千草色の君を抱いて  後編


 肩を貫通したものの幸いにも命に別状はないと判り、ロイはホッと胸を撫で下ろした。病室で頭を下げるロイに母親は慌てて首を振る。
「マスタングさんに会ってジャンは変わりました。あの子にとって貴方は本当に大切な人なんです。きっと命に代えても守りたいと思うほど…。怪我をしたのは貴方の所為じゃありません」
 そう言うと母親は「自分が側にいるより貴方が側にいてくれた方があの子が喜ぶから」と言ってハボックをロイに任せて病室を出て行った。ロイは眠るハボックの傍らに椅子を引き寄せると腰を下ろしハボックの顔を見つめた。最後に見た時より痩せただろうか。ロイは早くハボックの空色の瞳が自分を映し出してくれることを祈って、ハボックを見つめていた。

 どれほどの時間がたったのだろう、ロイの視線の先で金色の睫が震えゆっくりと目蓋が開いた。数度瞬きすると、その空色の視線がロイを捉える。
「たいさ…」
「気分はどうだ?」
 ロイの言葉にハボックは答えずロイに向かって手を差し出す。ロイはその手をぎゅっと握ってやった。
「あいたかった…ずっと、あいたかった…」
「ハボック…」
「ごめんなさい…あの時、オレ、うまくできなくて…でも、きっとうまくできるようになるから…」
 だから側に置いてくれと呟くハボックにロイは目を瞠った。
「何を言って…っ」
 責められこそすれそんな風に謝られて、ロイは言葉に詰まる。ハボックはロイの顔をひたと見つめるとささやいた。
「たいさ…すき…ずっとそばにいたい…」
 ハボックの素直な言葉にロイの中のわだかまりが溶けていく。ロイは握ったハボックの手を自分の頬に押し当てると涙を零した。
「いいのか?あんなに酷い事をした私を…」
「アンタでなきゃイヤだ…」
「ハボ…っ」
 ロイはまっすぐに見つめてくる瞳に引き寄せられるようにハボックをそっと抱きしめた。

 時間の許す限り看病に通って、ようやく退院できるまでに回復したハボックをロイは自宅へと連れてきた。あの日と同じように背もたれを抱え込むような形でダイニングの椅子に座ったハボックに温かいココアを出してやると、自分はコーヒーのカップに口を付ける。暫く何も言わずに手にした飲み物を飲んでいた二人だったが、やがてハボックが口を開いた。
「たいさ…プレゼント、くれないんスか?」
 甘えるような声でそう言うハボックをロイはまっすぐに見つめることが出来ない。ロイは目を逸らしたままハボックに答えた。
「ダメだ」
 思いもしない答えにハボックの顔が泣きそうに歪む。「どうして…」と呟く声にロイは苦しげに言った。
「キスだけじゃ終われない。お前に触れたら私は自分を抑えられない」
 ロイの言葉にハボックが目を瞠る。乱暴に引き裂かれた記憶が蘇り、ハボックは微かに体を震わせたが、ロイの横顔をまっすぐに見つめて言った。
「いいよ…アンタになら…」
 あっさりとそう答えるハボックにロイは声を荒げた。
「簡単に言うなっ!私がこの間お前にしたことを忘れたわけじゃないだろうっ?」
「…うん…今度は上手にするから…アンタが望むようにするから…だから…教えて…?」
「ハボ…っ」
 ロイはハボックを見つめて息を飲む。ハボックは立ち上がるとロイの側へやってきて微笑んだ。
「たいさ…だいすき…」
 ハボックはロイにしがみ付いて囁く。
「オレをアンタのものにして…?」
 その言葉にロイは抗えず、ハボックを強く抱きしめると噛み付くように口付けた。

