色い斑点が浮かんだキノコに変わってしまった。
「ワーッ?!頭がキノコになったッ!!」
「ギャーッ、毒キノコかっ、これ?!」
 頭を抱えて走り回るハボックからブレダ達が逃げ回る。それを見てリザはうんざりとため息をついた。
「だから訳の判らないものを口にしてはダメと言ったのに」
 天下に名高いサラマンダー海賊団。お宝ゲットへの道はまだまだ果てしなく遠いのだった。


2010/10/02


「変化10〜海賊」のその後です。いや、続き読みたいって仰ってくださる方がいたんで書いてみましたが……。すみません、訳の判らん話でorz 今実は「スーパーマリオブラザーズWii」をやってましてね、この森はWorld 5のイメージで書いてます(苦笑)歩くパックンフラワー見たときは思わずウケてしまった(笑)でっかいハナチャンとかまとわりついてくるミニクリボーとか。ノコノコの甲羅をついうっかり蹴飛ばしてしまって自滅するのはしょっちゅうです(爆)ミニゲームでモンスターを倒して宝箱の中からキノピオを助けるってのがあるんですが、くれるお宝がキノコっていうのがねぇ(苦笑)そんなでマスタン組 in スーパーマリオブラザーズってことで(笑)