「あ、カレイシュウがする」 「えっ?!」 リビングに入ってくるなりハボックが言った言葉に、ソファーに座って本を読んでいたロイはギョッとして顔を上げる。ハボックが何か言うかとその動きをロイは目で追ったが、ハボックはそれ以上は何も言わず、リビングを抜けるとその奥に続くキッチンへと行ってしまった。 「加齢臭、だと?私が臭うということか……?」 思いもしなかった言葉にショックを受けながらも、ロイはクンクンと自分の匂いを嗅いでみる。何か変な匂いがするだろうかと鼻をひくつかせて必死に嗅いでみたが、愛用のコロンの匂いしかしなかった。 「自分じゃ判らないって事か?」 自分の匂いは自分では判らない可能性もある。ロイは立ち上がるとパタパタと服をはたいてもう一度匂いを嗅いでみた。 「────判らん」 もし本当に臭いとしたら──。そう考えただけでロイはゾッとして体を震わせる。このロイ・マスタング、加齢臭がすると言われるくらいなら死んだ方がましだ。口が臭うだろうかと口元を手で覆ってハーッと息を吐いて嗅いでみたり、脇の下が臭わないかと嗅いでみたり、流石に靴下の臭いまでは確認する気はしなかったものの、ロイは自分が本当に臭っているのかと必死に確認してみた。だが。 「やっぱり判らん。私は本当に臭っているのかッ?」 確かにハボックは「加齢臭」と言っていた。もしかしてもしかすると聞き間違いかと僅かな希望を抱いてみたが、それも単なる希望的観測としか言えなかった。 「やはりここはもう一度ハボックに確認するか……?」 言ったのはハボックだ。ハボックに確認するのが一番手っとり早い。それに。 「加齢臭がする男とはつき合いたくないと思われたら」 同性同士というだけで既にハードルが高いのだ。その上臭いとなったらつき合うのにも益々抵抗が出るに違いない。ロイとしてはハボックを手放す気など毛頭なかったし、それに今ならまだ臭いもなんとか出来て無様な理由での別れも回避出来るかもしれないと思えた。 「く……ッ、恥ずかしいがここは致し方あるまい……ッ」 恥を忍んでハボックに確認しようとロイが思った時、ハボックがコーヒーのカップを手にリビングに戻ってくる。立ち尽くすロイの前に「どうぞ」とコーヒーを置くと、向かいのソファーに腰を下ろして雑誌を広げた。 (こ、これは私の臭いをコーヒーの香りで誤魔化そうということか……ッ?) コーヒーのいい香りがリビングに広がる中、ロイはそう思ってハボックを見つめる。どうにも尋ねる言葉が出てこず、じっと見つめていればハボックが顔を上げた。 「どうかしたんスか?大佐」 ソファーに座らず立ち尽くしているロイをハボックが不思議そうに見上げる。小首を傾げるハボックに、ロイは恐る恐る尋ねた。 「ハボック、その……私は臭うか?」 「は?」 「いやだからその、……私は臭いかと聞いたんだッ!どうなんだッ!」 「なんスか、突然」 声を張り上げて尋ねるロイに、ハボックが目を丸くする。そんなハボックにロイは苛々として言った。 「さっきお前が言ったんだろう!加齢臭がするって!それは私が臭いってことじゃないのかッ?もしそうならはっきり言ってくれ!」 「加齢臭……」 声を張り上げるロイの言葉をハボックが繰り返す。ロイがギクリと震えた時、ハボックがプッと吹き出すとゲラゲラと笑いだした。 「あっはっはっ、かっ、加齢臭って!」 「な、なんだ、なにがおかしいッ?私は真剣に悩んでだなッ!」 ゲラゲラと腹を抱えて笑うハボックにロイは目を吊り上げる。笑いが収まらないままに「違う違う」と手を振って、ハボックは涙の滲む目元を指でこすった。 「違うっスよ、加齢臭じゃなくてカレー臭。アンタ、どっかでカレー食べて来なかったっスか?」 「……は?カレー臭……?」 クックッと笑いながら言うハボックにロイは目を丸くする。少し考えてからロイは言った。 「さっき出かけた時、近道で市場を抜けたらカレーの販売やってたから試食してきた……」 「ああ、じゃあそれっスよ。アンタ、カレーの匂いがするの」 リビングに入った途端カレーの匂いがしたので思わずカレー臭がすると言ったのだと言うハボックの言葉を、ポカンとして聞いていたロイは次の瞬間目をキッと吊り上げた。 「それならちゃんとカレーの匂いがすると言えッ!カレー臭なんて……私が加齢臭がするのかと思ったじゃないかッ!」 「それでアンタ、焦ってたの?あはは、すっげぇおかしい……ッ」 「おかしくないッ!」 再びクスクスと笑い出すハボックにロイは怒鳴る。「まったくこの紛らわしい事をッ」とブツブツ言いながらロイは乱暴に腰を下ろした。 「心配しなくていいっスよ。もし大佐がヨボヨボのおじいちゃんになってちょっとばかり臭っても、オレ、大佐のことずっと好きっスから」 ニコニコと笑ってそんなことを言うハボックをロイは睨む。 「ホントっスよ。大佐の匂いはいつだってオレにはいい匂いっスもん」 「────馬鹿っ」 うっとりと笑ってそんな事を言うハボックに、ロイは紅くなった顔を誤魔化すようにゴクゴクとコーヒーを飲んだ。
いつも遊びに来てくださってありがとうございます。拍手、本当に励みになります、嬉しいですーvv
カレーライスとかカレーを使った料理をして部屋の中でカレーの匂いがしていると、息子がすぐ「カレー臭がする」って言うんですよね。カレーのいい匂いがすると言う意味で言ってるんですが、カレー臭って、オイ(苦笑)なんかちっとも美味しそうな感じがしないと思うのは私だけ?(笑)海苔の匂いがすると「のり臭」って言うし、臭ってそもそもいい匂いじゃないですよねぇ。やめてよ、それ(苦笑)
とりあえず昨日までにバレンタインネタ三本、書き終わりました〜!この十日あまりで企画三本書いて、更新二回して、日記も書いて……なんかもの凄い働いた気がする〜(ヘロヘロ)でもまだ週末の更新は手つかずだし「黒スグリ姫」ネタも書いてない……。なによりまだ三本ともタイトルついてないんだよ!(爆)あーもう、ホントタイトル考えるの苦手(苦)そのまま「2015バレンタインRH1」とかだったらすみません(汗)でもって週末更新バレンタインだけだったらすみませんー(オイ)
以下、拍手お返事です。
なおさま
指、なるほど、ロイハボもヒュハボも好きだから薬指が長いんですね!ヒュハボどころか私、エドハボもブラハボも好きだしな!(笑)「えっ?なんで?」と返すと浮気してるのか……。でも意外にそう返してしまいそうですよね(苦笑)
阿修羅さま
そちらでは薬指が長いと「頑固者」なんですか。諸説ありそうですよね(笑)小指かぁ……私は全体的に指が短いです。手袋買うと大抵指先が余ります(笑)
更新、とっても楽しみにしてます(^-^) の方
わあ、本当ですか?ありがとうございます、嬉しいですーvvやはり更新待っていて頂けると思うとめちゃくちゃモチベーションが上がります!これからも頑張りますのでどうぞ読んでやってくださいねv
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