 ロイはハボックの衣服を全て剥ぎ取るとそのほっそりした体をベッドに横たえた。まだ少年の域を抜け出ないハボックの体はしなやかで瑞々しく、触れると吸い付くようだ。ロイはハボックに優しく口付けると唇をゆっくりと滑らせていった。時折強く吸い上げてその白い体に所有の印を刻んでいく。ハボックはちくりと痛む箇所からじんわりと広がる感覚が一体なんなのか判らずにぎゅっと目を瞑った。ロイの唇が胸の頂に辿りつき、濡れた舌がぷくりと立ち上がった乳首を押しつぶす。
「あっ」
 ハボックはその刺激に思わず零れた濡れた声に慌てて手で口を覆った。ロイはその様子にくすりと笑うとハボックに言う。
「声を聞かせるんだ」
「で、もっ」
 恥ずかしい、と首を振るハボックにロイは意地悪く囁いた。
「私の望むようにするんだろう?」
「あ…」
 ハボックは真っ赤になって、それでも言われるままに手をはずす。
「いい子だ…」
 ロイはそう言うと再びハボックの乳首に手と舌を使ってきつく愛撫を施した。
「あ…あんっ…んんっ」
 切れ切れに零れる濡れた声にロイは満足そうに笑うと、更にソコを攻めたてた。
「あ、あ…も、やだ…っ」
 びくびくと震えながらそう告げる幼い声にロイは顔を上げると、今度はハボックの股間に顔を埋めた。
「ひあっ」
 脚を大きく開かせてまだ幼いハボック自身を濡れた口中へと迎え入れ、じゅぶじゅぶと唇で擦り上げるとハボックは瞬く間に登りつめていく。
「あ、あ、あっ…やぁ…っ」
 ハボックはロイの髪を掴んで緩く頭を振る。凄まじい射精感にハボックは脚を突っ張って必死に堪えた。
「もう、ダメっ…でちゃう…でちゃうよ…っ」
 その声にロイがハボックを強く吸い上げるとハボックはロイの口中へ熱を放った。ごくりと飲み干す音に、ハボックはいたたまれずに両手で顔を覆った。
「…ごめんなさいっ」
 何度も謝るハボックの髪を撫でて、ロイはハボックに囁いた。
「どうして謝る?」
「だって…オレ、がまんできなくて…ア、アンタの口の中に…っ」
 泣きそうになってそう告げるハボックにロイは笑って答えた。
「美味かったぞ」
「たいさっ」
「全部よこせ…何もかも全部だ…お前の全てが欲しいんだ…」
 熱く囁くロイの声にハボックの頬に血が上った。だが、腕を伸ばすとロイの首にひしと抱きつく。幼いその姿にロイは微笑むとハボックの口元に指を差し出した。
「舐めて」
 ハボックはロイに言われるままにロイの指を舐める。懸命にロイの指をしゃぶる幼い顔にロイは煽られて、ハボックの中心を握り締めた。
「……っっ」
 途端に唇を離そうとするハボックの口中に指をねじ入れてロイは囁く。
「続けるんだ」
 ロイに玩ばれている中心から湧き上がる快感に無意識に腰を揺らめかせながら、ハボックはうっすらと涙を浮かべてロイの指をしゃぶり続けた。幼いその姿が醸し出す強烈な色気に、ロイはくらくらと眩暈がする。ハボックの唇から指を引き抜くと乱暴にその蕾へと差し入れた。
「ひあっ」
 前を扱く手を休めずに蕾に沈めた指をぐちゅぐちゅとかき回す。ハボックの唇からは濡れた喘ぎが絶え間なく零れた。
「ああん…あ、ああっ…たい、さ…あんっ」
「気持ちいいのか…?」
 ロイがそう問えばハボックは無我夢中で頷く。
「イヤらしい子だ…」
 ロイの言葉にハボックの瞳から涙が零れる。自分をこんなにしているのはロイなのに、そのロイからそんな風に言われて、辛いと同時にハボックはぞくぞくとするものを感じていた。
「ああんっ…もっと…もっと、シて…っ」
 自分の指をしゃぶって唇の端から唾液を零してロイに強請るハボックの姿にロイは荒い息を吐く。沈める指を増やして乱暴にかき回すとハボックの唇から嬌声が上がった。
「あ、あ、あ、たいさぁ…っ」
 一際高く啼くとハボックはロイの手の中に熱を放つ。ロイは手の中の白濁をぺろりと舐めると荒い息を零すハボックを見下ろした。
「ハボック…」
 ロイの呼ぶ声にハボックは目を開いた。ロイはベッドの上に身を起こすとハボックの髪を掴み、その唇を自分のものに押し付ける。
「しゃぶってごらん」
 できるだろう?と言われて、ハボックはおずおずと口を開く。堅くそそり立ったロイ自身を目にしてごくりと唾を飲み込むと恐る恐る口中に咥えた。大きく張り詰めたロイのモノを口いっぱいに頬張って、ハボックは必死に唇で擦り上げる。唇の端から含みきれない唾液を零し、息苦しさに涙を浮かべながらそれでもロイが望むならとハボックは懸命に奉仕を続けた。自分がやっていることが果たしてロイが求めていることなのか不安になってハボックはロイを咥えたまま上目遣いでロイを見上げた。自分をじっと見つめてくるロイの熱い視線と目が合ってハボックは恥ずかしくて顔が火照るのを感じる。目を閉じたいのにロイの視線に絡め取られてハボックは目を逸らすことが出来なかった。その時口の中のロイがぐっと嵩を増したかと思うとハボックの口中へどっと青臭い液体が注ぎ込まれた。驚いて顔を離そうとしたハボックの頭をロイは押さえつける。
「全部飲むんだ」
 言われるままに必死に口中のものを喉の奥に流し込んだハボックは、ようやく口を離すことを許されて、激しく咳き込んだ。あまりの事に心がついていかず、ハボックはぼろぼろと涙を零す。そんなハボックの頬を両手で挟みこんで仰向かせるとロイは囁いた。
「もうやめるか…?」
 その言葉にハボックはぎゅっと目を閉じて首を振った。
「ヤダ…」
「お前には辛いだろう?」
「へいきだからっ」
 ハボックはロイに縋りつくと囁く。
「へいきだから…シて…おねがい…」
「手加減しないぞ…?」
 ロイの言葉にハボックは必死に頷いた。ロイはそういうハボックに口付けながらその細い体を抱え込み、ハボックの後ろに手を回すとつぷと指を差し入れる。くちくちとかき回すと合わさるロイの口中へハボックの熱い吐息が零れた。存分に解すとロイはベッドの上に腰掛けた自分の上にハボックを跨がせる。ハボックの腕を自分の首に回させると滾る自身の上にハボックの蕾を押し当てた。
「あ…」
 ロイの熱い塊りが触れた途端ハボックの体がびくりと震える。
「やめてもいいんだぞ…?」
 ロイに言われてハボックは首を振った。そうして唇を噛み締めるとゆっくりと腰を下ろしていく。
「んっ…く…」
「力を抜いて」
「あ…で、きないっ」
 その言葉にロイはハボックの中心に手を這わせる。びくっと震えて僅かに力の抜けた体を、ロイは一気に引き下ろした。
「あああああっっ」
 喉を仰け反らせて悲鳴を上げる体を引き寄せてロイは唇を合わせる。片手でハボック自身を擦り上げながらロイはハボックを突き上げた。
「ひあっ…ああっ…あああっっ」
 激しい突き上げにハボックはロイにしがみ付いた。縋りついてくる細い体をロイは抱き返して中心を扱いてやる。ロイの熱い塊りがハボックの奥まった一点を突いたときハボックの体を電気のような感覚が走りぬけ、ハボックは悲鳴を上げて体を仰け反らせた。気がつかないうちにロイの手に熱を吐き出していたハボックは、続けざまに同じ箇所を突き上げられて瞬く間に追い上げられていった。
「ひっ…や…ど、して…っ」
 体を駆け抜ける快感に翻弄されてハボックは涙を零し続ける。
「あ…も、う…お、かしく、なる…っ」
 大きな空色の瞳を一杯に見開いて、ロイの上で嬌声を上げ続けるハボックの細い体を抱きしめて、ロイはその最奥へ熱い飛沫を叩きつけた。

