しょぼいカオすんなよベイベ  後編


 ホテルの部屋に入って、ロイはハボックに座るように薦めると、自分もソファーに腰を下ろした。
「食事はすんだのか?」
 と訊けば小さく首を振るハボックに「ルームサービスでも?」と言ったが、ハボックは食欲がないからと断った。ロイは暫くハボックの顔を見つめていたが口を開くと言った。
「ヒューズとなにがあったんだ?」
 ロイの言葉にびくりと体を震わせて、だがハボックは答えなかった。促すようにロイがハボックの名を呼べば、悩んだ末小さな声で答えた。
「今夜、オレのアパートに来るって…」
 そう言うハボックにロイは目を瞠って、それから目を細めるとハボックに言う。
「で、お前はアパートに帰らなかったのか?」
 そう言われてハボックはパッと顔を上げると「だって…っ」と声を上げた。だが、次の瞬間、顔を伏せてしまう。
「ハボック」
「…オレ、よく判んなくて。中佐のこと結構好きだけど、でも、セ、セックスって言われても…」
「ヒューズとはセックスしたくない、か?」
「だからっ、判んないって…。そんな慌ててしなくても、一緒にいるだけじゃダメなんスか?」
 まるで子供のようなセリフにロイは苦笑する。
「子供のママゴトじゃないんだからな。好きな相手が側にいたらしたいと思うのが自然だろ?」
「でも…」
 ロイはそんなハボックを見ながら立ち上がるとハボックの目の前に立った。
「お前、ちゃんと判ってんだろうな?」
「え?」
「私もお前を口説きたいと言ったんだぞ。つまりはお前を抱きたいと思ってるということだ」
「た、いさ…?」
「そんな男のところにのこのことついて来るなんて、お前もその気なんだと思うからな」
 そう言われて、ハボックは慌ててソファーから立ち上がろうとする。だが、ハボックが立ち上がる前にロイはハボックの肩を掴むとソファーに押し倒した。
「たいさっ」
「もう、遅い」
「やだッ」
 慌てて押し返そうとする腕を頭上に一まとめにして、ロイはハボックをソファーに押さえつけた。脚の間に体を入れてハボックの抵抗を封じ込めると、ロイはハボックに唇を重ねる。歯列を割って差し入れた舌をハボックに噛まれて、ロイは思わず唇を放した。怒りを込めて見下ろすと張力いっぱいに水の膜を張った空色の瞳と目が合う。ハッとしてロイは暫しハボックを見つめたが、優しく微笑むとその頬を撫でた。
「私が嫌いか?」
 そう問えばハボックはふるふると首を振る。その拍子にぽろりと零れた涙にロイの心臓がとくんと鳴った。
「た、たいさのことは、ずっとちゅうさに、き、いてたしっ、はじめてあったきが、しなかったけどっ」
 泣き声でたどたどしく伝えようとするその様子に、ロイの中にハボックへの愛しさがこみ上げる。
「でも、なんで、オレなんスか…っ?たいさ、オレの、こと…っ、し、しらないじゃ、ないっ、スかっ」
 そう聞かれてロイはハボックの髪を撫でた。
「人を好きになるのに時間なんて要らないだろう?」
 そう囁いてロイはハボックをじっと見つめる。
「一目惚れなんだ。初めて会ったときから忘れられなかった」
 ロイの言葉にハボックの瞳が見開かれた。
「お前が好きだ、ハボック…」
 そうしてロイはハボックに口付ける。ハボックは今度は抵抗しなかった。舌を差し入れハボックのそれを絡め取ってきつく吸い上げれば組み敷く体がびくりと震える。ロイはハボックの軍服の上着をくつろげるとシャツの中に手を滑り込ませた。探し当てた乳首をきゅっと摘み上げると大きく震える体に気をよくして、ロイはシャツを捲り上げるとぷくりと立ち上がったソコに舌を這わせた。
「んっ…くぅ…」
 舌を這わせ指でくりくりと押しつぶすとハボックの唇から熱い吐息が零れる。するりと脇腹を撫で上げ、びくびくと震える体を丹念に愛撫していった。手をハボックの中心へ這わせると、ソコはズボンの布地を押し上げて窮屈そうに張り詰めている。ロイはズボンをくつろげると熱く滾ったハボック自身を取り出した。
「あっ…た、いさっ」
「ん?」
「も…や、だ…っ」
 怯えてロイの腕を押し留めようとするハボックにロイは優しく口付ける。そうして取り出したハボック自身を上下に扱けばロイの口中に熱い吐息が流れ込んできた。
「ん…んんっっ」
 もがく体をやんわりと押さえつけてぐちゅぐちゅと擦り上げれば、一層硬くそそり立ってとろとろと蜜を零すハボック自身をロイは楽しげに追い上げていく。
「あ、あ、あ…も、イくっ」
 そう呟いた途端、ハボックの中心から熱が迸った。荒い息を零してうっすらと涙を滲ませるハボックをロイはうっとりと見つめる。手の中に放たれた熱をハボックに見せ付けるように舐め上げると、ロイはハボックの項に唇をよせた。
「可愛いよ、ハボック…」
 耳の中に吹き込むように囁けば、ハボックは真っ赤になって瞳を伏せた。ロイはハボックのズボンを下着ごと剥ぎ取ってしまうと、熱を吐き出したばかりのハボック自身に唇を寄せる。ロイの熱い口中に包み込まれて、ハボックの体が大きく跳ねた。
「ひっ…はなし、てっ」
 ロイはハボックの言葉を無視して唇と舌でハボックを追い上げていく。瞬く間に熱を取り戻してそそり立つハボック自身をロイは容赦なく追い立てた。ハボックはなんとかロイを引き離そうと、その黒い髪に指を絡ませる。だが、ろくに力の入らないそれは、むしろロイを引き寄せるようにしか見えなかった。
「たいさっ…もうっ…」
 限界を感じてそれでも必死に耐えようとするハボックを、ロイは強く吸い上げた。
「やああっっ」
 びくびくと震えてロイの口中へ熱を吐き出してしまって、ハボックはすすり泣いた。その頼りない表情にロイはハボックをもっと啼かせたい衝動に駆られる。ハボックの脚を大きく広げるとロイは奥まった蕾に舌を這わせた。
「や、だっ…たいさっ…んなトコ…っ」
 身を捩って逃れようとする体を押さえ込んでたっぷりと唾液を流し込むと、ロイは滾る自身を取り出し、ひくつく蕾へ押し当てる。
「あ…」
 びくんと震える体を押さえ込んで、ロイはハボックの中へと体を進めていった。
「いっ…くぅっ…」
 みしみしと狭い器官を割り開いて入ってくる熱い塊りにハボックは体を強張らせる。そんなハボックの耳元にロイは囁いた。
「ハボック、力をぬけ」
「ムリ…いわん、で…くださ…」
 ロイは宥めるようにハボックの頬や肩を撫でる。ゆっくりと休みながら、それでも根元まできっちり埋め込むと、ロイはそこで一度動きを止めた。
「痛いか?」
 と聞けば、ハボックは小さく首を振った。
「いたくは…な、い…スけど…」
 くるしいと呟くハボックにそっと口付けると、ロイはゆっくりと抽送を始めた。
「ひ…あっ」
 途端に強張る体を宥めるように撫でながら、ロイは熱いハボックの中を味わっていく。動くたびに逃すまいとする様に絡みつく熱い襞にロイは眩暈がした。
「あ…な…んか…っ」
「どうした…」
「やだ…っ、ど、して…っ」
「ハボック…?」
 ロイにしがみ付いて体を震わすハボックが何を言おうとしているのか判らず、ロイはハボックの名を呼んだ。その時、ハボックの唇から零れた言葉にロイの心臓が跳ね上がった。
「きもち…イ、イ…っ」
 ぐっとハボックの中で嵩を増すロイにハボックの瞳が見開かれる。
「な…アンタ…な、に…おおきく、し、て…っ」
「お前が可愛いこと言うからだ…」
「な、なにも…いってな…ああっ」
 思い切り突き上げられてハボックの唇から悲鳴が上がった。ロイはハボックの脚を高く掲げると容赦なく突き上げた。
「い…あっ…あああっ」
 奥まったしこりを突かれてハボックの中心からどくりと熱が迸る。だが、ロイは構わずがんがんと攻め立てる。達したばかりの敏感な体を乱暴に揺さぶられてハボックはぼろぼろと涙をこぼした。
「ひあ…も、やめ…っ…きつ…」
 泣きじゃくるハボックにぞくぞくしたものを感じて、ロイは手加減できなくなる。赦してくれと、啼くハボックを思うままに犯して、ロイはハボックの中に熱い想いを放った。

