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「おい、そうやって切ったらこっちの方がでかいんじゃないのか?」
「何言ってるんです、そう切ったらここが小さくなっちゃうじゃないですか!」
「6つに分けるんですから一切れ60度で切ればいいですね」
「だああああっっ、おまえらっ、ごちゃごちゃ煩せぇよっ!!手元が狂うだろうがっ!」
 ハボックはケーキを前に大声を上げた。
「ぐちゃぐちゃ言うとやらねぇぞっ」
 ハボックの一言にブレダたちが口を閉じる。ハボックは息を吐くとナイフを握りなおした。

 ここは東方司令部司令室。もうすぐ午後のティータイムの時間である。普段ならコーヒーとあとは精々クッキーが出る位だが、今日はハボックがたまたま捕まえた空き巣のお礼にとケーキの差し入れを貰ったので、皆でそれのお相伴に預かろうとしていた所だった。フルーツのたっぷり載ったケーキを食べたい人間は6人。誰もすこしでも譲ろうという殊勝な考えなどこれっぽっちも持っていない輩ばかりだ。きっちり六等分しなかったら何を言われるかわかったものではない。
(大体、オレが貰ったんだからオレ一人で食ってもいいはずじゃないのか…?)
 それを一体なんでこんなプレッシャーを、とハボックは思った。だがそんな常識が通用する相手がいるわけないのはハボックが一番知っていた。ハボックはため息を付くとケーキにナイフを入れる。次の一刀を入れようとして手元に集まる視線に手が止まった。
(も、ヤダ…)
 ハボックはがっくり肩を落とすと次の瞬間ぐっと顔を上げて一気に切り分けた。
「おま…っ、そんな乱暴に…っ」
「うるせー、文句は受けつけねぇ、ぐちゃぐちゃ言うなら食うなっ」
 そう言ってハボックは切り分けたケーキを皿に移す。一番大きいと思われるものを取るとホークアイに差し出した。
「はい、中尉、どうぞ」
「ありがとう」
 にっこり笑って受け取るホークアイにハボックも笑って、次の皿をロイに差し出す。
「大佐」
 ロイは皿を受け取ると呟いた。
「何故司令官の私より中尉の方が先なんだ?」
「何か問題でも?」
 ハボックに言われてロイは慌てて首を振る。流石にここで文句を言うほどロイも命知らずではなかった。
「後は適当にとれよ」
 というと、ブレダたちが我先にと皿へ手を伸ばす。ハボックはそれには目もくれずケーキが載っていた大皿とナイフを手に司令室を出た。給湯室に入ると流しの中へ皿を入れる。
「…ったくもう、みんな意地汚いんだから」
そ う言いながらケーキサーバーに残ったクリームを指で掬い取った。その時。
「ハボック」
 呼ばれて振り向くと給湯室の扉にロイが寄りかかって立っている。
「大佐」
 ロイは中へ入ってくるとハボックを見つめた。
「全く、上司に一番でかいのとは思わんのか?」
 目を細めて言うロイにハボックは答える。
「中尉より先に手を出す度胸、あるんスか?」
 大体、レディファーストってのがアンタの主義でしょうがというハボックにロイはくすくすと笑うとクリームの付いたハボックの手を取った。
「たいさ?」
「足りなかった分、ここから貰おう」
 そう言うとハボックが手を引っ込める前にその指を口に含んだ。
「…っ、たいさっ」
 慌てたハボックが手を引こうとするのを許さず、ゆっくりと指に舌を這わす。
「あ…」
 指を舐る舌の動きとロイの視線を痛いほどに感じながら、ハボックは身動きすら出来ずにロイの瞳を見つめた。ぞくりと背筋を駆け上がるものに、思わず目を閉じる。次の瞬間、ロイは手を放すと楽しそうにハボックを見やった。
「早く戻らないと全部食べられてしまうぞ」
 そう言って、さっさと給湯室を出て行く。ハボックは目を見開いて倒れそうになる体をシンクで支えた。
「…ぁんの、エロたいさっ」
 目元を染めて悔しそうに呟く。ハボックはため息を付くとシンクについた自分の手をちらりと見た。ロイが舐めたその指にそっと舌を這わすと手を握り締めて、足早に給湯室を後にした。


2006/8/1


拍手で「ロイハボでハボがケーキかなにかを均等に切り分けるシーンのある話」を読みたいとのリクをいただきました。いや、自分じゃ絶対思い浮かばないネタなので「面白っっ」と思わず飛びついたわりにはしょうもない話になってしまいましてゴメンなさいデス。しかも、短いしそれにこれ、ロイハボになってるの??でも、こういうワンシーンネタってすごい好きですvv