 散々にその身の奥に欲望を飲み込まされて、ハボックはもう指1本動かすことも出来ずにロイの胸に顔を埋めていた。優しく髪を撫でるロイの指にハボックは安心しきってロイに身を寄せていた。
「たいさ…すき…」
 うわ言のように呟くその声に、ロイの心が満たされていく。
「私もお前を愛しているよ…」
 そう囁けばハボックは嬉しそうに微笑んだ。見上げてくる空色の瞳にロイは微笑み返すと、そのしなやかな体をぎゅっと抱きしめるのだった。


2006/11/5


ミサさまからのメールでのリクで「両想いなのにすれ違った末に、最終的にはラブラブになるロイ×子ハボで有りのお話を。 自分だけに懐く子犬のようなハボックから告白されて積極的に迫られて、すぐに でも押し倒してしまいたい衝動を抱きつつも相手は子供だからと必死に理性で堪 えるロイ。 気を紛らわすために女性とのデートを重ねるロイの態度に焦れたハボックが夜這 いを決行して、遂に我慢の限界を超えてしまったロイは欲望の赴くままに手酷く ハボックを抱いてしまう。 事後に我に返って後悔の念から自分を遠ざけるロイに嫌われてしまったと思って 落ち込むハボック。 まだ大人に成り切れていない少年期のハボの危うい色気にノックアウトされる駄 目な大人のロイと、自分の魅力に気付いていないハボックを是非」でした。す、すみません。もうまるで120%別人になってしまいました…。しかも少年期の危うい色気なんて欠片もないし…。せっかくリク頂きましたのにー、長いばかりで子ハボにならずほんとにごめんなさいです(滝汗)これに懲りずにまた遊びにいらしてくださいませv
そうそう、千草色って空色のことです。ハボの瞳の色ってことで。