 その後、ハボックの体を清めてやろうと連れて入ったバスルームでも、結局散々にハボックを啼かせてしまい、ベッドに横たえられたハボックはもう、息も絶え絶えだった。そんなハボックの髪を撫でながら嬉しそうに笑うロイを、ハボックは枕に顔を埋めて横目でちらりと見やるとため息をつく。
「どうしよ…オレ…」
 そう呟くハボックに、ロイは僅かに眉を寄せた。
「後悔してるのか?」
「つか、オレ、アンタに会ってまだ半日もたってないんスけど…」
「だから?」
 全然気にした様子のないロイにハボックはため息をつく。
「タラシのアンタは一夜限りのお付き合いなんてザラなんでしょうけど…」
 ハボックがそういった途端、ロイはハボックの髪を引っつかむとぐいぐいと引っ張った。
「いててててっっ!いたいっ、いたいっスよ、たいさっ!!」
「お前が失礼なことを言うからだ」
「…え?」
 ロイはハボックの髪から手を放すとため息をついて言った。
「確かにそういう女性もいないことはなかったがな」
 そう言ってロイはハボックの顔を覗き込む。
「そんな軽い気持ちで男に手が出せるか」
 不安げに揺れる空色の瞳にロイは優しく笑いかけた。
「言ったろう?お前が好きだ、ハボック。好きなんだよ」
 ロイの言葉にハボックは赤くなって枕に顔を埋める。
 そんなハボックを愛おしそうに見つめて金色の髪を弄っていたロイはふと気がついたように言った。
「そういえば、お前、最初から私のことを知ってたな。ヒューズに多少話は聞いていたんだろうが、顔は…ああ、ヒューズの机の上に写真があったか」
 ハボックに問いかけていながら自分で納得しているロイにハボックは苦笑した。
「焔の錬金術師と言えば有名でしょ。それにオレ、昔の新聞とか軍の広報誌とか読み漁りましたから」
「新聞?」
「中佐にアンタの話、いろいろ聞くうちにどんな人なのかなって。ほんと、すげぇ小さい記事まで読みましたもん。アンタはオレの憧れだったから…」
 ずっと会ってみたかったんです、と言われてロイは目を見開いた。
「ずっと憧れてて会ってみたくて、だから今日、街で見かけた時、すっごく嬉しかった。声かけたくて、でもかけられなくてついて歩いてる内にあんなことになって…」
 ロイはハボックの髪をかき上げながら訊いた。
「私のことが好きか、ハボック?」
 ストレートにそう訊かれて、ハボックは目元を染めながら、それでもはっきりと頷いた。だが、次の瞬間、その空色の瞳を曇らせる。
「でも、オレ、中佐に…。そもそも中佐から逃げてあそこに居たのに、アンタとこんなことになって…」
 オレってサイテーと呟くハボックをロイはそっと抱きしめた。
「人の心に鎖はつけられないだろう?それに、ヒューズには悪いが今更譲ってやる気もないしな」
「でも…」
 ロイは俯せたハボックの体を反すと、真正面からその瞳を見つめて言った。
「愛してる、ハボック。お前は?」
 真摯に見つめてくる漆黒の瞳にハボックは目を瞠ると、次の瞬間泣きそうに微笑んだ。
「オレも好きです…」
 そうしてハボックは下りてくる唇を受け止める。2人は深く口付けて互いの思いを確かめるのだった。

 翌朝。ロイは鳴り響く電話の音で起こされた。隣でなにやら呻いているハボックの髪をくしゃりとやると、ロイは手を伸ばして受話器を取った。
「はい?」
『ロイ?俺だ。朝早くから悪いがハボックから連絡か何かなかったか?昨夜から帰ってないんだ』
 ロイはヒューズの言葉に傍らのハボックを見下ろす。どうも、昨日の行為が祟ってまともに起き上がれないらしいハボックに、ロイはどうしたものかと視線を彷徨わせた。
『ロイ?』
 ヒューズの訝しげな声に、ロイはため息をつくと腹を括った。
「あー、悪いな、ヒューズ。ハボックならここにいる」
『…はあっ?なんでハボックがお前の所にいんだよっ?』
「だから悪いって言ったろ?」
『…て、お前、まさか…っ』
「それと、今日、ハボックは休ませるからな。動けそうもないし」
『な…っ!ロイっ!おまえっっ!!!』
「じゃな、切るぞ」
 ロイはそう言うと罵詈雑言を喚きたてる受話器をフックに戻した。心配そうにロイを見上げるハボックの頬にキスを落とすとロイは言った。
「心配するな」
「オレ…中佐に会わす顔、ないっス…」
「いいさ、私と一緒に東方司令部に来ればいい」
「えっ?でも…」
「放す気はないぞ」
 ぐっと引き寄せられて、ハボックは真っ赤になって口ごもる。ロイは優しくハボックの髪を撫でながら、後少ししたらここに飛び込んでくるであろう親友に、どこから話そうかと考えるのだった。


2006/11/19


拍手リクで「ぷちパラレルで元々はヒューズの部下だったハボックを ロイが見初めて強引に奪ってしまうヒュハボ→ロイハボ…というロイハボ初物語が読みたいです。ロイが悪者でヒューズが可哀相な気もしますが、その後ヒューズにも素敵な奥様が…って事で」でした。すっ、すみませんっっ!!グレイシア、出てません。なんとか出そうと考えたのですが、どうにも上手く繋がらなくて〜〜。この後ヒューズはロイにハボを取られて自棄酒を飲んで潰れた所を、通りがかったグレイシアに介抱されて、で、めでたくゴールイン…という話がある予定でした。でも、どうにもそれつけると蛇足っぽくなっちゃうので。ごめんなさいです。ヒュハボもちゃんと出来上がる前にロイに掻っ攫われてるし(苦笑)今ひとつ、リク未消化で申し訳ありませんが楽しんでいただけたら嬉しいですぅ。